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リーリンの刺激により、Dab1はY185、Y198、Y220、Y232の4カ所でリン酸化を受ける<ref><pubmed> 10959835 </pubmed></ref>。
リーリンの刺激により、Dab1はY185、Y198、Y220、Y232の4カ所でリン酸化を受ける<ref><pubmed> 10959835 </pubmed></ref>。
Y185とY198でリン酸化を受けたDab1はPI3Kのp85aサブユニットに結合し<ref><pubmed> 12882964 </pubmed></ref>、Aktのリン酸化及び[[GSK3β]]のリン酸化を誘導する。これによりTauのリン酸化が制御されると考えられている。
Y185とY198でリン酸化を受けたDab1はPI3Kのp85aサブユニットに結合し<ref><pubmed> 12882964 </pubmed></ref>、Aktのリン酸化及び[[GSK3β]]のリン酸化を誘導する。これによりTauのリン酸化が制御されると考えられている。
Dab1のY220及びY232のリン酸化は、Crk/Crkl-C3G複合体をリクルートし、[[低分子量G蛋白質]]であるRap1のリン酸化を促す<ref><pubmed> 15062102 </pubmed></ref>。最近、大脳[[皮質形成]]の最終段階における、リーリン-Crk/CrkL-C3G-Rap1経路の重要性が明らかとなり、神経細胞が原皮質帯と呼ばれる領域へ進入する際に、この経路を介したインテグリンα5β1の活性化が必要であることが明らかになった<ref><pubmed> 23083738 </pubmed></ref>。また、Dab1を介したRap1の活性化は、[[カドヘリン]]の機能を調節し、早生まれの神経細胞の細胞体トランスロケーションや、遅生まれの神経細胞の多極性移動に重要な役割を担うことも明らかになった<ref><pubmed> 21315259 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21516100 </pubmed></ref>。
Dab1のY220及びY232のリン酸化は、Crk/Crkl-C3G複合体をリクルートし、[[低分子量G蛋白質]]であるRap1のリン酸化を促す<ref><pubmed> 15062102 </pubmed></ref>。最近、大脳[[皮質形成]]の最終段階における、リーリン-Crk/CrkL-C3G-Rap1経路の重要性が明らかとなり、神経細胞が原皮質帯と呼ばれる領域へ進入する際に、この経路を介したインテグリンα5β1の活性化が必要であることが明らかになった<ref><pubmed> 23083738 </pubmed></ref>。また、Dab1を介したRap1の活性化は、[[カドヘリン]]の機能を調節し、早生まれの神経細胞の細胞体トランスロケーションや、遅生まれの神経細胞の多極性移動に重要な役割を担うことも明らかになった<ref><pubmed> 21315259 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21516100 </pubmed></ref>。また、PI3Kの下流で、n-cofilinのリン酸化が誘導され、これによりアクチン骨格系が安定化されることも報告されている<ref><pubmed> 19129405 </pubmed></ref>。


Dab1の下流分子としては他にも数多くの候補分子が挙げられているが、どの分子が、どの現象でどの程度重要なのかについて、決定的な証拠がある例は少ない。おそらくは、細胞種や時期によって、複数の因子が関与しているものと推察される。   
Dab1の下流分子としては他にも数多くの候補分子が挙げられているが、どの分子がどの現象でどの程度重要なのかについて、決定的な証拠がある例は少ない。おそらくは、細胞種や時期によって、複数の因子が関与しているものと推察される。   




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停止シグナル説に対して、2002年頃からリーリンは神経細胞移動に対してpermissiveに働くという許容シグナル説が提唱された。Curranらは、表層側からのリーリン分泌が大脳皮質形成に必要であるかを検討するために、Nestinプロモーター下でリーリンを発現するトランスジェニックマウス(このマウスでは、脳室側でリーリンが異所的に発現する)を作製した<ref><pubmed> 11856531 </pubmed></ref>。このマウスでは神経細胞の移動が阻害されず、大脳皮質の層構造は正常であった。さらに、リーラーマウスと交配した場合、異所的に発現したリーリンは、リーラーマウスのプレプレートスプリッティング異常を回復した(大脳皮質の層構造異常を完全に回復することができなかった)。これらの結果から、リーリンは単純な停止シグナルとして働くのではなく許容シグナルとして働くことが提唱された。
停止シグナル説に対して、2002年頃からリーリンは神経細胞移動に対してpermissiveに働くという許容シグナル説が提唱された。Curranらは、表層側からのリーリン分泌が大脳皮質形成に必要であるかを検討するために、Nestinプロモーター下でリーリンを発現するトランスジェニックマウス(このマウスでは、脳室側でリーリンが異所的に発現する)を作製した<ref><pubmed> 11856531 </pubmed></ref>。このマウスでは神経細胞の移動が阻害されず、大脳皮質の層構造は正常であった。さらに、リーラーマウスと交配した場合、異所的に発現したリーリンは、リーラーマウスのプレプレートスプリッティング異常を回復した(大脳皮質の層構造異常を完全に回復することができなかった)。これらの結果から、リーリンは単純な停止シグナルとして働くのではなく許容シグナルとして働くことが提唱された。
また、cortical hemと呼ばれる部位由来のカハール・レチウス細胞を遺伝学的手法により除去したマウス<ref><pubmed> 16410414 </pubmed></ref>や、p73ノックアウト(辺縁層におけるカハール・レチウス細胞が激減する)マウス<ref><pubmed> 15525772 </pubmed></ref>では、プレプレートスプリッティングは起こり、層構造は概ね正常に形成された。さらに、リーラーの大脳皮質[[スライス培養]]系に、全長リーリンや、リーリン中央部分断片を添加すると、リーラーのプレプレートスプリッティング異常を回復することができるという報告もある<ref><pubmed> 14724251 </pubmed></ref>。
また、cortical hemと呼ばれる部位由来のカハール・レチウス細胞を遺伝学的手法により除去したマウス<ref><pubmed> 16410414 </pubmed></ref>や、p73ノックアウト(辺縁層におけるカハール・レチウス細胞が激減する)マウス<ref><pubmed> 15525772 </pubmed></ref>では、プレプレートスプリッティングは起こり、層構造は概ね正常に形成された。さらに、リーラーの大脳皮質[[スライス培養]]系に、全長リーリンや、リーリン中央部分断片を添加すると、リーラーのプレプレートスプリッティング異常を回復することができるという報告もある<ref><pubmed> 14724251 </pubmed></ref>。
これらの知見は、大脳皮質形成におけるリーリンの機能(少なくともプレプレートスプリッティングなどの一部の機能)には、リーリンが必ずしも表層側から分泌される必要がないことを示唆する。
これらの知見は、大脳皮質形成におけるリーリンの機能(少なくとも、プレプレートスプリッティングなどの一部の機能)には、リーリンが必ずしも表層側から分泌される必要がないことを示唆する。


== 精神神経疾患におけるリーリン ==
== 精神神経疾患におけるリーリン ==
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