「視覚前野」の版間の差分

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英語名:extrastriate cortex、circumstriate cortex
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/takanami/?lang=japanese 伊藤南]</font><br>
''東京医科歯科大学生体機能支援システム学分野''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年5月24日 原稿完成日:2013年5月XX日<br>担当編集委員:[http://researchmap.jp/ichirofujita/?lang=japanese 藤田一郎](大阪大学)<br>
</div>
 
英語名:extrastriate cortex、circumstriate cortex 独:extrastriärer Kortex 仏:cortex extrastrié
 
同義語:外線条皮質、有線外皮質、後頭連合野、V2、V3、V4、MT
同義語:外線条皮質、有線外皮質、後頭連合野、V2、V3、V4、MT
 
 視覚前野(しかくぜんや)は[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]の[[大脳新皮質]]の[[視覚野]]の一部で、[[後頭葉]]の[[視覚連合野]]([[後頭連合野]])、[[ブロードマン]]の[[18野|18]]、[[19野]]に相当する。さらに[[V2]]、[[V3]]、[[V3a]]、[[V4]]、[[V5]]/[[MT]]、[[V6]]等の機能的領野に区分される。[[第一次視覚野]]([[V1]]、[[17野]])より主な入力を受けて[[視覚]]情報処理を専らとする。各領野の[[ニューロン]]は[[受容野]]を持ち、[[レチノトピー]]の性質を示して、片半球の領野が反対側の半視野を表す。これらの領野は階層的な結合関係を持ち、上の階層ほど受容野が大きく、より複雑な刺激特徴や大局的な情報を抽出表現する。主に2つの視覚経路に分かれており、[[腹側視覚路]]はV2、V4を介して[[下側頭葉]]([[側頭連合野]])に出力し、物体の形状や物体表面の性質(明るさ、色、模様)を表し、視覚対象の認識や形状の表象に寄与する。[[背側皮質視覚路]]はV2、V3、V5、V6を介して[[後頭頂葉]]([[頭頂連合野]])に出力し、3次元的な空間配置、空間の構造、動きを表して、眼や腕の運動制御に寄与する。
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|text=  視覚前野(しかくぜんや)は[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]の[[大脳新皮質]]の[[視覚野]]の一部で、[[後頭葉]]の[[視覚連合野]]([[後頭連合野]])、[[ブロードマン]]の[[18野|18]]、[[19野]]に相当する。さらに[[V2]]、[[V3]]、[[V3a]]、[[V4]]、[[V5]]/[[MT]]、[[V6]]等の機能的領野に区分される。[[第一次視覚野]]([[V1]]、[[17野]])より主な入力を受けて[[視覚]]情報処理を専らとする。各領野の[[ニューロン]]は[[受容野]]を持ち、[[レチノトピー]]の性質を示して、片半球の領野が反対側の半視野を表す。これらの領野は階層的な結合関係を持ち、上の階層ほど受容野が大きく、より複雑な刺激特徴や大局的な情報を抽出表現する。主に2つの視覚経路に分かれており、[[腹側視覚路]]はV2、V4を介して[[下側頭葉]]([[側頭連合野]])に出力し、物体の形状や物体表面の性質(明るさ、色、模様)を表し、視覚対象の認識や形状の表象に寄与する。[[背側皮質視覚路]]はV2、V3、V5、V6を介して[[後頭頂葉]]([[頭頂連合野]])に出力し、3次元的な空間配置、空間の構造、動きを表して、眼や腕の運動制御に寄与する。}}


==視覚前野とは==
==視覚前野とは==
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====主観的輪郭====
====主観的輪郭====
subjective contour:[[wikipedia:ja:カニッツァの三角形|カニッツァの三角形]]や縞模様の端部では、刺激や端点の配列から存在しない面や輪郭線を知覚できる。V2では、この主観的輪郭線の傾きに選択性を示すものが見つかっている<ref><pubmed>6539501</pubmed></ref><ref><pubmed>2723747</pubmed></ref><ref><pubmed>2723748</pubmed></ref>。
subjective contour
:[[wikipedia:ja:カニッツァの三角形|カニッツァの三角形]]や縞模様の端部では、刺激や端点の配列から存在しない面や輪郭線を知覚できる。V2では、この主観的輪郭線の傾きに選択性を示すものが見つかっている<ref><pubmed>6539501</pubmed></ref><ref><pubmed>2723747</pubmed></ref><ref><pubmed>2723748</pubmed></ref>。


====境界線の帰属====
====境界線の帰属====
border ownership:図と背景(地)の境界線は常に“図”の輪郭線として知覚される。V2では、受容野を横切る輪郭線のコントラスとの向きよりも、刺激全体が表す図と地の向きに選択性を示すものが見つかっている<ref><pubmed>10964965</pubmed></ref><ref><pubmed>15996555</pubmed></ref>。
border ownership
:図と背景(地)の境界線は常に“図”の輪郭線として知覚される。V2では、受容野を横切る輪郭線のコントラスとの向きよりも、刺激全体が表す図と地の向きに選択性を示すものが見つかっている<ref><pubmed>10964965</pubmed></ref><ref><pubmed>15996555</pubmed></ref>。


