「セマフォリン」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
13行目: 13行目:
| image = 1q47.pdb
| image = 1q47.pdb
| width =250
| width =250
| caption =Structure of the Semaphorin 3A Receptor-binding Module. Based on 1q47.
| caption =セマフォリン3A受容体結合領域の立体構造。{{PDB2|1Q47}}による。
| Pfam= PF01403
| Pfam= PF01403
| InterPro= IPR001627
| InterPro= IPR001627
27行目: 27行目:
}}
}}


== イントロダクション ==
==セマフォリンとは==
 セマフォリン分子群の先駆けは、特定の神経束を染め分けるモノクローナル抗体により同定されたファシクリンIVと、ニワトリ後根節細胞の[[成長円錐]]退縮応答を指標に同定されたコラプシン(後のセマフォリン[[3a|3A]], Sema3A)である。Sema3Aは、当初、退縮活性を有することからコラプシンと命名されたが<ref name=ref1><pubmed>10679438</pubmed></ref>、セマドメインを共有するSema3A以外のセマフォリンファミリー分子群が、必ずしも退縮活性を示さないことから、これらを総称して、セマフォリン(ギリシア語の手旗信号)ファミリー分子群と命名されるに至った<ref name=ref2><pubmed>10367884</pubmed></ref>。セマフォリンのプロトタイプであるSema3Aはその後、ニューロピリン1を受容体とすること、この受容体が、血管新生因子 VEGFの受容体でもあることが発見されるに及び<ref name=ref3><pubmed>10688880</pubmed></ref>、セマフォリンが血管系、免疫系等の神経系以外の様々な組織で重要な役割をすることが広く認識されるようになった。加えてアトピー性皮膚炎、がん、多発性硬化症、骨粗鬆症など<ref name=ref4><pubmed>24171101</pubmed></ref>、セマフォリン分子が密接に関係する病態が発見されるようになり、現在ではセマフォリンは重要な創薬ターゲットとしても多くの研究者の注目を集めている。
 セマフォリン分子群の先駆けは、特定の神経束を染め分けるモノクローナル抗体により同定されたファシクリンIVと、ニワトリ後根節細胞の[[成長円錐]]退縮応答を指標に同定されたコラプシン(後のセマフォリン[[3a|3A]], Sema3A)である。セマフォリン3Aは、当初、退縮活性を有することからコラプシンと命名されたが<ref name=ref1><pubmed>10679438</pubmed></ref>、セマドメインを共有するセマフォリン3A以外のセマフォリンファミリー分子群が、必ずしも退縮活性を示さないことから、これらを総称して、セマフォリン(ギリシア語の手旗信号)ファミリー分子群と命名されるに至った<ref name=ref2><pubmed>10367884</pubmed></ref>。セマフォリンのプロトタイプであるセマフォリン3Aはその後、ニューロピリン1を受容体とすること、この受容体が、血管内皮細胞増殖因子 (vascular endothelial growth factor, VEGF)の受容体でもあることが発見されるに及び<ref name=ref3><pubmed>10688880</pubmed></ref>、セマフォリンが血管系、免疫系等の神経系以外の様々な組織で重要な役割をすることが広く認識されるようになった。加えてアトピー性皮膚炎、がん、多発性硬化症、骨粗鬆症など<ref name=ref4><pubmed>24171101</pubmed></ref>、セマフォリン分子が密接に関係する病態が発見されるようになり、現在ではセマフォリンは重要な創薬ターゲットとしても多くの研究者の注目を集めている。
 
== セマフォリンファミリー分子とその受容体 ==
[[image:semaphorin 1.jpg|thumb|300px|'''図1.''']]
[[image:semaphorin 2.jpg|thumb|300px|'''図2.''']]
[[image:semaphorin 3.jpg|thumb|300px|'''図3.''']]
 
 セマフォリンは構造の違いにより、8つのサブファミリー (Sema1-7とV [ウイルス])に分類される(図1)<ref name=ref1 />。全てのセマフォリンの N末端側はセマドメインとなっており、C末端側の構造によって、[[分泌]]型、膜貫通型、 GPIアンカー型等の性質が付与される。この内、Sema1aは[[線虫]]や[[ショウジョウバエ]]、Sema2aはショウジョウバエ、ハチ等の昆虫に存在するセマフォリンである。
 
 プレキシンはA-Dの四つのサブファミリーに分類される。N末端はセマフォリンと同様にセマドメインとなっており、それ以外の細胞外ドメインも各サブタイプでほぼ共通である。立体構造の解析から、セマフォリンとプレキシンのセマドメインは七枚の羽のようなユニットからなるβプロペラ構造を持っていることが明らかとなった。セマフォリンとプレキシンの結合はお互いのセマドメイン同士を介して行われる。Sema3サブファミリーは直接プレキシンと結合しないが、ニューロピリンとの結合を介してプレキシンAのセマドメインと相互作用する。プレキシンの中には、膜貫通型チロシンキナーゼや[[免疫グロブリンスーパーファミリー]]等と会合するものがある。これらの分子はプレキシンによる情報伝達を修飾する役割を担っている。
 
 いくつかのセマフォリンはプレキシン以外の受容体と結合することが知られている。CD72、Tim-2、インテグリン等が該当するが、それらはセマドメインを持たず、共通性が見られない。今後、これらの非プレキシン型受容体に関しても解明が進むものと思われる。


== 発現パターンと細胞内分布 ==
== 発現パターンと細胞内分布 ==
121行目: 132行目:
|-  
|-  
|}
|}
== セマフォリンファミリー分子とその受容体 ==
[[image:semaphorin 1.jpg|thumb|300px|'''図1.''']]
[[image:semaphorin 2.jpg|thumb|300px|'''図2.''']]
[[image:semaphorin 3.jpg|thumb|300px|'''図3.''']]
 全てのセマフォリンの N末端側はセマドメインとなっており、C末端側の構造によって、[[分泌]]型、膜貫通型、 GPIアンカー型等の性質が付与される。これらの構造の違いにより、8つのサブファミリー (Sema1-7とV [ウイルス])に分類される(図1)<ref name=ref1 />。この内、Sema1aは[[線虫]]や[[ショウジョウバエ]]、Sema2aはショウジョウバエ、ハチ等の昆虫に存在するセマフォリンである。プレキシンはA-Dの四つのサブファミリーに分類される。N末端はセマフォリンと同様にセマドメインとなっており、それ以外の細胞外ドメインも各サブタイプでほぼ共通である。立体構造の解析から、セマフォリンとプレキシンのセマドメインは七枚の羽のようなユニットからなるβプロペラ構造を持っていることが明らかとなった。セマフォリンとプレキシンの結合はお互いのセマドメイン同士を介して行われる。Sema3サブファミリーは直接プレキシンと結合しないが、ニューロピリンとの結合を介してプレキシンAのセマドメインと相互作用する。プレキシンの中には、膜貫通型チロシンキナーゼや[[免疫グロブリンスーパーファミリー]]等と会合するものがある。これらの分子はプレキシンによる情報伝達を修飾する役割を担っている。いくつかのセマフォリンはプレキシン以外の受容体と結合することが知られている。CD72、Tim-2、インテグリン等が該当するが、それらはセマドメインを持たず、共通性が見られない。今後、これらの非プレキシン型受容体に関しても解明が進むものと思われる。


== セマフォリンの情報伝達 ==
== セマフォリンの情報伝達 ==

案内メニュー