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=== 統合失調症 ===
=== 統合失調症 ===
ヒトにおける統合失調症の発症とリーリンのSNPを調べた研究は多く、そしてそのほとんどで弱いながらも相関が検出されている(68-70)。また、リーリンヘテロ欠損マウスでは[[プレパルスインヒビション]]が異常であるという報告(71)もある。リーリンは発生から生後機能まで様々な場面で重要な働きをすると考えられるので、その機能低下が統合失調症につながることは想像しやすいことではある。しかし、今まで行われたヒト遺伝学的解析は小規模なものが多く、またマウスを用いた研究や分子レベルの研究も散発的であり再現性などが充分担保されていないので、リーリンが統合失調症発症に関与するか否かは明確とは言えない。
ヒトにおける統合失調症の発症とリーリンのSNPを調べた研究は多く、そしてそのほとんどで弱いながらも相関が検出されている<ref><pubmed> 21863557 </pubmed></ref><ref><pubmed> 18282107 </pubmed></ref>。また、リーリンヘテロ欠損マウスでは[[プレパルスインヒビション]]が異常であるという報告<ref><pubmed> 18547243 </pubmed></ref>もある。リーリンは発生から生後機能まで様々な場面で重要な働きをすると考えられるので、その機能低下が統合失調症につながることは想像しやすいことではある。しかし、今まで行われたヒト遺伝学的解析は小規模なものが多く、またマウスを用いた研究や分子レベルの研究も散発的であり再現性などが充分担保されていないので、リーリンが統合失調症発症に関与するか否かは明確とは言えない。


=== 自閉症 ===
=== 自閉症 ===
近年の総説では、[[自閉症]]と関連が疑われる遺伝子のスコア付けが試みられている(72)が、リーリンはその中で最高スコアを得ている。また、リーリンヘテロ欠損マウスを用いて自閉症とリーリンを結びつける試みも少なからず行われている(73)。ヒトでも、リーリン遺伝子の多型と自閉症発症の相関に関して多くの人種で様々な研究が行われているが、肯定的見解と否定的見解がほぼ相半ばしている。
近年の総説では、[[自閉症]]と関連が疑われる遺伝子のスコア付けが試みられている(72)が、リーリンはその中で最高スコアを得ている。また、リーリンヘテロ欠損マウスを用いて自閉症とリーリンを結びつける試みも少なからず行われている<ref><pubmed> 18414403 </pubmed></ref>。ヒトでも、リーリン遺伝子の多型と自閉症発症の相関に関して多くの人種で様々な研究が行われているが、肯定的見解と否定的見解がほぼ相半ばしている。


=== 気分障害 ===
=== 気分障害 ===
[[双極性障害]]やうつ病においてもリーリンの関与は研究されており、患者死後脳の研究ではリーリンはこれらの患者ではわずかではあるが減少している(78,79)。また、リーリンにはCTRをコードするエキソンの直前で選択的スプライシングが生じ、CTRの無いアイソフォームが生じることが知られている。双極性障害の患者では、このタイプのmRNAの割合が減少していることが報告されている(69)。CTRを欠損するアイソフォームはシグナル活性が弱い(8)ので、双極性障害患者では相対的にリーリン機能は亢進していることになる。しかしこれは、リーリンの機能低下を補う代償機構の結果である可能性も残されている。
[[双極性障害]]やうつ病においてもリーリンの関与は研究されており、患者死後脳の研究ではリーリンはこれらの患者ではわずかではあるが減少している<ref><pubmed> 11074872 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11126396 </pubmed></ref>。また、リーリンにはCTRをコードするエキソンの直前で選択的スプライシングが生じ、CTRの無いアイソフォームが生じることが知られている。双極性障害の患者では、このタイプのmRNAの割合が減少していることが報告されている<ref><pubmed> 21603580 </pubmed></ref>。CTRを欠損するアイソフォームはシグナル活性が弱いので、双極性障害患者では相対的にリーリン機能は亢進していることになる。しかしこれは、リーリンの機能低下を補う代償機構の結果である可能性も残されている。




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