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Hitoshiishibashi (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0192091 石橋 仁]</font><br> | |||
''北里大学医療衛生学部生理学研究室''<br> | |||
<font size="+1">鍋倉 淳一</font><br> | |||
''大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年12月7日 原稿完成日:2013年5月16日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学医学部生理学)<br> | |||
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{{box|text= | |||
GABA は成熟した中枢神経系における主要な抑制性神経伝達物質で、GABA 受容体にはイオンチャネル型のGABA<sub>A</sub> 受容体と代謝型のGABA<sub>B</sub> 受容体がある。 | GABA は成熟した中枢神経系における主要な抑制性神経伝達物質で、GABA 受容体にはイオンチャネル型のGABA<sub>A</sub> 受容体と代謝型のGABA<sub>B</sub> 受容体がある。 | ||
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==GABA<sub>A</sub> 受容体== | ==GABA<sub>A</sub>受容体== | ||
[[image:Hitoshiishibashi fig 1.jpg|thumb|300px|'''図1.受容体の模式図'''<br>GABA<sub>A</sub>受容体の各サブユニットは4回膜貫通型で、5量体でイオンチャネル型の受容体を形成する。α1β2γ2サブユニットで構成される。]] | [[image:Hitoshiishibashi fig 1.jpg|thumb|300px|'''図1.受容体の模式図'''<br>GABA<sub>A</sub>受容体の各サブユニットは4回膜貫通型で、5量体でイオンチャネル型の受容体を形成する。α1β2γ2サブユニットで構成される。]] | ||
===構造=== | ===構造=== | ||
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α1-6、β1-3、γ1-3、δ、ε、θ、πとρ1-3の少なくとも19種類のサブユニットが知られている<ref name=ref1>http://www.iuphar-db.org/index.jsp '''IUPHAR data base'''</ref>。 | α1-6、β1-3、γ1-3、δ、ε、θ、πとρ1-3の少なくとも19種類のサブユニットが知られている<ref name=ref1>http://www.iuphar-db.org/index.jsp '''IUPHAR data base'''</ref>。 | ||
=== | ===発現パターン=== | ||
脳内では、2α:2β:γや2α:2β:δなど、さまざまなサブユニットの組み合わせの5量体で機能し、脳内では α1β2γ2 の組み合わせが最も多い。 | 脳内では、2α:2β:γや2α:2β:δなど、さまざまなサブユニットの組み合わせの5量体で機能し、脳内では α1β2γ2 の組み合わせが最も多い。 | ||
脳部位によってGABA<sub>A</sub>受容体サブユニットの発現量は異なっており、例えばα4サブユニットは[[視床]][[腹側基底核]](Ventrobasal Thalamus)と[[海馬]][[歯状回]](Dentate Gyrus)のニューロンに多く発現し、これらのニューロンではα4βまたはα4βδという組み合わせで存在している<ref name=ref4><pubmed>16354913</pubmed></ref>。 | 脳部位によってGABA<sub>A</sub>受容体サブユニットの発現量は異なっており、例えばα4サブユニットは[[視床]][[腹側基底核]](Ventrobasal Thalamus)と[[海馬]][[歯状回]](Dentate Gyrus)のニューロンに多く発現し、これらのニューロンではα4βまたはα4βδという組み合わせで存在している<ref name=ref4><pubmed>16354913</pubmed></ref>。 | ||
GABA<sub>A</sub>受容体を構成するサブユニットの違いにより薬物に対する感受性が異なり、α1β2γ2で構成されるGABA受容体は、[[ベンゾジアゼピン]]化合物によってその機能が増強される。一方、α4βδで構成されるGABA<sub>A</sub>受容体は、GABAに対する感受性がα1β2γ2の場合に比べて高くなるが、[[ジアゼパム]](diazepam)などのベンゾジアゼピン化合物に対して感受性を示さない。ρサブユニットは主として[[網膜]]に存在し、5つのρサブユニットで形成される受容体は[[GABAC受容体|GABA<sub>C</sub>受容体]]とも呼ばれる。このρサブユニットのみで構成される受容体は、ベンゾジアゼピン系薬物に反応せず、[[ビククリン]]によってもブロックされないなど他の GABA<sub>A</sub>受容体とは薬物に対する反応が大きく異なる<ref name=ref6><pubmed>10637650</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed>11420949</pubmed></ref>。 | GABA<sub>A</sub>受容体を構成するサブユニットの違いにより薬物に対する感受性が異なり、α1β2γ2で構成されるGABA受容体は、[[ベンゾジアゼピン]]化合物によってその機能が増強される。一方、α4βδで構成されるGABA<sub>A</sub>受容体は、GABAに対する感受性がα1β2γ2の場合に比べて高くなるが、[[ジアゼパム]](diazepam)などのベンゾジアゼピン化合物に対して感受性を示さない。ρサブユニットは主として[[網膜]]に存在し、5つのρサブユニットで形成される受容体は[[GABAC受容体|GABA<sub>C</sub>受容体]]とも呼ばれる。このρサブユニットのみで構成される受容体は、ベンゾジアゼピン系薬物に反応せず、[[ビククリン]]によってもブロックされないなど他の GABA<sub>A</sub>受容体とは薬物に対する反応が大きく異なる<ref name=ref6><pubmed>10637650</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed>11420949</pubmed></ref>。 | ||
