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担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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同義語:プロセス依存 | |||
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「行動嗜癖(behavioral | 「行動嗜癖(behavioral addiction)」とは、[[精神作用物質]]ではなく、ある特定の行動や一連の行動プロセスを依存対象とする「[[依存症]]」である。[[病的ギャンブリング]]や[[インターネット・ゲーム障害]]、窃盗癖、買い物、暴力、自傷、性的逸脱行動、過食・嘔吐、放火、携帯電話など、実な多岐にわたる様式がある。 | ||
行動嗜癖の定義や構成概念にはいまだ不明瞭な点が多く、物質依存症と同じカテゴリーに含めるべきかについては、専門家のあいだでも論争が続いている。しかし、近年の研究により、[[報酬系]]と呼ばれる脳内[[ドーパミン]]神経系回路の関与など、物質依存症との類似性に関する知見が報告されるようになった。こうした趨勢のなかで、病的ギャンブリングは、[[DSM-5]]において物質依存症と同じ診断カテゴリー、「物質関連と嗜癖の障害」に分類されることとなった。 | |||
現在までのところ、確立された生物学的治療法はないものの、海外には、薬物療法の部分的な有効性を報告する研究がいくつか存在する。一方、国内では、薬物療法はほとんど試みられていないものの、一部の施設で既存の物質依存症に対する治療を援用した集団療法が試みられている。また、行動嗜癖のなかのいくつかに関しては、国内でも12ステッププログラムによる自助グループが存在し、独自の支援活動を展開している。 | 現在までのところ、確立された生物学的治療法はないものの、海外には、薬物療法の部分的な有効性を報告する研究がいくつか存在する。一方、国内では、薬物療法はほとんど試みられていないものの、一部の施設で既存の物質依存症に対する治療を援用した集団療法が試みられている。また、行動嗜癖のなかのいくつかに関しては、国内でも12ステッププログラムによる自助グループが存在し、独自の支援活動を展開している。 | ||
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== 行動嗜癖とは == | == 行動嗜癖とは == | ||
「行動嗜癖(behavioral addiction)」とは、ある特定の行動や一連の行動プロセスがもたらす高揚感や、不安や怒りの軽減、緊張からの解放など、不快感情の軽減が一種の報酬効果となって反復化・習慣化し、心理社会的もしくは健康上の問題をもたらしていることを知りながらも、その行動をとめることができない状態を意味する。しばしばその行動に対する[[自己制御]] | 「行動嗜癖(behavioral addiction)」とは、ある特定の行動や一連の行動プロセスがもたらす高揚感や、不安や怒りの軽減、緊張からの解放など、不快感情の軽減が一種の報酬効果となって反復化・習慣化し、心理社会的もしくは健康上の問題をもたらしていることを知りながらも、その行動をとめることができない状態を意味する。しばしばその行動に対する[[自己制御]]困難の感覚も伴っている。この自己制御困難感の強い病態では、[[強迫]]との境界は不明瞭になるが、そもそも本人がその行動を好んでおり、本人が自ら主体的にその行動を選択しているという点において、強迫とは区別される。 | ||
この行動嗜癖という臨床概念は、病的ギャンブリング(pathological gambling)やインターネット・ゲーム障害(internet gaming | この行動嗜癖という臨床概念は、病的ギャンブリング(pathological gambling)やインターネット・ゲーム障害(internet gaming disorder)、窃盗癖(kleptomania)などの他、買い物、暴力・虐待、自傷、性的逸脱行動、[[摂食障害#過食|過食]]・嘔吐、放火、携帯電話など、多様な行動上の障害を含んであり、現状では不均質な症候群といわざるを得ない。なかには日常的で必要不可欠な社会的行為もあり、その点では、正常とのあいだに質的な差異はなく、あくまでも量的に逸脱した病態といえる。また、病態を説明する生物学的根拠がいまだ不十分なことも、行動嗜癖の位置づけを難しくさせている。物質[[依存症]]の場合、すでに精神作用物質の習慣的摂取による脳内変化や生理学的依存の存在が明らかにされており、それに依拠して依存症概念が確立された経緯がある。 | ||
