「共同注意」の版間の差分

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<font size="+1">浅田 晃佑 1)、板倉 昭二 2)</font><br>
<font size="+1">浅田 晃佑</font><br>
''1)東京大学先端科学技術研究センター 2)京都大学大学院文学研究科''<br>
''東京大学先端科学技術研究センター''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年xx月XX日 原稿完成日:2013年xx月XX日<br>担当編集委員:[入來 篤史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0095222 板倉 昭二]</font><br>
''京都大学大学院文学研究科''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年11月8日 原稿完成日:2013年月日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/atsushiiriki 入來 篤史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英語名:joint attention
英語名:joint attention
{{box
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|text= 共同注意とは、他者の注意の所在を理解しその対象に対する他者の態度を共有することや、自分の注意の所在を他者に理解させその対象に対する自分の態度を他者に共有してもらう行動を指す。}}
|text= 共同注意とは、他者の注意の所在を理解しその対象に対する他者の態度を共有することや、自分の注意の所在を他者に理解させその対象に対する自分の態度を他者に共有してもらう行動を指す。}}


==共同注意とは==
==共同注意とは==
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==共同注意の発達==
==共同注意の発達==
 共同注意の発達段階は、いくつかの研究者によって分類されている。
 共同注意の発達段階は、いくつかの研究者によって分類されている。
 ButterworthとJarrett<ref>'''G Butterworth, N Jarrett'''<br>What minds have in common is space: Spatial mechanisms in serving joint visual attention in infancy.<br>''Br. J. Dev. Psychol.'':1991, 9;55-72</ref>は、乳児の空間認識能力に重きを置いた発達段階を示している。
 ButterworthとJarrett<ref>'''G Butterworth, N Jarrett'''<br>What minds have in common is space: Spatial mechanisms in serving joint visual attention in infancy.<br>''Br. J. Dev. Psychol.'':1991, 9;55-72</ref>は、乳児の空間認識能力に重きを置いた発達段階を示している。


#生態学的メカニズムの段階(生後6か月頃)
#生態学的メカニズムの段階(生後6か月頃)<br>大人の視線の大まかな方向は特定できるが正確な場所を特定することはできない
    大人の視線の大まかな方向は特定できるが正確な場所を特定することはできない
#幾何学的メカニズムの段階(生後12か月頃)<br>乳児の視野内であれば大人の顔と視線の向きから対象のかなり正確な場所の特定が可能になる
#幾何学的メカニズムの段階(生後12か月頃)
#空間表象メカニズムの段階(生後18か月頃)<br>乳児の背後などの視野外に対しても対象の場所の特定が可能になる
    乳児の視野内であれば大人の顔と視線の向きから対象のかなり正確な場所の特定が可能になる
#空間表象メカニズムの段階(生後18か月頃)
    乳児の背後などの視野外に対しても対象の場所の特定が可能になる


 Tomaselloら<ref><pubmed>16262930</pubmed></ref>は、乳児の他者理解に重きを置いた発達段階を示している。
 Tomaselloら<ref><pubmed>16262930</pubmed></ref>は、乳児の他者理解に重きを置いた発達段階を示している。
#感情と行動の共有の段階(生後3か月頃)
#感情と行動の共有の段階(生後3か月頃)<br>乳児は他者を生物的主体として理解し、他者と1対1で二項関係的に感情や行動を共有する
    乳児は他者を生物的主体として理解し、他者と1対1で二項関係的に感情や行動を共有する
#目標と[[知覚]]の共有の段階(生後9か月頃)<br>乳児は他者を目標志向的な主体として理解し、目標や知覚を共有し、他者と目標物と自分という三者の関係を含んだ三項関係的に関わる
#目標と[[知覚]]の共有の段階(生後9か月頃)
#意図と注意の共有の段階(生後14か月頃)<br>乳児は他者を意図的な主体として理解し、意図や注意を共有し、他者と協力的に関わる
    乳児は他者を目標志向的な主体として理解し、目標や知覚を共有し、他者と目標物と自分という三者の関係を含んだ三項関係的に関わる
#意図と注意の共有の段階(生後14か月頃)
    乳児は他者を意図的な主体として理解し、意図や注意を共有し、他者と協力的に関わる


