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Yoshiyamoriguchi (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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===ストレス=== | ===ストレス=== | ||
ストレス研究の歴史で最も大きな意味を持つのは、Selyeのストレス学説<ref>''' Selye, H '''<br> A syndrome produced by diverse nocuous agents.<br>'' Nature, 1936. 138: p. 32'':1936</ref> <ref><pubmed> 9722327 </pubmed></ref>である。Selyeは、ストレスによって起こる生体の非特異的な生体防御反応としての「一般適応症候群」を提唱し、ストレス後のステージとして、段階的に警告反応期(ショック相、反ショック相)、抵抗期、症憊期と進行し、副腎皮質の肥大、胸腺萎縮、胃・十二指腸潰瘍の3つの症状が起こるとした。ここで重要なのは、物理的・科学的・生物学的ストレッサーと同様に、心理的ストレッサーも同じような反応が起きるということを提唱したことである。 | ストレス研究の歴史で最も大きな意味を持つのは、Selyeのストレス学説<ref>''' Selye, H '''<br> A syndrome produced by diverse nocuous agents.<br>'' Nature, 1936. 138: p. 32'':1936</ref> <ref><pubmed> 9722327 </pubmed></ref>である。Selyeは、ストレスによって起こる生体の非特異的な生体防御反応としての「一般適応症候群」を提唱し、ストレス後のステージとして、段階的に警告反応期(ショック相、反ショック相)、抵抗期、症憊期と進行し、副腎皮質の肥大、胸腺萎縮、胃・十二指腸潰瘍の3つの症状が起こるとした。ここで重要なのは、物理的・科学的・生物学的ストレッサーと同様に、心理的ストレッサーも同じような反応が起きるということを提唱したことである。 | ||
心理社会的ストレスの研究として有名なものとして、Holmes and Raheによるライフイベントによるストレスモデルがある。彼らはストレスを「日常生活上の様々な変化(ライフイベント)に再適応するために必要な努力」と定義して、その努力によってエネルギーが費やされ蓄積し、個人の対応能力を超えた際に疾患が生じると考え、表のような尺度を作成した[[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_3.png|thumb|'''表3 社会的再適応評価尺度'''<br>]] <ref><pubmed> 6059863 </pubmed></ref><ref><pubmed> 6059865 </pubmed></ref>。対してLazarus <ref>''' Lazarus, R. S. '''<br> Psychological stress and the coping process.<br>'' McGraw-Hill, New York'':1966</ref> | 心理社会的ストレスの研究として有名なものとして、Holmes and Raheによるライフイベントによるストレスモデルがある。彼らはストレスを「日常生活上の様々な変化(ライフイベント)に再適応するために必要な努力」と定義して、その努力によってエネルギーが費やされ蓄積し、個人の対応能力を超えた際に疾患が生じると考え、表のような尺度を作成した(表3)[[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_3.png|thumb|'''表3 社会的再適応評価尺度'''<br>]] <ref><pubmed> 6059863 </pubmed></ref><ref><pubmed> 6059865 </pubmed></ref>。対してLazarus <ref>''' Lazarus, R. S. '''<br> Psychological stress and the coping process.<br>'' McGraw-Hill, New York'':1966</ref>は、「日常生活の些事により、常に長期間繰り返され、かつ意識されないうちに経験されるストレス」の重要性を強調した(表4)。[[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_4.png|thumb|'''表4 Daily Hassles (日常いらだちごと)'''<br>]]重大なライフイベントであれ日常のいらだちの蓄積であれ、彼らが提言したことは、人間であれば誰もが遭遇する可能性のある出来事が、ストレス反応を引き起こし、心身症につながる可能性があるということである。また、突発的な急性のストレス反応でも、それが繰り返され蓄積し慢性化することにより、その身体症状が遷延化することにつながる。もちろん、大きなストレス反応であれば、一回の急性のストレス反応が重大な心身の問題を引き起こすことになる。 | ||
また、外からみると同じにみえるストレスでも、個人によってストレスとして感じやすい傾向は違う。この個体差を説明するために、疾病発症のモデルとして語られるものとして、ストレス脆弱性モデルがある[[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_5.png|thumb|'''図1 ストレス脆弱性モデル '''<br>]]。これは、何らかの脳機能不全として語られる内因に、ストレス(外因)が加わり、疾病を発症するとするものである。この文脈で語られる脆弱性(内因)としては、遺伝的素因を含むが、後天的に獲得されたものも個体の脆弱性となり得る。 | また、外からみると同じにみえるストレスでも、個人によってストレスとして感じやすい傾向は違う。この個体差を説明するために、疾病発症のモデルとして語られるものとして、ストレス脆弱性モデルがある(図1)[[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_5.png|thumb|'''図1 ストレス脆弱性モデル '''<br>]]。これは、何らかの脳機能不全として語られる内因に、ストレス(外因)が加わり、疾病を発症するとするものである。この文脈で語られる脆弱性(内因)としては、遺伝的素因を含むが、後天的に獲得されたものも個体の脆弱性となり得る。 | ||
===情動=== | ===情動=== | ||
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====自律神経系==== | ====自律神経系==== | ||
自律神経・副腎髄質を介して、交感神経系の亢進が起こると、様々な急性ストレス反応が起こる。例えば心筋虚血、心拍変動性低下、膵臓β細胞でのインスリン分泌の低下、膵臓α細胞でのグルカゴン分泌の上昇の結果としての血糖上昇などが起こるが、こうした変化が慢性化すると、高血圧・糖尿病を含めた全身性の生活習慣病や、虚血性心疾患、心室性不整脈などに結びつく可能性もある。当然自律神経の影響をうける疾患はこれだけではなく、身体の中で、自律神経系のコントロールを受けていない部位を探す方が難しいくらいであるので、頭痛、気管支喘息、消化性潰瘍など、自律神経系は、身体疾患の発症・増悪に広くかつ深く関与している(図2参照)。 [[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_6.jpg|thumb|'''図2 自律神経系 '''<br>]] | |||
====HPA axis==== | ====HPA axis==== | ||
ストレスは、視床下部、下垂体、副腎皮質を介して、コルチゾール上昇をもたらすが、これによりインスリン抵抗性が高まり糖尿病の発症に寄与する。さらに、脂質代謝にも関わっており、肥満・内臓脂肪蓄積・高血圧もこれに関連している。免疫系にも影響を与え、例えばNK細胞にはコルチゾール受容体があり、受容すると細胞死に至るため、細胞性免疫の低下につながる。さらに、血小板凝集能を亢進させ、血栓を形成させ易くする恐れがある(図3)。 [[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_7.png|thumb|'''図3 脳・自律神経・HPA axisと身体疾病 '''<br>]] | |||
====免疫系==== | ====免疫系==== | ||
胸腺・骨髄・脾臓・リンパ節などの免疫系組織は、自律神経系の支配を受けている。また、リンパ球などの免疫担当細胞の膜表面には様々なホルモンや神経伝達物質に対するレセプターが発現しており、ストレス負荷時にはこれらのレセプターや伝達物質を介して免疫系も影響される(図3参照)。急性ストレス時にはNK活性の亢進、リンパ球CD4/CD8比の低下、唾液中IgAの上昇などが認められ、慢性ストレスではNK活性低下・細胞数減少、ConA/PHAリンパ球幼若化試験によって測られるT細胞増殖能低下、唾液中IgA低下などが認められる。 | |||
===身体から脳へ=== | ===身体から脳へ=== |
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