「サイクリン依存性タンパク質キナーゼ5」の版間の差分

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英:cyclin-dependent kinase 5 英略語:Cdk5
英:[[cyclin-dependent kinase]] 5 英略語:[[Cdk5]]


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 サイクリン依存性タンパク質キナーゼ(Cyclin-dependent kinase, Cdk)は[[細胞周期]]を制御するタンパク質キナーゼファミリーとして発見された<ref name=ref1><pubmed>9442875</pubmed></ref>。その中でサイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5)は[[サイクリンD]]との結合と高いアミノ酸配列の相同性からCdk5の名前が付けられたが、その後神経細胞に発現しているp35(Cdk5R1)およびp39(Cdk5R2)とヘテロダイマーを形成して活性型のキナーゼとなること判明した。神経細胞特異的な機能が報告されているが、近年、非神経細胞での機能も報告されている。[[オリゴデンドロサイト]]の分化に必要であることは、Cdk5の[[コンディショナルノックアウト]]の表現型からも確認されている。
 サイクリン依存性タンパク質キナーゼ([[Cyclin-dependent kinase]], [[Cdk]])は[[細胞周期]]を制御するタンパク質キナーゼファミリーとして発見された<ref name=ref1><pubmed>9442875</pubmed></ref>。その中でサイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5)は[[サイクリンD]]との結合と高いアミノ酸配列の相同性からCdk5の名前が付けられたが、その後神経細胞に発現しているp35(Cdk5R1)およびp39(Cdk5R2)とヘテロダイマーを形成して活性型のキナーゼとなること判明した。神経細胞特異的な機能が報告されているが、近年、非神経細胞での機能も報告されている。[[オリゴデンドロサイト]]の[[分化]]に必要であることは、Cdk5の[[コンディショナルノックアウト]]の表現型からも確認されている。


==構造==
==構造==
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! CDK !! Cyclin partner !! 機能 !! ノックアウトマウスでの表現型
! CDK !! Cyclin partner !! 機能 !! ノックアウトマウスでの表現型
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| [http://mouse.brain-map.org/experiment/show/74431284 Cdk1] || Cyclin B || M期 || 胎生致死(~E2.5).
| [http://mouse.brain-map.org/experiment/show/74431284 Cdk1] || Cyclin B || [[M期]] || 胎生致死(~E2.5).
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| rowspan=2|[http://mouse.brain-map.org/gene/show/12351 Cdk2] || Cyclin E || G1/S遷移 ||rowspan=2|体重減少、神経前駆細胞の増殖異常。生存可能であるが、雄雌ともに不妊。
| rowspan=2|[http://mouse.brain-map.org/gene/show/12351 Cdk2] || Cyclin E || G1/S遷移 ||rowspan=2|体重減少、[[神経前駆細胞]]の増殖異常。生存可能であるが、雄雌ともに不妊。
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| Cyclin A || S期, G2期
| Cyclin A || [[S期]], [[G2期]]
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| [http://mouse.brain-map.org/gene/show/45522 Cdk3] || Cyclin C || G1期 ? ||異常なし。生存可、生殖可。
| [http://mouse.brain-map.org/gene/show/45522 Cdk3] || Cyclin C || [[G1期]] ? ||異常なし。生存可、生殖可。
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| [http://mouse.brain-map.org/gene/show/12352 Cdk4] || Cyclin D || G1期 || 体重減少、インスリン欠乏性糖尿病。生存可能であるが、雄雌ともに不妊。
| [http://mouse.brain-map.org/gene/show/12352 Cdk4] || Cyclin D || G1期 || 体重減少、インスリン欠乏性糖尿病。生存可能であるが、雄雌ともに不妊。
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| [http://mouse.brain-map.org/gene/show/12356 Cdk6] || Cyclin D || G1期 ||
| [http://mouse.brain-map.org/gene/show/12356 Cdk6] || Cyclin D || G1期 ||
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| [http://mouse.brain-map.org/experiment/show/69012950 Cdk11] || Cyclin L || ? || 細胞分裂異常。胎生致死 (E3.5)
| [http://mouse.brain-map.org/experiment/show/69012950 Cdk11] || Cyclin L || ? || [[細胞分裂]]異常。胎生致死 (E3.5)
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遺伝子名はAllen Brain Atlasヘリンクしている。
遺伝子名はAllen Brain Atlasヘリンクしている。
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| p35
| p35
| Ser8, Thr138
| Ser8, Thr138
| <ref><pubmed> 9727024 </pubmed></ref><ref><pubmed> 17121855 </pubmed></ref>
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| p39
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==神経系での機能==
==神経系での機能==


 脳発生・発達期に神経細胞の移動、突起伸長に関与し、活性低下は神経細胞の生存に対するぜい弱性を招く。神経伝達物質の放出やポストシナプス機能にも関与し、脳高次機能への関与が示唆されている。
 脳発生・発達期に神経細胞の[[移動]]、突起伸長に関与し、活性低下は神経細胞の生存に対するぜい弱性を招く。神経伝達物質の放出やポストシナプス機能にも関与し、脳高次機能への関与が示唆されている。


 また、Cdk5はキナーゼとしての機能以外に、[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[NR2B]]とタンパク質分解酵素カルパインと複合体を形成し、カルパインによるNR2Bの分解を調整しており、Cdk5のタンパク質量の低下はNR2Bのポストシナプスでの量的増加を来す<ref name=ref9><pubmed>17529984</pubmed></ref>。さらに近年、神経細胞以外の細胞での機能が推定されている。オリゴデンドロサイトの分化における機能やCdk5によるPPARγのリン酸化が[[wj:インスリン|インスリン]]抵抗性の発生機序にかかわっている可能性が示唆されている<ref name=ref10><pubmed>20651683</pubmed></ref>。
 また、Cdk5はキナーゼとしての機能以外に、[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[NR2B]]とタンパク質分解酵素カルパインと複合体を形成し、カルパインによるNR2Bの分解を調整しており、Cdk5のタンパク質量の低下はNR2Bのポストシナプスでの量的増加を来す<ref name=ref9><pubmed>17529984</pubmed></ref>。さらに近年、神経細胞以外の細胞での機能が推定されている。オリゴデンドロサイトの分化における機能やCdk5によるPPARγのリン酸化が[[wj:インスリン|インスリン]]抵抗性の発生機序にかかわっている可能性が示唆されている<ref name=ref10><pubmed>20651683</pubmed></ref>。