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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0136206/?lang=japanese 大島 登志男]</font><br> | |||
''早稲田大学先進理工学部生命医科学科 早稲田大学先端生命医科学センター''<br> | |||
[http://researchmap.jp/read0136206/ Toshio Ohshima]<br> | |||
''Department of Life Science and Medical Bio-Science, Waseda University''<br> | |||
DOI XXXX/XXXX BSD 2013-XXXX 原稿受付日:2013年5月20日 原稿完成日:2013年5月XX日 | |||
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英:cyclin-dependent kinase 英略語:Cdk | 英:cyclin-dependent kinase 英略語:Cdk | ||
サイクリン依存性キナーゼは細胞周期を制御するタンパク質キナーゼファミリーとして発見された<ref name=ref1><pubmed>9442875</pubmed></ref>。真核細胞に共通した機能として、進化的に保存されている構造を有し、活性化に必要なサイクリンが結合する部位であるサイクリン結合ドメインとキナーゼドメインからなる、分子量34-40 kDaの比較的小さなタンパク質である。サイクリンと結合することで活性型となるが、Cdkのリン酸化状態により活性が制御される。各細胞周期の進行において細胞はサイクリン及びCdkの組み合わせを変えて使い分けており、サイクリンE/Cdk2はG1/S期に働き、G1期になるとサイクリンEの発現量が増加して細胞周期の進行に関与し、S期になるとユビキチン- | ==サイクリン依存性キナーゼとは== | ||
サイクリン依存性キナーゼは細胞周期を制御するタンパク質キナーゼファミリーとして発見された<ref name=ref1><pubmed>9442875</pubmed></ref>。真核細胞に共通した機能として、進化的に保存されている構造を有し、活性化に必要なサイクリンが結合する部位であるサイクリン結合ドメインとキナーゼドメインからなる、分子量34-40 kDaの比較的小さなタンパク質である。サイクリンと結合することで活性型となるが、Cdkのリン酸化状態により活性が制御される。各細胞周期の進行において細胞はサイクリン及びCdkの組み合わせを変えて使い分けており、サイクリンE/Cdk2はG1/S期に働き、G1期になるとサイクリンEの発現量が増加して細胞周期の進行に関与し、S期になるとユビキチン-プロテアソーム系により分解される。サイクリンBはCdk1と結合してM期の開始を制御し、M期からG1期に移行するためには、ユビキチンシステムによるサイクリンBの分解が不可欠である。このように細胞周期に依存してサイクリの発現量が変化するが、Cdkの発現量は変化しない。 | |||
==構造== | |||
==ファミリー== | |||
==発現== | |||
Cdk5は神経細胞以外の細胞にも発現しているが、神経細胞で高いレベルの発現がある。(組織分布、細胞内分布をお願い致します) | |||
==機能== | |||
===活性調節=== | |||
Cdk5はサイクリンD,Eと結合するが活性化されず、最終分裂を終えた神経細胞に発現しているp35(CdkR1)またはp39(Cdk5R2)と結合することで活性型となる<ref name=ref2>Cdk5 book</ref>。活性化サブユニットp35 タンパク質は、Cdk5とヘテロダイマー形成後リン酸化され、プロテアソーム系で分解される事により、量的に調整されている<ref name=ref3><pubmed>9727024</pubmed></ref>。神経細胞の障害などによる細胞内へのCaイオンの流入により活性化したカルパインによりp25に限定分解される<ref name=ref4><pubmed>10604467</pubmed></ref>。p25はCdk5への結合と活性化に必要なドメインを含んでいる。しかし、リン酸化によりプロテアソーム系への分解へとは進まずCdk5/p25は安定した活性型のキナーゼとなる。さらにp35はN末端のミリストリル化により細胞膜にアンカーしているのに対し、N末を欠くp25は細胞膜にアンカリングせず、細胞質さらには核へ局在を変え、結果的に細胞質や核でのCdk5活性の上昇を来たす。 | |||
===基質=== | |||
サイクリン依存性キナーゼはプロリン指向性セリン・スレオニンキナーゼで基質のリン酸化部位は[S/T]PX[K/R]のコンセンサスモチーフを持つ(S/Tはリン酸化されるセリン・スレオニン、 Pはプロリン、Xは不特定のアミノ酸、KはリジンRはアルギニン)。Cdk5は様々な神経細胞特異的な数多くのタンパク質がリン酸化基質として同定されており、それぞれリン酸化による機能制御が報告されている(表1)。 | |||
==神経系における機能== | |||
また、Cdk5はキナーゼとしての機能以外に、グルタミン酸受容体のNR2Bとタンパク質分解酵素カルパインと複合体を形成し、カルパインによるNR2Bの分解を調整しており、Cdk5のタンパク質量の低下はNR2Bのポストシナプスでの量的増加を来す<ref name=ref9><pubmed>17529984</pubmed></ref>。さらに近年、神経細胞以外の細胞での機能が推定されている。オリゴデンドロサイトの分化での機能やCdk5によるPPARγのリン酸化がインスリン抵抗性の発生機序にかかわっている可能性が示唆されている<ref name=ref10><pubmed>20651683</pubmed></ref>。 | |||
===アルツハイマー病=== | |||
アルツハイマー病患者脳でのp25の増加とCdk5活性の上昇が報告され、p25産生がタウタンパク質の過剰リン酸化と神経細胞死をもたらすという説が提唱されている<ref name=ref4 />。しかし、アルツハイマー病では逆にp25量は低下しており、Cdk5活性も必ずしも上昇していないとの反論もある。 | |||
===パーキンソン病、ハンチントン病=== | |||
その他パーキンソン病<ref name=ref5><pubmed>14595022</pubmed></ref>やハンチントン病<ref name=ref6><pubmed>15911879</pubmed></ref>などの神経変性疾患の病態に関与している可能性が示唆されている。これら病態でもパーキンやハッチンチンがCdk5の基質であり、Cdk5活性の上昇によりリン酸化型が増加することが病態と関連づけられるが、Cdk5が神経細胞死に対して保護的に働き、Cdk5活性が低下する細胞死を引き起こしやすくなるという報告がある<ref name=ref7><pubmed>18463240</pubmed></ref>。このように、Cdk5活性は神経細胞の生存において厳格に制御される必要があるが、神経機能においても同様であり、結合により活性を示さないサイクリンEとの結合もその活性制御に必要であることが示された<ref name=ref8><pubmed>21944720</pubmed></ref>。すなわち、サイクリンE量の低下はCdk5活性の上昇を来し、シナプス数やシナプス可塑性に影響を与えることが示された。 | |||
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