 他に、Baron-Cohen<ref>'''S Baron-Cohen'''<br>Mindblindness: An essay on autism and theory of mind<br>''Boston: MIT Press/Bradford Books'':1995</ref>は、心を読むシステム(他者理解)を形成する発達段階の1つとして共同注意を位置付けている。共同注意が可能になるためには、他者の意図と視線検出が必要で、共同注意が可能になることにより、後の心の理論(他者理解)が達成されるとする。
 他に、Baron-Cohen<ref>'''S Baron-Cohen'''<br>Mindblindness: An essay on autism and theory of mind<br>''Boston: MIT Press/Bradford Books'':1995</ref>は、心を読むシステム(他者理解)を形成する発達段階の1つとして共同注意を位置付けている。共同注意が可能になるためには、他者の意図と視線検出が必要で、共同注意が可能になることにより、後の心の理論(他者理解)が達成されるとする。


#視線と意図の検出の段階(生後すぐから生後9か月頃)
#視線と意図の検出の段階(生後すぐから生後9か月頃)<br>他者の視線と意図を検出し、二項関係を築く。
    他者の視線と意図を検出し、二項関係を築く。
#共同注意の段階(生後9か月から生後18か月頃)<br>他者との注意の共有が可能になり、三項関係を築く。
#共同注意の段階(生後9か月から生後18か月頃)
#心の理論の段階(生後18か月から生後48か月頃)<br>自分自身や他者の考えが理解できる
    他者との注意の共有が可能になり、三項関係を築く。
#心の理論の段階(生後18か月から生後48か月頃)
    自分自身や他者の考えが理解できる


 共同注意は、乳児が他者の発話時にその対象物を見ることで言語を学習できることから言語学習との関連、相手の心的状態の推測と関係することから心の理論(社会的認知)との関連が指摘されており、そのことを実証的に支持する研究がある<ref><pubmed>16246245</pubmed></ref><ref><pubmed>19046153</pubmed></ref><ref><pubmed>3802971</pubmed></ref>。
 共同注意は、乳児が他者の発話時にその対象物を見ることで言語を学習できることから言語学習との関連、相手の心的状態の推測と関係することから心の理論(社会的認知)との関連が指摘されており、そのことを実証的に支持する研究がある<ref><pubmed>16246245</pubmed></ref><ref><pubmed>19046153</pubmed></ref><ref><pubmed>3802971</pubmed></ref>。
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RedcayとSaxe<ref name=ref1 />によると、共同注意には以下のような脳部位が関与するとされている。背内側[[前頭前野]]は共同注意の相手の存在の知覚、右後部上側頭溝は他者の注意の移動の検出、右下前頭回・右中前頭回・側頭頭頂接合部の一領域を含む腹側前頭頭頂ネットワークは自身の反射的な注意の移動、前頭眼野と頭頂間溝を含む背外側前頭頭頂ネットワークは自身の随意的な注意の移動を担うとされる。特に、内側前頭前野と後部上側頭溝は、人が実際に他者とあるものに対して注意を共有している時に働くとされ、共同注意を担う中心領域であるとされている。
RedcayとSaxe<ref name=ref1 />によると、共同注意には以下のような脳部位が関与するとされている。背内側[[前頭前野]]は共同注意の相手の存在の知覚、右後部上側頭溝は他者の注意の移動の検出、右下前頭回・右中前頭回・側頭頭頂接合部の一領域を含む腹側前頭頭頂ネットワークは自身の反射的な注意の移動、前頭眼野と頭頂間溝を含む背外側前頭頭頂ネットワークは自身の随意的な注意の移動を担うとされる。特に、内側前頭前野と後部上側頭溝は、人が実際に他者とあるものに対して注意を共有している時に働くとされ、共同注意を担う中心領域であるとされている。


 
== 参考文献 ==
 
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