こうした経緯から、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めることについては、いまだ専門家のあいだでも議論がある<ref name=ref1><pubmed>11691967</pubmed></ref>。実際、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めるかどうかについては、1980年代前半から検討され続けられながらも、実際には、[[DSM-IV]](DSMとは米国精神医学会が定めた精神障害についてのガイドライン、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略。)においては「衝動制御の障害」という疾患分類に、また、[[ICD-10]](ICDとは世界保健機関により公表された疾病及び関連保健問題の国際統計分類、International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problemsの略。)においては「習慣及び衝動の障害」の項目に入れられていた。 | こうした経緯から、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めることについては、いまだ専門家のあいだでも議論がある<ref name=ref1><pubmed>11691967</pubmed></ref>。実際、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めるかどうかについては、1980年代前半から検討され続けられながらも、実際には、[[DSM-IV]](DSMとは米国精神医学会が定めた精神障害についてのガイドライン、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略。)においては「衝動制御の障害」という疾患分類に、また、[[ICD-10]](ICDとは世界保健機関により公表された疾病及び関連保健問題の国際統計分類、International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problemsの略。)においては「習慣及び衝動の障害」の項目に入れられていた。 | ||
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行動嗜癖と物質依存において、同じ脳内回路の異常が指摘されており、その主なものが脳内報酬系あるいは辺縁報酬系回路(reward system)と呼ばれるものである<ref name=ref3><pubmed>23963609</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>21273114</pubmed></ref> <ref name=ref5><pubmed>12359667</pubmed></ref>。報酬系回路とは、食行動や性行動などの本能的行動を快感として感じることで、行動の継続を図る種の保存のための神経系であるが、生存のための本能的行動が快感追求だけの目的で行われると、快感追求の継続と反復という嗜癖や依存領域に強く関わる神経回路として機能する。 | 行動嗜癖と物質依存において、同じ脳内回路の異常が指摘されており、その主なものが脳内報酬系あるいは辺縁報酬系回路(reward system)と呼ばれるものである<ref name=ref3><pubmed>23963609</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>21273114</pubmed></ref> <ref name=ref5><pubmed>12359667</pubmed></ref>。報酬系回路とは、食行動や性行動などの本能的行動を快感として感じることで、行動の継続を図る種の保存のための神経系であるが、生存のための本能的行動が快感追求だけの目的で行われると、快感追求の継続と反復という嗜癖や依存領域に強く関わる神経回路として機能する。 | ||
報酬系回路は、中脳辺縁系を中心とするドーパミン神経系(別名A10神経系)からなり、中脳の腹側被蓋野から側坐核に投射するが、側坐核を含む腹側線条体のみならず、[[眼窩前頭皮質]]、前部帯状回皮質、[[扁桃体]]、[[海馬]]、大脳の[[前頭前野]]へも投射している。 | |||
依存性物質や、飲食、性行為などの快[[情動]] | 依存性物質や、飲食、性行為などの快[[情動]]をもたらす自然の強化因子は、腹側被蓋野から側坐核へ一過性のドーパミン放出を誘発することで、報酬系を活性化させる。なお、腹側被蓋野は、必ずしも報酬により快感覚を得られる状況だけではなく、報酬を期待して行動をしているときにも活性化するため、日常生活における意欲の向上や動機づけにおいても重要な役割を担う。 | ||
