「行動テストバッテリー」の版間の差分

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Porsolt forced swim test
Porsolt forced swim test


 回避ができない環境で強制的に泳がされたマウスが学習性無力感によって遊泳しなくなることを利用したうつ様行動を測定するテスト。水を入れた円筒形の容器にマウスを入れ、無動状態の時間を測定する<ref name=ref32><pubmed>204499</pubmed></ref>。水に入れた直後、マウスは脱出しようと動き回るが、次第に遊泳しなくなり動かない時間(無動時間)が増える。抗うつ薬を投与すると無動時間が減少する<ref name=ref32 />ことから、無動時間の長さがうつ様行動の指標とされている。無動時間が長ければうつ様行動の増加が、短ければ減少が示唆される。
 回避ができない環境で強制的に泳がされたマウスが遊泳しなくなることを利用した抗うつ薬のスクリーニングテスト。水を入れた円筒形の容器にマウスを入れ、無動状態の時間を測定する<ref name=ref32><pubmed>204499</pubmed></ref>。水に入れた直後、マウスは脱出しようと動き回るが、次第に遊泳しなくなり動かない時間(無動時間)が増える。抗うつ薬を投与すると無動時間が減少する<ref name=ref32 />ことから、抗うつ薬のスクリーニングに用いられてきた。その後、うつ様行動の指標としても用いられるようになり、その場合、無動時間が長ければうつ様行動の増加、短ければ減少、と解釈されている。本試験では、2日目の無動時間を測定することにより、学習性無力を反映すると解釈されることもあるが、無動はエネルギー消費を抑えるための適応的な行動であり、無動時間の短縮は学習を反映しているとも解釈されている<pubmed>2277851</pubmed></ref>。


====尾懸垂テスト====
====尾懸垂テスト====
Tail suspension test
Tail suspension test


 逆さ向きに吊されたマウスが学習性無力感によって動かなくなることを利用したうつ様行動を測定するテスト。マウスを尻尾から逆さに吊るし、無動時間を測定する<ref name=ref33><pubmed>15890404</pubmed></ref>。吊されたマウスは脱出しようと動き回るが、次第に動かない時間が増えてくる。このテストでも抗うつ薬を投与すると無動時間が減少する<ref name=ref33 />ことから、無動時間の長さがうつ様行動の指標とされている。
 逆さ向きに吊されたマウスのもがく時間を測定する、抗うつ薬のスクリーニングテスト。マウスを尻尾から逆さに吊るし、無動時間を測定する<ref name=ref33><pubmed>15890404</pubmed></ref>。吊されたマウスは脱出しようと動き回るが、次第に動かない時間が増えてくる。このテストでも抗うつ薬を投与すると無動時間が減少する<ref name=ref33 />ことから、抗うつ薬のスクリーニングに用いられてきた。その後、強制水泳試験と同様に、うつ様行動の指標としても用いられるようになった。抗うつ薬を事前に投与しておくと無動時間が短くなることから、無動時間が長ければうつ様行動の増加、短ければ減少、と解釈されている。


 先述した不安様行動テストの場合と同様に、うつ様行動を測定する代表的な2つのテストであるポーソルト強制水泳テストと尾懸垂テストでも、それぞれのテストで測定される行動の背景には共通の要因と個別に異なる要因とがある。そのため同じ遺伝子改変マウスに2つのテストを行った場合に、両方でうつ様行動の増減が同方向にみられる<ref name=ref34><pubmed>23300874</pubmed></ref>こともあれば一方ではうつ様行動が増加、他方では減少というように逆方向になることもある<ref name=ref31 />。ポーソルト強制水泳テストと尾懸垂テストは、ともに抗うつ剤の評価およびスクリーニングによく使われている。[[抗うつ薬]]の臨床における治療効果は、長期間の服用ではじめて得られるとされているが、ポーソルト強制水泳テストと尾懸垂テストを用いたこれらの薬剤のスクリーニングでは急性投与での効果のみが評価されているという問題が指摘されている<ref name=ref35><pubmed>11931738</pubmed></ref>。
 先述した不安様行動テストの場合と同様に、うつ様行動を測定する代表的な2つのテストであるポーソルト強制水泳テストと尾懸垂テストでも、それぞれのテストで測定される行動の背景には共通の要因と個別に異なる要因とがある。そのため同じ遺伝子改変マウスに2つのテストを行った場合に、両方でうつ様行動の増減が同方向にみられる<ref name=ref34><pubmed>23300874</pubmed></ref>こともあれば一方ではうつ様行動が増加、他方では減少というように逆方向になることもある<ref name=ref31 />。ポーソルト強制水泳テストと尾懸垂テストは、ともに抗うつ剤の評価およびスクリーニングによく使われている。[[抗うつ薬]]の臨床における治療効果は、長期間の服用ではじめて得られるとされているが、ポーソルト強制水泳テストと尾懸垂テストを用いたこれらの薬剤のスクリーニングでは急性投与での効果のみが評価されているという問題が指摘されている<ref name=ref35><pubmed>11931738</pubmed></ref>。

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