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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0180808 澁木 克栄]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0180808 澁木 克栄]</font><br> | ||
''新潟大学脳研究所''<br> | ''新潟大学脳研究所''<br> | ||
<font size="+1">中矢 直樹</font><br> | |||
''米国国立衛生研究所・眼研究所''<br> | |||
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年12月2日 原稿完成日:2013年月日<br> | DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年12月2日 原稿完成日:2013年月日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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==合成== | ==合成== | ||
[[ファイル:NOS reaction.png|thumb|left|350px|'''図1. 一酸化窒素合成経路'''<br>Arg: アルギキン、NOHLA: Nω-ヒドロキシ-L-アルギニン、NADPH: | [[ファイル:NOS reaction.png|thumb|left|350px|'''図1. 一酸化窒素合成経路'''<br>Arg: アルギキン、NOHLA: Nω-ヒドロキシ-L-アルギニン、NADPH: ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸。図中でオレンジ色で示されているのは酵素のヘム部位。Wikipediaより。]] | ||
NOは生体内では[[一酸化窒素合成酵素]]により[[アルギニン]]から[[NADPH]]を[[wj:補酵素|補酵素]]として合成される(図1)。アルギニンは[[Nω-ヒドロキシ-L-アルギニン]]をへて、最終的にNOと[[シトルリン]]となる。 | NOは生体内では[[一酸化窒素合成酵素]]により[[アルギニン]]から[[NADPH]]を[[wj:補酵素|補酵素]]として合成される(図1)。アルギニンは[[Nω-ヒドロキシ-L-アルギニン]]をへて、最終的にNOと[[シトルリン]]となる。 | ||
一酸化窒素合成酵素はヘムを含むタンパク質であり、[[神経型一酸化窒素合成酵素|神経型]](nNOS)、[[誘導型一酸化窒素合成酵素|誘導型]](iNOS)及び[[血管内皮型一酸化窒素合成酵素|血管内皮型]] | 一酸化窒素合成酵素はヘムを含むタンパク質であり、[[神経型一酸化窒素合成酵素|神経型]](nNOS)、[[誘導型一酸化窒素合成酵素|誘導型]](iNOS)及び[[血管内皮型一酸化窒素合成酵素|血管内皮型]](eNOS)の3タイプがある(表)<ref name=ref1><pubmed>18588525</pubmed></ref>。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
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===タンパク質のニトロシル化=== | ===タンパク質のニトロシル化=== | ||
[[ファイル:一酸化窒素2.png|thumb|350px|'''図2. '''<br>]] | [[ファイル:一酸化窒素2.png|thumb|350px|'''図2. 図のタイトルを御願い致します。'''<br>図の説明を御願いします。略号も御定義下さい。文献<ref name=ref23127359 />より改変、引用。]] | ||
NOは、タンパク分子内に存在するシステインの-SH残基をニトロシル化し、ニトロシルチオール残基を形成する<ref><pubmed>23127359</pubmed></ref> <ref><pubmed>15688001</pubmed></ref>。 | NOは、タンパク分子内に存在するシステインの-SH残基をニトロシル化し、ニトロシルチオール残基を形成する<ref name=ref23127359><pubmed>23127359</pubmed></ref> <ref><pubmed>15688001</pubmed></ref>。 | ||
Protein-Cys-SH + NO· → Protein- Cys-S-NO | Protein-Cys-SH + NO· → Protein- Cys-S-NO | ||
ニトロシル化されたタンパク質は、その活性が修飾され、これにより、いくつかの神経タンパク室の作用が変化することが知られている。シナプス膜関連タンパクでは[[NMDA型グルタミン酸受容体]], [[AMPA型グルタミン酸受容体]]及び[[シンタキシン]]を始めとして10種類以上がNOによりニトロシル化されることが知られている<ref><pubmed>2371916</pubmed></ref>。近年、タンパク質機能解析及び微量定量法の目覚ましい進歩により、生体内でニトロシル化を受けるタンパクの同定が進んでいるが、実験条件によっては、ニトロシル化の可逆性及び分子間転移性による不安定からくる誤差を十分考慮して、解析する必要がある。 | |||
===タンパク質のニトロ化=== | ===タンパク質のニトロ化=== | ||
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ニトロ化は、後述されるように、NOの活性酸素窒素種としての反応により起こる不可逆的反応である<ref><pubmed>9202025</pubmed></ref> <ref><pubmed>15020765</pubmed></ref>。DNA合成に重要なリボヌクレオチドリダクターゼの活性中心に存在するチロシン残基のニトロ化が知られている<ref><pubmed>7520445</pubmed></ref>。比較的高濃度のNOにより検出され、NOによる細胞死の誘導やストレス経路の活性化に重要であるとされる。 | ニトロ化は、後述されるように、NOの活性酸素窒素種としての反応により起こる不可逆的反応である<ref><pubmed>9202025</pubmed></ref> <ref><pubmed>15020765</pubmed></ref>。DNA合成に重要なリボヌクレオチドリダクターゼの活性中心に存在するチロシン残基のニトロ化が知られている<ref><pubmed>7520445</pubmed></ref>。比較的高濃度のNOにより検出され、NOによる細胞死の誘導やストレス経路の活性化に重要であるとされる。 | ||
=== | ===活性酸素窒素種としての作用=== | ||
NOは、比較的高濃度において活性酸素窒素種 (reactive oxygen and nitrogen spieces, RONS)として細胞に対してストレス応答を引き起こす。これには、DNAの傷害によるがん抑制遺伝子p53の誘導、[[小胞体ストレス]]、[[p38 MAPキナーゼ]]の活性化や[[ミトコンドリア]]の機能障害などが関係して[[神経細胞死]]の誘導につながる<ref><pubmed>20547235</pubmed></ref>。 | |||
== | ==神経系における機能== | ||
神経細胞で合成されたNOは、脳の様々な部位で情報伝達を担うことにより、非常に多彩な機能に関与している。主要な脳機能としては、[[シナプス可塑性]]の調節因子、[[脳血流量]]の調節因子、[[神経細胞死]]への関与などが挙げられる。 | 神経細胞で合成されたNOは、脳の様々な部位で情報伝達を担うことにより、非常に多彩な機能に関与している。主要な脳機能としては、[[シナプス可塑性]]の調節因子、[[脳血流量]]の調節因子、[[神経細胞死]]への関与などが挙げられる。 | ||