上で述べた視床腹側基底核や海馬歯状回のニューロンには、他のニューロンと同様にα1サブユニットも発現しているが、α1サブユニットは γサブユニットと結合して、α1βγ型の受容体を形成している。このα1βγ受容体は、ベンゾジアゼピン結合部位を有するとともに、細胞内で[[ゲフィリン]]と結合して[[シナプス]] | 上で述べた視床腹側基底核や海馬歯状回のニューロンには、他のニューロンと同様にα1サブユニットも発現しているが、α1サブユニットは γサブユニットと結合して、α1βγ型の受容体を形成している。このα1βγ受容体は、ベンゾジアゼピン結合部位を有するとともに、細胞内で[[ゲフィリン]]と結合して[[シナプス]]後膜に集合する<ref name=ref5><pubmed>10947798</pubmed></ref>。γサブユニットをもたないα4β型の受容体やα4βδ受容体はシナプス外に存在して[[持続性抑制]]に関与すると考えられているので<ref name=ref2><pubmed>18054854</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>15738957</pubmed></ref>、サブユニット構成の違いによって、脳部位だけでなく、1つの細胞の中でも局在が異なっていることが示唆され、サブユニットの違いによって生体内での機能的役割が異なると考えられる。 | ||
===機能=== | ===機能=== | ||
GABA<sub>A</sub>受容体およびGABA<sub>C</sub>受容体の応答は内蔵する[[Cl-チャネル|Cl<sup>-</sup>チャネル]]の開口による[[Cl-イオン|Cl<sup>-</sup>イオン]]の細胞内外への流出入によって引き起こされるため、生体内など細胞外Cl<sup>-</sup>イオン濃度がほぼ一定に保たれている環境下では、GABA受容体応答の変化は細胞内Cl<sup>-</sup> | GABA<sub>A</sub>受容体およびGABA<sub>C</sub>受容体の応答は内蔵する[[Cl-チャネル|Cl<sup>-</sup>チャネル]]の開口による[[Cl-イオン|Cl<sup>-</sup>イオン]]の細胞内外への流出入によって引き起こされるため、生体内など細胞外Cl<sup>-</sup>イオン濃度がほぼ一定に保たれている環境下では、GABA受容体応答の変化は細胞内Cl<sup>-</sup>イオン濃度に依存している。多くの成熟期の神経細胞ではCl<sup>-</sup>イオンの[[平衡電位]]は[[静止膜電位]]より[[過分極]]側にあるため、GABA受容体応答は過分極性であることが多い。 | ||
しかし、未熟期や各種急性障害時には[[脱分極]]応答、すなわち興奮性作用を示す<ref name=ref8><pubmed>10191302</pubmed></ref>。このGABAによる脱分極は、未熟期および障害時に神経細胞内Cl<sup>-</sup>イオン濃度が高いことに起因する。 | しかし、未熟期や各種急性障害時には[[脱分極]]応答、すなわち興奮性作用を示す<ref name=ref8><pubmed>10191302</pubmed></ref>。このGABAによる脱分極は、未熟期および障害時に神経細胞内Cl<sup>-</sup>イオン濃度が高いことに起因する。 | ||
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ここでの注意点として、脱分極は必ずしも興奮性ではなく、脱分極でも膜[[コンダクタンス]]の増加、いわゆるシャント効果により細胞膜の興奮性を抑制する作用もある。 | ここでの注意点として、脱分極は必ずしも興奮性ではなく、脱分極でも膜[[コンダクタンス]]の増加、いわゆるシャント効果により細胞膜の興奮性を抑制する作用もある。 | ||
=== | ===GABA<sub>A</sub>受容体作動薬による依存=== | ||
[[ベンゾジアゼピン]]系のGABA<sub>A</sub>受容体機能を増強する薬は、[[不安]]や[[不眠]]などの治療薬として使用されるが、薬物依存を起こす危険性がある。[[アルコール]]や[[バルビタール]]系薬物も、その作用部位は未確定であるが、GABA<sub>A</sub> 受容体の機能を増強することが知られており、両者とも依存を生じる可能性を有している。薬物依存に関しては、[[腹側被蓋野]]([[ventral tegmental area]], VTA)から出る[[ドーパミン]]神経系が、その発生に重要な役割を果たしていると一般的に考えられているが、VTAのGABA性の[[介在神経細胞]]はこのドーパミン神経系に対する主要な抑制系であることから、VTA介在神経細胞のGABA<sub>A</sub>受容体が、これら薬物による依存の発生に関与しているかもしれない。 | |||
== GABA<sub>B</sub>受容体 == | == GABA<sub>B</sub>受容体 == | ||
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== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references /> | <references /> | ||