====負相関ステレオグラム====
====負相関ステレオグラム====
anti-correlated stereogram:ドットパターンの輝度コントラストを左右の目で逆にすると、ドット刺激は見えても対応付けられず、奥行きを知覚できなくなる(両眼視差の対応問題、corresponding problem)。V2、V4のニューロンで反応が減弱することが、これと合致する<ref><pubmed>12597865</pubmed></ref><ref><pubmed>15371518</pubmed></ref><ref><pubmed>17959744</pubmed></ref>。
anti-correlated stereogram
:ドットパターンの輝度コントラストを左右の目で逆にすると、ドット刺激は見えても対応付けられず、奥行きを知覚できなくなる(両眼視差の対応問題、corresponding problem)。V2、V4のニューロンで反応が減弱することが、これと合致する<ref><pubmed>12597865</pubmed></ref><ref><pubmed>15371518</pubmed></ref><ref><pubmed>17959744</pubmed></ref>。


====色の恒常性、明るさの恒常性====
====色の恒常性、明るさの恒常性====
 刺激の波長成分は視覚刺激の反射特性と照明光により決まるが、[[wikipedia:ja:モンドリアン|モンドリアン]]のように受容野の周囲に異なる色の刺激を同時に呈示すると、照明条件によらない色相や輝度への選択性を示すものがV4に見つかっている<ref><pubmed>6134287</pubmed></ref>。
:刺激の波長成分は視覚刺激の反射特性と照明光により決まるが、[[wikipedia:ja:モンドリアン|モンドリアン]]のように受容野の周囲に異なる色の刺激を同時に呈示すると、照明条件によらない色相や輝度への選択性を示すものがV4に見つかっている<ref><pubmed>6134287</pubmed></ref>。


====窓問題====
====窓問題====
aperture problem:線や縞模様の端点を隠すと、実際の運動方向ではなく、運動速度の最も低い法線方向への運動が知覚される<ref>'''J A Movshon, E H Adelson, M S Gizzi, W T Newsome'''<br>The analysis of moving visual patterns.<br>''Study Group on Pattern Recognition Mechanisms'' (C Chagas, R Gattas, C Gross, eds. Vatican City: Pontifica Academia Scientiarum, pp.117-151,1985.</ref>。一方、縞模様が長方形の枠内を動くと、長辺沿いの端点の動きを運動方向として知覚する(バーバーポール錯視)。MTには法線方向の動きよりも受容野外の枠沿いの端点の運動方向に選択性を示すものがある<ref><pubmed>15056706</pubmed></ref>。
aperture problem
:線や縞模様の端点を隠すと、実際の運動方向ではなく、運動速度の最も低い法線方向への運動が知覚される<ref>'''J A Movshon, E H Adelson, M S Gizzi, W T Newsome'''<br>The analysis of moving visual patterns.<br>''Study Group on Pattern Recognition Mechanisms'' (C Chagas, R Gattas, C Gross, eds. Vatican City: Pontifica Academia Scientiarum, pp.117-151,1985.</ref>。一方、縞模様が長方形の枠内を動くと、長辺沿いの端点の動きを運動方向として知覚する(バーバーポール錯視)。MTには法線方向の動きよりも受容野外の枠沿いの端点の運動方向に選択性を示すものがある<ref><pubmed>15056706</pubmed></ref>。


====格子模様====
====格子模様====
plaid pattern:傾きの異なる縞模様を重ねて動かすと、各縞に対する法線方向の動きが合成されて、格子模様が一方向に動いて見える。MTには格子模様の運動方向に選択性を示すものがある。さらに両眼視差により縞模様がすれ違うように見せたり、縞の重複部分の輝度を調整して半透明の縞模様が重なるように見せると、縞の法線方向に選択的に反応する<ref name=ref8 /><ref><pubmed>3447355</pubmed></ref><ref><pubmed>1641024</pubmed></ref>。
plaid pattern
:傾きの異なる縞模様を重ねて動かすと、各縞に対する法線方向の動きが合成されて、格子模様が一方向に動いて見える。MTには格子模様の運動方向に選択性を示すものがある。さらに両眼視差により縞模様がすれ違うように見せたり、縞の重複部分の輝度を調整して半透明の縞模様が重なるように見せると、縞の法線方向に選択的に反応する<ref name=ref8 /><ref><pubmed>3447355</pubmed></ref><ref><pubmed>1641024</pubmed></ref>。


===注意や予測(期待)===
===注意や予測(期待)===
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==参考文献==
==参考文献==
<references />
<references />
(執筆者:伊藤南 担当編集委員:藤田一郎)

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