「セルアセンブリ」の版間の差分

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<font size="+1">[伊藤浩之]</font><br>
''早稲田大学先進理工学部生命医科学科 早稲田大学先端生命医科学センター''<br>
[http://researchmap.jp/read0136206/ Toshio Ohshima]<br>
''Department of Life Science and Medical Bio-Science, Waseda University''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX BSD 2013-XXXX  原稿受付日:2013年5月20日 原稿完成日:2013年5月XX日
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英語名:Cell Assembly
英語名:Cell Assembly
同義語:細胞集成体
同義語:細胞集成体


 1940年代後半にカナダの心理学者[[D.O.Hebb]]により定義された脳内(主として[[皮質]]内)において単一の[[知覚]]・記憶対象の表現に関与する機能的な細胞の集団。Hebbの著作である”Organization of Behavior”の邦訳においては「[[細胞集成体]]」と命名された。異なる知覚対象の入力に対しては、発達前または学習前の構造化されていない細胞間の結合を反映してネットワークの統計的・物理的特性として異なる細胞集団の活動が生じる。Hebbは、互いに時間的相関を持って発火する細胞間には[[シナプス]]結合を強化する機構([[ヘッブシナプス]])が存在することを仮定し、[[知覚]]対象の繰り返しの入力により、同時に[[発火]]活動を上昇させる細胞集団の選択と固定化が自己組織化されると考えた。これは、初期には物理的特性として選択された細胞集団が、[[学習]]により特定の知覚・[[記憶]]対象と機能的に因果関係を形成すると言う情報[[符号化]]原理を提唱した点に大きな意義がある。セルアセンブリを構成する細胞は発火活動の相関により同定されるが、相関を定義する時間スケールにより、心理学的な時間スケール(数百ミリ秒)での平均発火率の相関に基づくセルアセンブリと数ミリ秒以下の[[スパイク]]発火タイミングの時間相関に基づくセルアセンブリに大別され、それぞれが独立に研究対象となっている。近年は、複数細胞のスパイク活動の同時計測([[多細胞活動同時記録]]、マルチニューロンレコーディング)の技術的発展により、セルアセンブリの実験的検証が可能となっている。
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|text= 1940年代後半にカナダの心理学者[[D.O.Hebb]]により定義された脳内(主として[[皮質]]内)において単一の[[知覚]]・記憶対象の表現に関与する機能的な細胞の集団。Hebbの著作である”Organization of Behavior”の邦訳においては「[[細胞集成体]]」と命名された。異なる知覚対象の入力に対しては、発達前または学習前の構造化されていない細胞間の結合を反映してネットワークの統計的・物理的特性として異なる細胞集団の活動が生じる。Hebbは、互いに時間的相関を持って発火する細胞間には[[シナプス]]結合を強化する機構([[ヘッブシナプス]])が存在することを仮定し、[[知覚]]対象の繰り返しの入力により、同時に[[発火]]活動を上昇させる細胞集団の選択と固定化が自己組織化されると考えた。これは、初期には物理的特性として選択された細胞集団が、[[学習]]により特定の知覚・[[記憶]]対象と機能的に因果関係を形成すると言う情報[[符号化]]原理を提唱した点に大きな意義がある。セルアセンブリを構成する細胞は発火活動の相関により同定されるが、相関を定義する時間スケールにより、心理学的な時間スケール(数百ミリ秒)での平均発火率の相関に基づくセルアセンブリと数ミリ秒以下の[[スパイク]]発火タイミングの時間相関に基づくセルアセンブリに大別され、それぞれが独立に研究対象となっている。近年は、複数細胞のスパイク活動の同時計測([[多細胞活動同時記録]]、マルチニューロンレコーディング)の技術的発展により、セルアセンブリの実験的検証が可能となっている。
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== 歴史的経緯およびその概念 ==
== 歴史的経緯およびその概念 ==
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(執筆者:伊藤浩之 担当編集委員:藤田一郎)
(執筆者: 担当編集委員:藤田一郎)