「アミロイドβタンパク質」の版間の差分

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==家族性アルツハイマー病とAβ==
==家族性アルツハイマー病とAβ==
 家族性アルツハイマー病(FAD)に連鎖する遺伝子変異([http://www.molgen.ua.ac.be/ADMutations/ Alzheimer Disease & Frontotemporal Dementia Mutation Database])の多くはこのAβの産生量[[Image:TTfig2.PNG|thumb|350px|'''図2.Aβ産生量を変化させる遺伝子変異'''<br>β及びγセクレターゼによる切断に影響を与える遺伝子変異。]]もしくは凝集性を高める性質を示し、[[アルツハイマー病]]におけるアミロイドカスケード仮説の強い根拠となっている。
[[Image:TTfig2.PNG|thumb|350px|'''図2.Aβ産生量を変化させる遺伝子変異'''<br>β及びγセクレターゼによる切断に影響を与える遺伝子変異。]]
 
 家族性アルツハイマー病(FAD)に連鎖する遺伝子変異([http://www.molgen.ua.ac.be/ADMutations/ Alzheimer Disease & Frontotemporal Dementia Mutation Database])の多くはこのAβの産生量(図2)もしくは凝集性を高める性質を示し、[[アルツハイマー病]]におけるアミロイドカスケード仮説の強い根拠となっている。


===総Aβ産生量を変化させる遺伝子変異===
===総Aβ産生量を変化させる遺伝子変異===
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[[Image:TTfig3.PNG|thumb|350px|'''図3.Aβの凝集性を変化させる遺伝子変異'''<br>Aβ配列内部の変異は凝集性に影響を与える。]]
[[Image:TTfig3.PNG|thumb|350px|'''図3.Aβの凝集性を変化させる遺伝子変異'''<br>Aβ配列内部の変異は凝集性に影響を与える。]]


 Aβ配列内にも多くのFAD変異が存在し、多くの場合はAβの凝集性に大きな影響を与える。Aβ配列のN末端側にある変異は、British変異(H677R(Aβ配列としてH6R))、Tottori変異(D678N(Aβ配列としてD7N))そしてItalian変異(A673V(Aβ配列としてA2V))である。British変異およびTottori変異は、いずれもAβアミロイド線維形成を亢進させる<ref><pubmed> 17170111 </pubmed></ref>。Italian変異については、βセクレターゼによる切断を亢進させると同時に凝集性を高める<ref><pubmed> 19286555 </pubmed></ref>。
 Aβ配列内(図3)にも多くのFAD変異が存在し、多くの場合はAβの凝集性に大きな影響を与える。Aβ配列のN末端側にある変異は、British変異(H677R(Aβ配列としてH6R))、Tottori変異(D678N(Aβ配列としてD7N))そしてItalian変異(A673V(Aβ配列としてA2V))である。British変異およびTottori変異は、いずれもAβアミロイド線維形成を亢進させる<ref><pubmed> 17170111 </pubmed></ref>。Italian変異については、βセクレターゼによる切断を亢進させると同時に凝集性を高める<ref><pubmed> 19286555 </pubmed></ref>。


 一方、Aβ配列の中央部に位置する変異としては、Arctic変異(E693G(Aβ配列としてE22G))、Osaka変異(ΔE693(Aβ配列としてΔE22))、Iowa変異(D694N(Aβ配列としてD23N))が存在する。Dutch変異(E693Q(Aβ配列としてE22Q))はオランダ型[[遺伝性アミロイド性脳出血]]に連鎖する変異として発見された。Dutch変異、Arctic変異ともに<i>in vitro</i>でアミロイド線維形成能が高いこと<ref><pubmed> 12944403 </pubmed></ref>が示されている。加えて、Arctic変異はAβ線維形成過程の中間段階で生じるプロトフィブリルの形成を亢進・安定化することが観察されている<ref><pubmed> 11528419 </pubmed></ref>。Osaka変異は、2008年に本邦より報告された比較的新しい変異である。興味深いことに、この変異をもつAβはアミロイド線維を形成せずオリゴマーの形で留まり、シナプス毒性を示す<ref><pubmed> 18300294 </pubmed></ref>。
 一方、Aβ配列の中央部に位置する変異としては、Arctic変異(E693G(Aβ配列としてE22G))、Osaka変異(ΔE693(Aβ配列としてΔE22))、Iowa変異(D694N(Aβ配列としてD23N))が存在する。Dutch変異(E693Q(Aβ配列としてE22Q))はオランダ型[[遺伝性アミロイド性脳出血]]に連鎖する変異として発見された。Dutch変異、Arctic変異ともに<i>in vitro</i>でアミロイド線維形成能が高いこと<ref><pubmed> 12944403 </pubmed></ref>が示されている。加えて、Arctic変異はAβ線維形成過程の中間段階で生じるプロトフィブリルの形成を亢進・安定化することが観察されている<ref><pubmed> 11528419 </pubmed></ref>。Osaka変異は、2008年に本邦より報告された比較的新しい変異である。興味深いことに、この変異をもつAβはアミロイド線維を形成せずオリゴマーの形で留まり、シナプス毒性を示す<ref><pubmed> 18300294 </pubmed></ref>。

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