側坐核が刺激されると、その神経細胞間での多量の内部伝達が誘発され、それによりドーパミンの放出が惹起され、快感や高揚感がもたらされる。つまりドーパミンは反復行動の強化と動機づけに重要な役割を果たすと考えられており、報酬系と遊離ドーパミンの濃度が物質乱用や嗜癖に関わっていることを示す知見は数多く存在する。パーキンソン症候群の治療薬であるドーパミン[[作動薬]]が、衝動制御障害を誘発する危険因子であることも指摘されている<ref name=ref6><pubmed>20457959</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed> 19346328</pubmed></ref>。 | |||
そして側坐核のみでなく、腹側被蓋野領域から扁桃体、眼窩前頭皮質、前部帯状回皮質、海馬、前頭前野へも一過性のドーパミン放出が惹起される。扁桃体と眼窩前頭皮質は、報酬を予期させるものと、それにより実際に生じた報酬である快情動とを関連づけることに重要な役割を担うとされている。さらに眼窩前頭皮質は、その得られた報酬の価値を[[符号化]]し情報を更新することに関連している。また、中脳からのドーパミン伝達により、海馬依存性の[[長期記憶]]形成が強化されるため、その報酬に関連した刺激や状況が記憶され、その後の嗜癖形成への発展につながる。前部帯状回は、嗜癖行動とそれにより得られる報酬とを関連づけ、得られる報酬によって行動を選択・制御する。そして、報酬系ドーパミン伝達により、理性的思考により衝動行為を制御する前頭前野の機能が低下する。眼窩前頭皮質と前部帯状回を経由して、神経伝達が上意下達式に中脳辺縁系領域に再び到達し、報酬探索の動機が制御される<ref name=ref8><pubmed>22011681</pubmed></ref>。 | |||
物質依存症も行動嗜癖も、渇望を来たす状況への反復的暴露が、中脳辺縁系の活性化と前頭前野の抑制力減弱を招くという点では、衝動制御能低下という共通の特徴をもつ。依存や嗜癖に関連した行動を実行しようとする動機が、それを制御しようとする努力にまさってしまう。徐々にそのような行動の頻度が増え、習慣化していく。物質使用障害では、依存の習慣が形成されていく過程において、刺激により誘発される活性化が、側坐核の背外側部から腹内側部へ、最後には、感覚運動の皮質線条体系回路も関連する腹側線条体へ移動していくことが示唆されており<ref name=ref9><pubmed>16251991</pubmed></ref>、衝動制御の障害においても、同様の変化を示唆する知見が出てきている<ref name=ref10><pubmed>15643429</pubmed></ref> | 物質依存症も行動嗜癖も、渇望を来たす状況への反復的暴露が、中脳辺縁系の活性化と前頭前野の抑制力減弱を招くという点では、衝動制御能低下という共通の特徴をもつ。依存や嗜癖に関連した行動を実行しようとする動機が、それを制御しようとする努力にまさってしまう。徐々にそのような行動の頻度が増え、習慣化していく。物質使用障害では、依存の習慣が形成されていく過程において、刺激により誘発される活性化が、側坐核の背外側部から腹内側部へ、最後には、感覚運動の皮質線条体系回路も関連する腹側線条体へ移動していくことが示唆されており<ref name=ref9><pubmed>16251991</pubmed></ref>、衝動制御の障害においても、同様の変化を示唆する知見が出てきている<ref name=ref10><pubmed>15643429</pubmed></ref>。ただし嗜癖行動は依存性物質と異なり、直接中枢の神経細胞に作用し、ドーパミン神経系を混乱させるわけではないため、幻覚[[妄想]]、認知機能障害などの中毒症状や、離脱症状を来たすことはない。 | ||
以上のように、行動嗜癖形成の機序については、諸々の感覚刺激、記憶、目的や動機、身体的状況、環境などの情報が、中脳腹側被蓋野から側坐核、前頭前野へ投射するドーパミン神経系を中心に、[[扁桃核]]、前頭前野、腹側淡蒼球、視床など、報酬系とそれをとりまく神経回路において統合され、脳の様々な領域が協働していると考えられているが、今なお解析が進められている。 | |||
===神経伝達物質=== | ===神経伝達物質=== | ||
報酬系回路は主としてドーパミン性神経伝達によるが、その他の神経伝達物質も重要な役割をもつ<ref name=ref11><pubmed>17719013</pubmed></ref>。 | |||
