「熱ショックタンパク質」の版間の差分

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== 熱ショックタンパク質作動薬  ==
== 熱ショックタンパク質作動薬  ==


 熱ショックタンパク質の作動薬である[[wikipedia:en:Arimoclomol|Arimoclomol]]は、マウスALSモデルにおいてHsp70、Hsp90の発現を亢進させ、病気の進行を抑えることが分かっている<ref name="Arimoclomol"><ref><pubmed> 15034571 </pubmed></ref>。培養脊髄組織に熱ショックあるいは[[グルタミン酸]]処理によりストレスを与えた場合に、アストロサイトにおいてHsp70の発現が上昇する。しかし同様のストレスを与えても、運動神経におけるHsp70の発現は上昇しない。このようなストレス下で、Arimoclomolを加えると、神経細胞のHsp70の発現が上昇して神経保護作用を示す<ref name="Arimoclomol"><ref><ref><pubmed> 15034571 </pubmed></ref>。製薬会社の[[wikipedia:en:CytRx|CytRx]]は、[[wikipedia:en:Clinical trial|臨床試験]]第2相を施行している<ref>[http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00706147 Phase II/III Randomized, Placebo-Controlled Trial of Arimoclomol in SOD1 Positive Familial Amyotrophic Lateral Sclerosis - Full Text View - ClinicalTrials.gov]</ref>。  
 熱ショックタンパク質の作動薬である[[wikipedia:en:Arimoclomol|Arimoclomol]]は、マウスALSモデルにおいてHsp70、Hsp90の発現を亢進させ、病気の進行を抑えることが分かっている<ref name="Arimo"><pubmed> 15034571 </pubmed></ref>。培養脊髄組織に熱ショックあるいは[[グルタミン酸]]処理によりストレスを与えた場合に、アストロサイトにおいてHsp70の発現が上昇する。しかし同様のストレスを与えても、運動神経におけるHsp70の発現は上昇しない。このようなストレス下で、Arimoclomolを加えると、神経細胞のHsp70の発現が上昇して神経保護作用を示す<ref name="Arimo"><pubmed> 15034571 </pubmed></ref>。製薬会社の[[wikipedia:en:CytRx|CytRx]]は、[[wikipedia:en:Clinical trial|臨床試験]]第2相を施行している<ref>[http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00706147 Phase II/III Randomized, Placebo-Controlled Trial of Arimoclomol in SOD1 Positive Familial Amyotrophic Lateral Sclerosis - Full Text View - ClinicalTrials.gov]</ref>。  


 ニシキギ科の植物から抽出した[[wikipedia:en:Quinone methide|quinine methide]] tritepeneであるCelastrolはPD、ALSそして[[ハンチントン病]]などの動物モデルにおいて、Hsp70を誘導し、保護的に働く<ref><pubmed> 16092942 </pubmed></ref>。  
 ニシキギ科の植物から抽出した[[wikipedia:en:Quinone methide|quinine methide]] tritepeneであるCelastrolはPD、ALSそして[[ハンチントン病]]などの動物モデルにおいて、Hsp70を誘導し、保護的に働く<ref><pubmed> 16092942 </pubmed></ref>。  
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== 熱ショックによる前処理と神経保護作用  ==
== 熱ショックによる前処理と神経保護作用  ==


 あらかじめ熱ショックを組織に加えることにより、Hsp70、[[wikipedia:en:HSPA8|Hsc70]]、Hsp32や[[wikipedia:en:Hsp27|Hsp27]]が亢進し、神経保護作用を示すことが分かっている<ref><pubmed> 10341239 </pubmed></ref>。熱ストレスによりHsc70が[[大脳皮質]][[神経細胞]]のシナプスに局在し、[[wikipedia:en:Chaperone DnaJ|Hsp40]]と会合し、変性タンパク質をリフォールディングする。また熱ストレスによりグリア細胞においてHsp70が産生され、細胞間を移動して隣り合う神経細胞の突起に輸送される<ref><pubmed> 3947949 </pubmed></ref>。この反応を応用し、[[坐骨神経]]細胞の切断端にHsp70/Hsc70を細胞外から添加すると、神経細胞死が抑制される<ref><pubmed> 9222601 </pubmed></ref>。  
 あらかじめ熱ショックを組織に加えることにより、Hsp70、[[wikipedia:en:HSPA8|Hsc70]]、Hsp32や[[wikipedia:en:Hsp27|Hsp27]]が亢進し、神経保護作用を示すことが分かっている<ref><pubmed> 10341239 </pubmed></ref>。熱ストレスによりHsc70が[[大脳皮質]][[神経細胞]]のシナプスに局在し、[[wikipedia:en:Chaperone DnaJ|Hsp40]]と会合し、変性タンパク質をリフォールディングする。また熱ストレスによりグリア細胞においてHsp70が産生され、細胞間を移動し、隣り合う神経細胞の突起に輸送される<ref><pubmed> 3947949 </pubmed></ref>。この反応を応用し、[[坐骨神経]]細胞の切断端にHsp70/Hsc70を細胞外から添加すると、神経細胞死が抑制される<ref><pubmed> 9222601 </pubmed></ref>。  


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== シャペロン介在オートファジーによるハンチントン病の治療  ==
== シャペロン介在オートファジーによるハンチントン病の治療  ==


 マウスハンチントン病モデルでは、神経細胞に伸長ポリグルタミン鎖が蓄積する。Hsc70の伸長ポリグルタミン鎖への結合を促進すると、伸長ポリグルタミン鎖がリソソームに運ばれ、オートファジーにより分解される。これにより行動異常が改善され、寿命が延びる<ref><pubmed> 20190739 </pubmed></ref>。
 マウスハンチントン病モデルでは、神経細胞に伸長ポリグルタミン鎖が蓄積する。Hsc70の伸長ポリグルタミン鎖への結合を促進すると、伸長ポリグルタミン鎖が[[wikipedia:ja:リソソーム|リソソーム]]に運ばれ、オートファジーにより分解される。これにより行動異常が改善され、寿命が延びる<ref><pubmed> 20190739 </pubmed></ref>。


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