「アミロイドβタンパク質」の版間の差分

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==産生==
==産生==
 cDNAクローニングによりAβは前駆タンパク質である[[Amyloid-β precursor protein]]([[APP]])の部分断片であること、[[βセクレターゼ]]および[[γセクレターゼ]]による連続した二段階切断によって切りだされ、細胞外へと[[分泌]]されることが示された<ref><pubmed> 20139999 </pubmed></ref>。βセクレターゼ活性は[[BACE1]]と呼ばれる[[膜結合型アスパラギン酸プロテアーゼ]]によって担われており、その切断が総Aβ産生量を規定している。γセクレターゼはPresenlinを活性中心サブユニットとする膜タンパク質複合体であり、[[ニカストリン]]、[[Aph-1]]、[[Pen-2]]と膜タンパク複合体として機能する<ref><pubmed> 12660785 </pubmed></ref>。γセクレターゼは特殊な切断様式をとる膜内配列切断アスパラギン酸プロテアーゼ<ref><pubmed> 23585568 </pubmed></ref>であり、APPの膜貫通領域を細胞質側から徐々に切断し最終的にAβの分泌に至らしめる。
 cDNAクローニングによりAβは前駆タンパク質である[[Amyloid-β precursor protein]]([[APP]])の部分断片であること、[[βセクレターゼ]]および[[γセクレターゼ]]による連続した二段階切断によって切りだされ、細胞外へと[[分泌]]されることが示された<ref><pubmed> 20139999 </pubmed></ref>。βセクレターゼ活性は[[BACE1]]と呼ばれる[[膜結合型アスパラギン酸プロテアーゼ]]によって担われており、その切断が総Aβ産生量を規定している。γセクレターゼはPresenilinを活性中心サブユニットとし、[[ニカストリン]]、[[Aph-1]]、[[Pen-2]]と膜タンパク複合体<ref><pubmed> 12660785 </pubmed></ref>として活性を発揮する膜内配列切断アスパラギン酸プロテアーゼ<ref><pubmed> 23585568 </pubmed></ref>であり、APPの膜貫通領域を細胞質側から徐々に切断し最終的にAβを分泌せしめる。Presenilinは9回膜貫通型構造を取り、第6膜貫通領域にYDモチーフ、第7膜貫通領域にGxGDモチーフと呼ばれる活性中心アミノ酸残基を含むモチーフを持つ。また第8および第9膜貫通領域の間にPALモチーフと呼ばれる種間保存性の高い一次配列を持つ。これら3つのモチーフを含むプロテアーゼは古細菌から保存されており、[http://merops.sanger.ac.uk/cgi-bin/famsum?family=a22 Peptidase family A22]としてMEROPSデータベース上で分類されている。


 一方APPにはAβ配列の16番目で[[αセクレターゼ]]による切断を受ける代謝経路も存在する。この結果生じたC末端断片もγセクレターゼによる切断を受けてp3と呼ばれる短い断片が分泌される。この場合はAβ産生には至らないため、[[アルツハイマー病]]発症に対して防御的な経路と考えられる。神経細胞における主たるαセクレターゼとしてはADAM9、ADAM10、ADAM17が候補として考えられている。
 一方APPにはAβ配列の16番目で[[αセクレターゼ]]による切断を受ける代謝経路も存在する。この結果生じたC末端断片もγセクレターゼによる切断を受けてp3と呼ばれる短い断片が分泌される。この場合はAβ産生には至らないため、[[アルツハイマー病]]発症に対して防御的な経路と考えられる。神経細胞における主たるαセクレターゼとしてはADAM9、ADAM10、ADAM17が候補として考えられている。
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 同様にAβのC末側に存在するIranian変異(T714A)、Austrian変異(T714I)、German変異(V715A)、French変異(V715M)、Florida変異(I716V)、Iberian変異(I716F)、London変異(V717Iの他、L、F、G)、Australian変異(L723P)、Belgian変異(K724N)などは、いずれもγセクレターゼによる切断を変化させ、総Aβ産生量には大きな影響を与えずに特に凝集性の高いAβ42の産生比率(総Aβ産生量に対する)を上昇させる。またFlemish変異(A692G(Aβ配列としてA21G))はAβ産生量を増大させる。これはA21を含む領域がAPPに存在するγセクレターゼ活性を抑制するドメインであり、Flemish変異はその抑制効果を低下させるため、Aβ産生量を増加させると考えられている<ref><pubmed> 20062056 </pubmed></ref>。
 同様にAβのC末側に存在するIranian変異(T714A)、Austrian変異(T714I)、German変異(V715A)、French変異(V715M)、Florida変異(I716V)、Iberian変異(I716F)、London変異(V717Iの他、L、F、G)、Australian変異(L723P)、Belgian変異(K724N)などは、いずれもγセクレターゼによる切断を変化させ、総Aβ産生量には大きな影響を与えずに特に凝集性の高いAβ42の産生比率(総Aβ産生量に対する)を上昇させる。またFlemish変異(A692G(Aβ配列としてA21G))はAβ産生量を増大させる。これはA21を含む領域がAPPに存在するγセクレターゼ活性を抑制するドメインであり、Flemish変異はその抑制効果を低下させるため、Aβ産生量を増加させると考えられている<ref><pubmed> 20062056 </pubmed></ref>。


 一方で、ほとんどのFADは[[Presenilin 1]]もしくは[[Presenilin 2|2]]遺伝子上の点突然変異に連鎖する。Presenilin遺伝子のFAD変異がどのような影響を及ぼしているかは未だ定かではないが、何れにせよいずれの変異もγセクレターゼによる切断様式を変化させ、Aβ42の産生比率を特異的に増加させることでアルツハイマー病の発症過程を促進していると考えられている。
 一方で、ほとんどのFADは[[Presenilin 1]]もしくは[[Presenilin 2|2]]遺伝子上の点突然変異に連鎖する。これらのFAD変異がPresenilinタンパク質にどのような影響を及ぼしているかは未だ定かではないが、Aβ42産生を上昇させる変異の他、Aβ40産生を低下させる変異や、全体としてAβ産生を抑制するような変異も報告されている。しかしいずれの変異においても野生型γセクレターゼと比較してAβ42の産生比率を特異的に増加させることが共通しており<ref><pubmed> 10327206 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16752394 </pubmed></ref>、その結果アルツハイマー病の発症過程が促進されていると考えられている。


 βセクレターゼに対するIcelandic変異のように、γセクレターゼによるAβ42産生を抑制する変異は未だ見出されていないが、アルツハイマー病に関連する遺伝学的予防因子<i>PICALM</i><ref><pubmed> 24162737 </pubmed></ref>の発現量低下がγセクレターゼの細胞内輸送を変化させることでAβ42産生量を低下させることが報告されている。
 βセクレターゼに対するIcelandic変異のように、γセクレターゼによるAβ42産生を抑制する変異は未だ見出されていないが、アルツハイマー病に関連する遺伝学的予防因子<i>PICALM</i><ref><pubmed> 24162737 </pubmed></ref>の発現量低下がγセクレターゼの細胞内輸送を変化させることでAβ42産生量を低下させることが報告されている。
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