腹側被蓋野領域の後部にある吻側内側被害核から、腹側被蓋野領域の近傍と黒質に投射する[[GABA]] | 腹側被蓋野領域の後部にある吻側内側被害核から、腹側被蓋野領域の近傍と黒質に投射する[[GABA]]介在神経が、報酬系回路のドーパミン神経系の主な抑制因子として働く<ref name=ref12><pubmed>23055478</pubmed></ref>。βエンドルフィンが、腹側被蓋野の抑制系回路であるGABA含有ニューロンのμオピオイド受容体に作用すると、GABA神経系が抑制される。するとドーパミン神経系からドーパミン遊離が促進され、快情動が出現する。つまり、GABA神経系抑制によりドーパミン神経が脱抑制され、脳内報酬系が賦活化される。賦活化が持続すると、精神依存が生じる。また、報酬を「好む」ということは、中脳のμオピオイド受容体への刺激により伝達され、側坐核と腹側淡蒼球において、ドーパミン神経系と相互作用することも関与する<ref name=ref13><pubmed>17301168</pubmed></ref>。以上の機序より、GABA性の治療薬とともに<ref name=ref14><pubmed>20655489</pubmed></ref> <ref name=ref15><pubmed>21459656</pubmed></ref>、オピオイド[[拮抗薬]]が、衝動制御の障害に有効な治療法として期待されている。 | ||
皮質辺縁線条体回路においては、ドーパミン[[D1受容体]]とNMDA神経系の相互作用が、報酬を得る行動への学習に必要である<ref name=ref16><pubmed>11978804</pubmed></ref>。物質使用障害に関する研究では、[[前頭葉]]から側坐核への[[グルタミン酸]]神経伝達の変化が、薬物関連行動への衝動に関連することが示唆されており<ref name=ref17><pubmed>15748840</pubmed></ref>、グルタミン酸系の治療薬が行動嗜癖に有効であったという報告もある<ref name=ref18><pubmed>21713109</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>21536062</pubmed></ref>。 | |||
衝動性の亢進は、ドーパミン系の脳内報酬系とは別に、[[セロトニン]]系神経ネットワークの機能低下によって生じることも示唆されている。セロトニンに関連した薬が治療薬になりうるかは議論のあるところであるが<ref name=ref11 />、ドーパミンが報酬探索行動を促進させる一方、セロトニンは、罰則下で衝動的行為に対する抑制的行動を助長させることが示唆されている<ref name=ref20><pubmed>20736991</pubmed></ref>。 | |||
===報酬回路不全症候群=== | ===報酬回路不全症候群=== | ||
物質依存症と同様に、行動嗜癖においても、報酬系回路が慢性持続的に活性化され続けると馴化が生じ、鈍化が進行する。つまり、報酬系回路の機能は徐々に低下し、より報酬を感じにくく、快感が得られにくくなる。この状態は「報酬回路不全症候群」と呼ばれる<ref name=ref21><pubmed>19014506</pubmed></ref>。こうなると、あらゆることに対し興味や関心が薄れ、するとますます、依存している物質乱用や行動嗜癖を繰り返し続ける行動様式に陥ってしまう。 | 物質依存症と同様に、行動嗜癖においても、報酬系回路が慢性持続的に活性化され続けると馴化が生じ、鈍化が進行する。つまり、報酬系回路の機能は徐々に低下し、より報酬を感じにくく、快感が得られにくくなる。この状態は「報酬回路不全症候群」と呼ばれる<ref name=ref21><pubmed>19014506</pubmed></ref>。こうなると、あらゆることに対し興味や関心が薄れ、するとますます、依存している物質乱用や行動嗜癖を繰り返し続ける行動様式に陥ってしまう。 | ||
