「グリア細胞」の版間の差分

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====神経活動の同期に関わる可能性====
====神経活動の同期に関わる可能性====
[[ファイル:Kudo Fig12.png|thumb|right|350px|'''図12 髄鞘間の情報伝達による伝導速度と同期性の促進'''<br>軸索に発生する活動電位により活性化されたオリゴデンドロサイトから遊離されたグリオトランスミッター(ATP、アデノシンなど)により隣接の髄鞘が刺激され、伝導速度が促進される。その結果、信号の同期性が高まる。]]
 ATPやその代謝産物であるアデノシンによる髄鞘の興奮についてはさらに重要な発見がある。興奮した髄鞘で包まれている軸索における伝導速度を上昇させるのである<ref><pubmed>18634564</pubmed></ref>。オリゴデンドロサイトはその名の通り、あまり沢山の突起は持たないが、それでも多い場合は30本ほどの突起を繰り出して、神経軸索に髄鞘を作る。もし、この細胞が興奮したら、その細胞が関わる30本の軸索の伝導速度は一気に高まることになる(図12)。また、上述のように一つのオリゴデンドロサイトの興奮が隣接するオリゴデンドロサイトに伝搬すれば、ある集団の神経軸索の伝導速度は高められ、それらが送られるシナプス側において、非常に高い同期性を持つことになる。これは特定の情報の伝達効率を集団的に高めるのに有効な方法であり、これまでに考えられてきたシナプスにおける伝達効率促進とはまったく質の異なったメカニズムである。
 ATPやその代謝産物であるアデノシンによる髄鞘の興奮についてはさらに重要な発見がある。興奮した髄鞘で包まれている軸索における伝導速度を上昇させるのである<ref><pubmed>18634564</pubmed></ref>。オリゴデンドロサイトはその名の通り、あまり沢山の突起は持たないが、それでも多い場合は30本ほどの突起を繰り出して、神経軸索に髄鞘を作る。もし、この細胞が興奮したら、その細胞が関わる30本の軸索の伝導速度は一気に高まることになる(図12)。また、上述のように一つのオリゴデンドロサイトの興奮が隣接するオリゴデンドロサイトに伝搬すれば、ある集団の神経軸索の伝導速度は高められ、それらが送られるシナプス側において、非常に高い同期性を持つことになる。これは特定の情報の伝達効率を集団的に高めるのに有効な方法であり、これまでに考えられてきたシナプスにおける伝達効率促進とはまったく質の異なったメカニズムである。
 髄鞘の厚みが増すことによる伝導速度促進および同じオリゴデンドロサイトに支配されている神経軸索間の同期は間違いなく脳機能の向上に関わるはずである。脳の可塑性を支える要素の一つとして注目されるべき機能である。
 髄鞘の厚みが増すことによる伝導速度促進および同じオリゴデンドロサイトに支配されている神経軸索間の同期は間違いなく脳機能の向上に関わるはずである。脳の可塑性を支える要素の一つとして注目されるべき機能である。

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