「身体表現性障害」の版間の差分

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==身体表現性障害の病理==
==身体表現性障害の病理==
上記に述べてきたように、身体表現性障害はある病態生理に基づいてカテゴライズされた疾患ではなく、はっきりとした身体所見がないにもかかわらず,身体関連の執拗な訴えがある疾患群を総称している症候群である。虚偽性障害や詐病のように意図的に作り出されたりねつ造されたりしたものではない。背景に他の精神疾患があれば、そのさらに診断基準は、歴史的変遷を追って変化し、その病理の追究を難しいものにしている。
上記に述べてきたように、身体表現性障害はある病態生理に基づいてカテゴライズされた疾患ではなく、はっきりとした身体所見がないにもかかわらず,身体関連の執拗な訴えがある疾患群を総称している症候群である。虚偽性障害や詐病のように意図的に作り出されたりねつ造されたりしたものではない。背景に他の精神疾患があれば、その疾患の診断や病理の方をより重視することが多く、その部分症状あるいは不随症状とみなされることが多い。さらに診断基準の歴史的変遷により、その病理の追究を難しいものにしている。
身体化障害・疼痛性障害・心気症・身体醜形障害に共通しているのは、「とらわれ」「固着」である。身体化障害及び疼痛性障害は「身体症状の訴え」という模倣形で表出され、心気症・身体醜形障害(疾病恐怖・醜形恐怖と俗に呼ばれるもの)は、「自己に対する心配・恐怖という固着観念」である。病理が深くなれば妄想に近くなるが、そういった意味では統合失調症の妄想と連続していると考える臨床家もいる(実際には、統合失調症・うつ病などに心気的な訴えをする患者も多い)。気質的には、「神経質」つまり内省的で物事を気にしやすい性質(森田正馬による「ヒポコンドリー性基調」)がある。
身体化障害・疼痛性障害・心気症・身体醜形障害に共通しているのは、「とらわれ」「固着」である。身体化障害及び疼痛性障害は「身体症状の訴え」という模倣形で表出され、心気症・身体醜形障害(疾病恐怖・醜形恐怖と俗に呼ばれるもの)は、「自己に対する心配・恐怖という固着観念」である。病理が深くなれば妄想に近くなるが、そういった意味では統合失調症の妄想と連続していると考える臨床家もいる(実際には、統合失調症・うつ病などに心気的な訴えをする患者も多い)。気質的には、「神経質」つまり内省的で物事を気にしやすい性質(森田正馬による「ヒポコンドリー性基調」)がある。
本障害の脳科学的な検証はまだまだなされていないのが現状である。身体化や疼痛については研究が散見される。PETやSPECTを使ってSomatization disorderの患者の血流を測定したもの<ref><pubmed> 11437810 </pubmed></ref><ref><pubmed> 12455936 </pubmed></ref><ref><pubmed> 15246456 </pubmed></ref><ref><pubmed> 17109700 </pubmed></ref>があるが、まだ症例数・研究数が少なく、確定的なことは言えない。扁桃体の体積減少を指摘するものもあれば<ref><pubmed> 21651951 </pubmed></ref>、島皮質周辺の体積変化が身体症状に関連していたとするものもある<ref><pubmed>17187377</pubmed></ref>。また、一般的に疼痛性障害や線維筋痛症などでは海馬の機能障害がみられ<ref><pubmed> 19553880 </pubmed></ref>、海馬がpain-networkの中に含まれることから、海馬の問題も指摘されている。例えば、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いた研究で、痛みに対する予期不安が痛みの主観的な感覚を高めるのであるが、そのモジュレーションに海馬が関係し、その脳活動が全身的な身体化に関係していたとするデータがある<ref><pubmed> 22831862 </pubmed></ref>。いずれにしろ、身体化・疼痛性障害に関して少しずつ知見が集まりつつあるものの、まだ脳研究は途上である。また、心気症・醜形障害など「(恐怖)観念」に関するものは、極めて知見が少ない。今後の一層の研究が待たれる。
本障害の脳科学的な検証はまだまだなされていないのが現状である。身体化や疼痛については研究が散見される。PETやSPECTを使ってSomatization disorderの患者の血流を測定したもの<ref><pubmed> 11437810 </pubmed></ref><ref><pubmed> 12455936 </pubmed></ref><ref><pubmed> 15246456 </pubmed></ref><ref><pubmed> 17109700 </pubmed></ref>があるが、まだ症例数・研究数が少なく、確定的なことは言えない。扁桃体の体積減少を指摘するものもあれば<ref><pubmed> 21651951 </pubmed></ref>、島皮質周辺の体積変化が身体症状に関連していたとするものもある<ref><pubmed>17187377</pubmed></ref>。また、一般的に疼痛性障害や線維筋痛症などでは海馬の機能障害がみられ<ref><pubmed> 19553880 </pubmed></ref>、海馬がpain-networkの中に含まれることから、海馬の問題も指摘されている。例えば、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いた研究で、痛みに対する予期不安が痛みの主観的な感覚を高めるのであるが、そのモジュレーションに海馬が関係し、その脳活動が全身的な身体化に関係していたとするデータがある<ref><pubmed> 22831862 </pubmed></ref>。いずれにしろ、身体化・疼痛性障害に関して少しずつ知見が集まりつつあるものの、まだ脳研究は途上である。また、心気症・醜形障害など「(恐怖)観念」に関するものは、極めて知見が少ない。今後の一層の研究が待たれる。
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