報酬回路不全の仮説は、辺縁系における[[D2受容体]]密度の減少に関連している。物質依存者では、線条体における[[D2]]受容体結合能の低下が報告されている<ref name=ref22><pubmed>22015315</pubmed></ref> <ref name=ref23><pubmed>9126741</pubmed></ref> <ref name=ref24><pubmed>11729018</pubmed></ref> | 報酬回路不全の仮説は、辺縁系における[[D2受容体]]密度の減少に関連している。物質依存者では、線条体における[[D2]]受容体結合能の低下が報告されている<ref name=ref22><pubmed>22015315</pubmed></ref> <ref name=ref23><pubmed>9126741</pubmed></ref> <ref name=ref24><pubmed>11729018</pubmed></ref>。D2受容体密度が減少した状態では、快の感覚を感じにくく不快であり、ドーパミンレベルを正常な状態にするために、物質や嗜癖行動などのドーパミンが多く放出するような強い刺激を欲する。しかし一方で、依存の形成において、嗜癖に伴うドーパミンレベルの急上昇の反復が報酬系を感作し、物質や嗜癖行動などの快の刺激の誘因となる動機に対し、過感受性が生じることを示唆する知見も多い。 | ||
そもそも、D2受容体密度の減少が嗜癖や依存に先行するか後行するかは、まだ結論が出ていない。病的ギャンブリング者、病的過食者、インターネット嗜癖者の線条体におけるD2受容体密度の低下が示唆されている。遺伝子研究では、Taq1A遺伝子多型のA1対立遺伝子が、線条体におけるD2受容体減少に関連することが報告されており、PET(positron emission | そもそも、D2受容体密度の減少が嗜癖や依存に先行するか後行するかは、まだ結論が出ていない。病的ギャンブリング者、病的過食者、インターネット嗜癖者の線条体におけるD2受容体密度の低下が示唆されている。遺伝子研究では、Taq1A遺伝子多型のA1対立遺伝子が、線条体におけるD2受容体減少に関連することが報告されており、PET(positron emission tomography)では、ドーパミン輸送体や受容体などの、機能的ダウンレギュレーションが傍証されうる。嗜癖や依存により生じる脳の状態が、報酬回路不全によるドーパミン低活性状態か、感作によるドーパミン過感受性の状態かについて、今後の研究が期待される。 | ||
== 併存精神障害 == | == 併存精神障害 == | ||
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現在のところ、行動嗜癖に対して認可された治療薬はなく、薬物療法は精神療法や[[行動療法]]と併用されることが多いが、様々な試行がなされている。 | 現在のところ、行動嗜癖に対して認可された治療薬はなく、薬物療法は精神療法や[[行動療法]]と併用されることが多いが、様々な試行がなされている。 | ||
上述したように、報酬系回路における依存形成や衝動統制に、ドーパミンとオピオイド神経系が関与していることに注目した薬物療法が行われることがある。nalmefeneやnaltrexoneといった国内未採用のオピオイド拮抗薬の病的ギャンブリングなどに対する有効性が報告されている<ref name=ref31><pubmed>23503545</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>22426027</pubmed></ref> <ref name=ref33><pubmed>21150845</pubmed></ref> <ref name=ref34><pubmed>18384246</pubmed></ref> <ref name=ref35><pubmed>20884959</pubmed></ref> <ref name=ref36><pubmed>16449486</pubmed></ref>。また、topiramateは、中脳辺縁系のドーパミン機能を調節すると考えられており、行動嗜癖に対する有効性が報告されている<ref name=ref37>'''J Horley, D Bowlby'''<br>Theory, research, and intervention with arsonists<br>''Aggression and Violent Behavior'': 2011, 16(3);241–249</ref>。 | |||
セロトニンレベルの低下が、嗜癖の強化に関わる中脳辺縁系に対する抑制作用の低下を惹起するため、セロトニンレベルの低下を改善させる[[SSRI]]([[Selective serotonin reuptake inhibitors|Selective Serotonin Reuptake Inhibitors]])は、行動嗜癖に対する効果が期待されうる。 | セロトニンレベルの低下が、嗜癖の強化に関わる中脳辺縁系に対する抑制作用の低下を惹起するため、セロトニンレベルの低下を改善させる[[SSRI]]([[Selective serotonin reuptake inhibitors|Selective Serotonin Reuptake Inhibitors]])は、行動嗜癖に対する効果が期待されうる。 |