「シナプス」の版間の差分

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英語名:synapse 独:Synapse 仏:synapse
英語名:synapse 独:Synapse 仏:synapse


{{box|text= シナプスとは、神経情報を出力する側と入力される側の間に発達した、情報伝達のための接触構造である。最も基本的な構造はシナプス前細胞の軸索末端がシナプス後細胞の[[樹状突起]]に接触しているものである。シナプスには大別して[[化学シナプス]] chemical synapseと[[電気シナプス]] electrical synapseがあり、出力する側の細胞を[[シナプス前細胞]]、入力される側の細胞を[[シナプス後細胞]]という。中枢神経系の多くのシナプスを占める化学シナプスでは、活動電位の到来により、シナプス前部の電位依存性カルシウムチャネルが開口し、その結果カルシウムが流入し、シナプス顆粒の開口放出を引き起こす。その結果シナプス顆粒に含まれている神経伝達物質がシナプス間隙に放出される。神経伝達物質は、シナプス後部にある神経伝達物質受容体に結合し、直接膜電位を変化させるか細胞内二次メッセンジャーを活性化する事で伝達を行う。化学シナプスは興奮性シナプスと抑制性シナプスに細分される。一方、電気シナプスは接触膜上のギャップ結合を介して、膜電位変化を直接的に次の神経細胞に伝える構造である。このように受け取られたシナプス電位が細胞体まで伝わり、軸索小丘で統合され、最終的にシナプス後細胞が発火するかどうかが決まる。この影響の相互作用を神経統合と呼ぶ。またシナプス伝達の効率は必ずしも一定ではなく、入力の強度により変化する。これをシナプス可塑性と呼び、学習記憶の細胞メカニズムであると考えられている。}}
{{box|text= シナプスとは、神経情報を出力する側と入力される側の間に発達した、情報伝達のための接触構造である。最も基本的な構造はシナプス前細胞の軸索末端がシナプス後細胞の[[樹状突起]]に接触しているものである。シナプスには大別して[[化学シナプス]] chemical synapseと[[電気シナプス]] electrical synapseがあり、出力する側の細胞を[[シナプス前細胞]]、入力される側の細胞を[[シナプス後細胞]]という。中枢神経系の多くのシナプスを占める[[化学シナプス]]では、[[活動電位]]の到来により、[[シナプス前部]]の[[電位依存性カルシウムチャネル]]が開口し、その結果[[カルシウム]]が流入し、[[シナプス顆粒]]の[[開口放出]]を引き起こす。その結果シナプス顆粒に含まれている[[神経伝達物質]]が[[シナプス間隙]]に放出される。神経伝達物質は、[[シナプス後部]]にある[[神経伝達物質受容体]]に結合し、直接[[膜電位]]を変化させるか[[細胞内二次メッセンジャー]]を活性化する事で伝達を行う。化学シナプスは[[興奮性シナプス]]と[[抑制性シナプス]]に細分される。一方、電気シナプスは接触膜上の[[ギャップ結合]]を介して、膜電位変化を直接的に次の神経細胞に伝える構造である。このように受け取られたシナプス電位が[[細胞体]]まで伝わり、[[軸索小丘]]で統合され、最終的にシナプス後細胞が発火するかどうかが決まる。この影響の相互作用を神経統合と呼ぶ。またシナプス伝達の効率は必ずしも一定ではなく、入力の強度により変化する。これを[[シナプス可塑性]]と呼び、[[学習]]・[[記憶]]の細胞メカニズムであると考えられている。}}
[[image:Complete_neuron_cell_diagram_en.png|thumb|350px|'''図1.ニューロン(神経細胞)の構造図'''<br>Dendrites=樹状突起、Rough ER (Nissl body)=粗面小胞体(ニッスル小体)、Polyribosomes=ポリリボソーム、Ribosomes=リボソーム、Golgi apparatus=ゴルジ体、Nucleus=細胞核、Nucleolus=核小体、Membrane=膜、Microtubule=微小管、Mitochondrion=ミトコンドリア、Smooth [[ER]]=滑面小胞体、Synapse (Axodendritic)=軸索樹状突起間シナプス、Synapse=シナプス、Microtubule Neurofibrils=[[微小管]]ニューロフィラメント、Neurotransmitter=神経伝達物質、Receptor=受容体、Synaptic vesicles=シナプス小胞、Synaptic cleft=シナプス間隙、Axon terminal=軸索末端、Node of Ranvier =[[ランヴィエの絞輪]] 、Myelin Sheath (Schwann cell)= シュワン細胞のミエリン鞘、Axon hillock=軸索小丘、 Nucleus (Schwann cell)=シュワン細胞の細胞核、Microfilament=[[マイクロフィラメント]]、Axon=軸索。Wikipediaより引用。]]
[[image:Complete_neuron_cell_diagram_en.png|thumb|350px|'''図1.ニューロン(神経細胞)の構造図'''<br>Dendrites=樹状突起、Rough ER (Nissl body)=粗面小胞体(ニッスル小体)、Polyribosomes=ポリリボソーム、Ribosomes=リボソーム、Golgi apparatus=ゴルジ体、Nucleus=細胞核、Nucleolus=核小体、Membrane=膜、Microtubule=微小管、Mitochondrion=ミトコンドリア、Smooth [[ER]]=滑面小胞体、Synapse (Axodendritic)=軸索樹状突起間シナプス、Synapse=シナプス、Microtubule Neurofibrils=[[微小管]]ニューロフィラメント、Neurotransmitter=神経伝達物質、Receptor=受容体、Synaptic vesicles=シナプス小胞、Synaptic cleft=シナプス間隙、Axon terminal=軸索末端、Node of Ranvier =[[ランヴィエの絞輪]] 、Myelin Sheath (Schwann cell)= シュワン細胞のミエリン鞘、Axon hillock=軸索小丘、 Nucleus (Schwann cell)=シュワン細胞の細胞核、Microfilament=[[マイクロフィラメント]]、Axon=軸索。Wikipediaより引用。]]


== 歴史 ==
== 歴史 ==


 [[wj:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール|Cajal]]が1888年に[[小脳]]で神経細胞同士が接触していることを明らかにしているが、明確に区分された構造物としてシナプスが観察されたのは1897年がはじめてである。
 [[wj:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール|Cajal]]が1888年に[[小脳]]で神経細胞同士が接触していることを明らかにしているが、明確に区分された構造物としてシナプスが観察されたのは1897年がはじめてである(図1)。


 「シナプス」の名付け親は[[wj:チャールズ・シェリントン|Sherrington]]であり、1897年に神経細胞が別の神経細胞につながる特徴的な構造を指して、synapsis(ギリシャ語で、”to clasp”:「留め具」や「握手」といった意味)と呼んだ。synapsisという言葉は多少改変され、1904年にはSherrington自身もsynapseと呼んでいる<ref name=ref2>'''Purves and Lichtman'''<br>"Principles of Neural Development" <br>''Sinauer Associates Inc'', 1985</ref>。
 「シナプス」の名付け親は[[wj:チャールズ・シェリントン|Sherrington]]であり、1897年に神経細胞が別の神経細胞につながる特徴的な構造を指して、synapsis(ギリシャ語で、”to clasp”:「留め具」や「握手」といった意味)と呼んだ。synapsisという言葉は多少改変され、1904年にはSherrington自身もsynapseと呼んでいる<ref name=ref2>'''Purves and Lichtman'''<br>"Principles of Neural Development" <br>''Sinauer Associates Inc'', 1985</ref>。

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