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=== ドナーの蛍光寿命を測定する方法 === | === ドナーの蛍光寿命を測定する方法 === | ||
蛍光体が励起されると、図2に示すような減衰曲線に従って蛍光を発する。蛍光寿命は、蛍光の減衰曲線の速度定数<math>k \ </math>と逆数の関係にある。 蛍光寿命は、GFPは2.5nsec、その色彩変異体,黄色蛍光タンパク質YFPでは2.9nsec、mCherryでは1.5nsecの値を取る。FRETが起きるとドナーの蛍光寿命が減少する(図4)。 | 蛍光体が励起されると、図2に示すような減衰曲線に従って蛍光を発する。蛍光寿命は、蛍光の減衰曲線の速度定数<math>k \ </math>と逆数の関係にある。 蛍光寿命は、GFPは2.5nsec、その色彩変異体,黄色蛍光タンパク質YFPでは2.9nsec、mCherryでは1.5nsecの値を取る。FRETが起きるとドナーの蛍光寿命が減少する(図4)。 | ||
FRETが起きると、蛍光寿命が減少する。蛍光寿命の変化を測定する方法は2つある。Time domainおよびfrequency domainである。Time domainについては、近年、データ処理速度の向上により、メガヘルツオーダーのパルス励起光によって励起された一つ一つの光子を、迅速に検出する時間相関単一光子計数法が発展してきた。励起光によって発生した一つ一つの光子が検出器まで届くまでの時間(数nsec)の確率分布が減衰曲線を形成するため、時間を横軸としてヒストグラムを作製することができる。Double exponetial fittingによって、FRETの起きている割合が算出できる。Time domainは、フーリエ変換によってfrequency domainに変換可能である。蛍光寿命プローブとして、ドナーとしてmGFP、アクセプターとしてmRFPもしくはmCherryが用いられる。FLIMの場合、アクセプターの蛍光は必要ないため、FRETのアクセプターとなるが、蛍光を発しないREACh, dark Venus, super REAChなども用いられる。蛍光寿命は、蛍光強度比測定法に比べて、蛍光の漏れ込み、アクセプターとの局在の違いなどによって生じる疑似FRETを回避できる。取得した蛍光を理論上全てデータに反映させることができるが、実際には、time domainにおいて、光子取得後、再び光子を取得する状態に戻るハードウェアのリセット時間(dead time)などがあり全ての光子を取得するには、改善の余地がある。また、秒単位の経時変化を追うためには、64by64ピクセルで画像取得されているのが現状で有り、多数のピクセルから蛍光寿命を取得するためには、処理速度の速いハードウェアが必要となる。さらに、短時間で画像を取得するためには、明るいサンプルであったほうがよい。 | |||
[[Image:FRET-図4.jpg|thumb|right|300px|<b>図4:海馬スライスCA1錐体細胞に発現させたGFPのFLIMイメージおよび減衰曲線(横軸は時間、縦軸は光子数)をBecker&Hickl社software、SPC imageにて取得した。実際には、20秒で数千個オーダーの光子を取得する。これらの光子の発生確率分布が減衰曲線を形成し、近似曲線をフィッティングさせることで蛍光寿命を取得する。</b>]] | [[Image:FRET-図4.jpg|thumb|right|300px|<b>図4:海馬スライスCA1錐体細胞に発現させたGFPのFLIMイメージおよび減衰曲線(横軸は時間、縦軸は光子数)をBecker&Hickl社software、SPC imageにて取得した。実際には、20秒で数千個オーダーの光子を取得する。これらの光子の発生確率分布が減衰曲線を形成し、近似曲線をフィッティングさせることで蛍光寿命を取得する。</b>]] | ||
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===1.プローブの分解に伴うFRETの変化を検出するプローブ=== | ===1.プローブの分解に伴うFRETの変化を検出するプローブ=== | ||
この原理は、FRETプローブの最も初期に導入されたデザインである。例として、Factor | この原理は、FRETプローブの最も初期に導入されたデザインである。例として、Factor Xなどのプロテアーゼが挙げられ<ref><pubmed>8707050</pubmed></ref>、プロテアーゼによって分解される配列の両端にドナーとアクセプターを連結する。プロテアーゼによって、この配列が分解されるとドナーとアクセプターの間に起きていたFRETが解消されることによって、プロテアーゼの活性を評価する。カスパーゼなどの活性を測定するためにも使用されている<ref><pubmed>9518501</pubmed></ref><ref><pubmed>12409609</pubmed></ref><ref><pubmed>21637712</pubmed></ref><ref><pubmed>17946841</pubmed></ref>。このプローブのデザインの短所としては、反応が不可逆的であるために、一つの実験系で何度も測定することが困難であることである。 | ||
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===2.2分子間相互作用を利用したFRETプローブ=== | ===2.2分子間相互作用を利用したFRETプローブ=== | ||
興味のあるタンパク質同士の相互作用を測定する際に、この原理が用いられる。一方にドナー、他方にアクセプターを連結する。タンパク質同士が結合していないときにはFRETは起きていないが、結合することによってFRETを生じる。応用例としては蛍光寿命を基にしたGタンパク質の活性化の測定に用いられている<ref><pubmed>11429608</pubmed></ref>。また、アクチンの重合度を測定するために、アクチンにドナー、アクセプターを連結して測定している例もある<ref><pubmed>15361876</pubmed></ref>。 距離のファクターを生かせるために、比較的大きなシグナルが得られる一方、内在性のタンパク質が反応に関与するために、その分FRET応答が減少する。ドナーとアクセプターの発現量の差によるFRETの応答の変化も問題になる。特に、アクセプターと結合しないドナーが多量に存在するとFRET応答が小さくなる。一般にアクセプターが多い系が、使用に適している。 | |||
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===3.一分子内FRETプローブ=== | ===3.一分子内FRETプローブ=== | ||
一分子内にドナーとアクセプターを連結し、これらの配向および距離の変化を利用する。2分子間FRETに生じるような発現量の違いやドナーとアクセプターの局在の変化によって生じるアーチファクトなどを考慮する必要がない。さらに活性に伴うタンパク質の構造変化などを利用するために、比較的容易に応答するプローブが作製できるが、ドナーとアクセプターを適切な位置に配置するなどの検討が必要である。 | |||
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===3-1タンパク質の構造変化を基にしたFRETプローブ=== | ===3-1タンパク質の構造変化を基にしたFRETプローブ=== |
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