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(ページの作成:「<div align="right"> <font size="+1">小島 卓也</font><br> ''医療法人社団輔仁会 大宮厚生病院''<br> <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0098756 ...」) |
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探索眼球運動によって中核型統合失調症が抽出され、異種性の問題が解決された。探索眼球運動は、臨床診断の補助的役割を果たすだけでなく、種々の研究や薬物の開発に役立つと考えられた。また、探索眼球運動は統合失調症の主体性の障害を抽出しており、長年の精神病理学、臨床精神医学における知見、例えば統合失調症の基本障害などの知見を科学的に裏付けている。 | 探索眼球運動によって中核型統合失調症が抽出され、異種性の問題が解決された。探索眼球運動は、臨床診断の補助的役割を果たすだけでなく、種々の研究や薬物の開発に役立つと考えられた。また、探索眼球運動は統合失調症の主体性の障害を抽出しており、長年の精神病理学、臨床精神医学における知見、例えば統合失調症の基本障害などの知見を科学的に裏付けている。 | ||
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[[image:図1ナイサーの知覚循環.jpg|thumb|350px|'''図1.ナイサーの知覚循環''']] | |||
== 探索眼球運動とは何か == | == 探索眼球運動とは何か == | ||
診察場面では患者の表情や目の動きに注目し精神内界の一端を推察しようとする。こうしたことを踏まえて昭和43年頃、統合失調症患者の注視点の動きを客観的に記録する研究が始まった。日本独自の研究である。Neisser11)によれば、ものを見るとき漠然と見ているのではなく、スキーマ(構え)に基づいて注視点による探索行動が行われ、得られた情報に基づき構えが修正され、また探索行動がなされ構えが修正される。このような循環の中で[[知覚]]が生じるという(図1)。つまり注視点を調べることによりどのような構えで見ようとしているのか、換言すれば被験者の自発性、主体性を調べることができるという特徴を持っている。精神病理学的にいえば統合失調症の中核的障害は自発性、主体性の障害であるといわれており統合失調症研究には探索眼球運動は最適と考えられた。 | 診察場面では患者の表情や目の動きに注目し精神内界の一端を推察しようとする。こうしたことを踏まえて昭和43年頃、統合失調症患者の注視点の動きを客観的に記録する研究が始まった。日本独自の研究である。Neisser11)によれば、ものを見るとき漠然と見ているのではなく、スキーマ(構え)に基づいて注視点による探索行動が行われ、得られた情報に基づき構えが修正され、また探索行動がなされ構えが修正される。このような循環の中で[[知覚]]が生じるという(図1)。つまり注視点を調べることによりどのような構えで見ようとしているのか、換言すれば被験者の自発性、主体性を調べることができるという特徴を持っている。精神病理学的にいえば統合失調症の中核的障害は自発性、主体性の障害であるといわれており統合失調症研究には探索眼球運動は最適と考えられた。 | ||
== 測定方法 == | == 測定方法 == | ||
[[image:図2呈示図.jpg|thumb|350px|'''図2.呈示図''']] | |||
===アイマークレコーダー=== | ===アイマークレコーダー=== | ||
アイマークレコーダーを用いて注視点の動きを記録した。原理は角膜に光源から光を当ててその反射光をカメラで捉える。眼球が動くと反射光もそれに対応して動くので、これと被験者が見ている背景を別のカメラで捉えた映像を重ね合わせることによって被験者がどこを見ているかを観察することができる。 | アイマークレコーダーを用いて注視点の動きを記録した。原理は角膜に光源から光を当ててその反射光をカメラで捉える。眼球が動くと反射光もそれに対応して動くので、これと被験者が見ている背景を別のカメラで捉えた映像を重ね合わせることによって被験者がどこを見ているかを観察することができる。 | ||
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===課題の特徴=== | ===課題の特徴=== | ||
①横S字図形を呈示して(図2-a)「後で描いてもらいますのでよく見てください」という記銘課題、②標的図と一部異なった図(図2-b,c)をイメージ上の標的図と比較させる比較照合課題、③違いについて質問し他に違いはないかと質問し「ありません」と答えるときの念押し課題を行った。記銘課題と念押し課題の注視点の動きを用いて統合失調症と非統合失調症の判別分析(診断補助装置)を行っている。 | ①横S字図形を呈示して(図2-a)「後で描いてもらいますのでよく見てください」という記銘課題、②標的図と一部異なった図(図2-b,c)をイメージ上の標的図と比較させる比較照合課題、③違いについて質問し他に違いはないかと質問し「ありません」と答えるときの念押し課題を行った。記銘課題と念押し課題の注視点の動きを用いて統合失調症と非統合失調症の判別分析(診断補助装置)を行っている。 | ||
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== 測定指標について == | == 測定指標について == | ||
[[image:図3反応的探索スコア.jpg|thumb|350px|'''図3.反応的探索スコア''']] | |||
===記銘課題時の要素的指標=== | ===記銘課題時の要素的指標=== | ||
「これから見て頂く図形を後で描いてもらいますので、そのつもりで見て下さい」と指示した記銘課題時の15秒間の注視点の動きについて、運動数、総移動距離、平均移動距離(総移動距離を運動数で割ったもの)について算出した。コンピュータソフトで自動的に算出する。 | 「これから見て頂く図形を後で描いてもらいますので、そのつもりで見て下さい」と指示した記銘課題時の15秒間の注視点の動きについて、運動数、総移動距離、平均移動距離(総移動距離を運動数で割ったもの)について算出した。コンピュータソフトで自動的に算出する。 |