「アミロイドβタンパク質」の版間の差分

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[[Image:TTfig7.PNG|thumb|350px|'''図4.アルツハイマー病の進行と分子病態'''<br>Aβ蓄積は15-20年以上前から開始していると推測されている。]]
[[Image:TTfig7.PNG|thumb|350px|'''図4.アルツハイマー病の進行と分子病態'''<br>Aβ蓄積は15-20年以上前から開始していると推測されている。]]


 アミロイドカスケード仮説に基づき、Aβを標的とした抗アルツハイマー病戦略は根治療法として期待され、特にセクレターゼ活性制御によるAβ産生メカニズムの抑制、Aβ凝集阻害によるアミロイド形成抑制、そしてAβ除去を促進するアミロイド沈着の抑制を主たる薬効とする治療薬開発が推進されてきた。この中でセクレターゼ活性制御のうちγセクレターゼ阻害薬[[wikipedia:en:Semagacestrat|Semagacestat]]の治験は副作用を生じたため開発が中止された。現在ではAβ42産生のみを特異的に低下させるγセクレターゼ制御薬(モジュレーター)や、βセクレターゼ阻害薬の治験が精力的に進められている<ref><pubmed> 19402777 </pubmed></ref>。Aβ凝集阻害については[[scyllo-Inositol]]を用いた治験が行われたが、やはり副作用のため開発中止となった。Aβ除去を目的としたストラテジーについては、現在は特にAβに対する獲得免疫を利用した[[wikipedia:ja:抗体|抗体]]や[[wikipedia:ja:ワクチン|ワクチン]]による治療薬開発が進められている。またAβの凝集性を高めるピログルタミル化を担う酵素[[glutaminyl cyclase]]も、新たな創薬戦略として注目されている<ref><pubmed> 18836460 </pubmed></ref>。
 アミロイドカスケード仮説に基づき、Aβを標的とした抗アルツハイマー病戦略は根治療法として期待され、特にセクレターゼ活性制御によるAβ産生メカニズムの抑制、Aβ凝集阻害によるアミロイド形成抑制、そしてAβ除去を促進するアミロイド沈着の抑制を主たる薬効とする治療薬開発が推進されてきた。この中でセクレターゼ活性制御のうちγセクレターゼ阻害薬[[wikipedia:en:Semagacestrat|Semagacestat]]の治験は副作用を生じたため開発が中止された。この副作用の原因は定かではないが、前述したようにγセクレターゼは数多くの基質の切断に関与していること、特にNotchシグナルの抑制が大きな問題となったのではないかと考えられている。従って現在ではAβ42産生のみを特異的に低下させるγセクレターゼ制御薬(モジュレーター)や、βセクレターゼ阻害薬の治験が精力的に進められている<ref><pubmed> 19402777 </pubmed></ref>。Aβ凝集阻害については[[scyllo-Inositol]]を用いた治験が行われたが、やはり副作用のため開発中止となった。Aβ除去を目的としたストラテジーについては、現在は特にAβに対する獲得免疫を利用した[[wikipedia:ja:抗体|抗体]]や[[wikipedia:ja:ワクチン|ワクチン]]による治療薬開発が進められている。またAβの凝集性を高めるピログルタミル化を担う酵素[[glutaminyl cyclase]]も、新たな創薬戦略として注目されている<ref><pubmed> 18836460 </pubmed></ref>。


 剖検脳(図4)において老人斑の疾患特異性が高いのに対して、[[神経原線維変化]]は様々な神経変性疾患において観察されること、そして非認知症健常者においても老人斑蓄積が認められることから、Aβ蓄積とタウ病変である神経原線維変化の関係については、長らく様々な議論がなされてきた。しかしほぼ全てのFAD遺伝子変異がAβ蓄積を亢進する一方で、Aβ産生を抑制する変異が[[認知機能]]低下に対する防御的変異として同定されたこと、またタウ遺伝子変異に起因し、老人斑蓄積を認めない[[前頭側頭葉変性症]]が見出され、Aβはアルツハイマー病を惹起する毒性分子であり、タウ病変はその下流で神経細胞死に直接関与するプロセスであると考えられるようになった。そしてモデルマウスを用いて、Aβ蓄積がタウ病変を亢進させる<ref><pubmed> 11520987 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11520988 </pubmed></ref>ことや、脳脊髄液中のタウ濃度を上昇させる<ref><pubmed> 23863834 </pubmed></ref>ことが示された。
 剖検脳(図4)において老人斑の疾患特異性が高いのに対して、[[神経原線維変化]]は様々な神経変性疾患において観察されること、そして非認知症健常者においても老人斑蓄積が認められることから、Aβ蓄積とタウ病変である神経原線維変化の関係については、長らく様々な議論がなされてきた。しかしほぼ全てのFAD遺伝子変異がAβ蓄積を亢進する一方で、Aβ産生を抑制する変異が[[認知機能]]低下に対する防御的変異として同定されたこと、またタウ遺伝子変異に起因し、老人斑蓄積を認めない[[前頭側頭葉変性症]]が見出され、Aβはアルツハイマー病を惹起する毒性分子であり、タウ病変はその下流で神経細胞死に直接関与するプロセスであると考えられるようになった。そしてモデルマウスを用いて、Aβ蓄積がタウ病変を亢進させる<ref><pubmed> 11520987 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11520988 </pubmed></ref>ことや、脳脊髄液中のタウ濃度を上昇させる<ref><pubmed> 23863834 </pubmed></ref>ことが示された。
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