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細 (→グリア伝達物質の遊離) |
細 (→髄鞘の可塑性) |
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音楽家やスポーツ選手など通常の人より訓練を積んだヒトとの脳を[[核磁気共鳴画像]]([[MRI]])で解析し、訓練や学習による脳の発達を観察する事が試みられた<ref><pubmed>21403182</pubmed></ref>。これらの研究対象は当初、神経細胞やそのシナプス層、すなわち灰白質に置かれていた。しかし、その途上で、白質、すなわち神経線維の集まりの部分に明らかな発達があることが見出された。場合によっては灰白質よりも明瞭な差があることが発見された<ref><pubmed>16282593</pubmed></ref>。最初の発見は音楽家の脳の[[脳梁]]の拡大であった。脳梁は有髄線維の束である。学習や訓練がその厚みが増すという事実から、神経線維の数が増えている可能性もあるが、それより、一本一本の神経線維の太さが増している可能性が高いと考えられている。神経軸索そのもののサイズが太くなるとは考えにくいため、神経軸索を包む髄鞘の巻数が増えたと考えられた。巻数が増えて、絶縁の程度が高くなると、伝導速度が増す可能性は高い。実際に最近ではMRIで水分子の[[wj:拡散|拡散]]運動を画像化し、その拡散の方向依存性が解析されている。ミエリン化が進むと神経線維に沿った水の拡散の方向性(部分異方性:fractional anisotropy:FA)が高まることが明らかにされ、これを指標として、髄鞘形成のダイナミズムが詳しく調べられている。その結果、[[wj:ジャグリング|ジャグリング]]の練習、試験勉強、楽器の訓練などによってその能力が高められと、脳梁ばかりではなく[[大脳皮質]]や[[海馬]]の白質のミエリン化(編集コメント:白質は既にミエリン化されている部分ですので、白質の拡大などが適当ではないでしょうか)が促進されていることが明らかにされた<ref><pubmed>19820707</pubmed></ref>。これは可塑性が決してシナプスだけの現象ではないことを意味し、これまでに積み上げられてきた可塑性のメカニズムに関する理解を根本から変える必要を迫る事実である。 | 音楽家やスポーツ選手など通常の人より訓練を積んだヒトとの脳を[[核磁気共鳴画像]]([[MRI]])で解析し、訓練や学習による脳の発達を観察する事が試みられた<ref><pubmed>21403182</pubmed></ref>。これらの研究対象は当初、神経細胞やそのシナプス層、すなわち灰白質に置かれていた。しかし、その途上で、白質、すなわち神経線維の集まりの部分に明らかな発達があることが見出された。場合によっては灰白質よりも明瞭な差があることが発見された<ref><pubmed>16282593</pubmed></ref>。最初の発見は音楽家の脳の[[脳梁]]の拡大であった。脳梁は有髄線維の束である。学習や訓練がその厚みが増すという事実から、神経線維の数が増えている可能性もあるが、それより、一本一本の神経線維の太さが増している可能性が高いと考えられている。神経軸索そのもののサイズが太くなるとは考えにくいため、神経軸索を包む髄鞘の巻数が増えたと考えられた。巻数が増えて、絶縁の程度が高くなると、伝導速度が増す可能性は高い。実際に最近ではMRIで水分子の[[wj:拡散|拡散]]運動を画像化し、その拡散の方向依存性が解析されている。ミエリン化が進むと神経線維に沿った水の拡散の方向性(部分異方性:fractional anisotropy:FA)が高まることが明らかにされ、これを指標として、髄鞘形成のダイナミズムが詳しく調べられている。その結果、[[wj:ジャグリング|ジャグリング]]の練習、試験勉強、楽器の訓練などによってその能力が高められと、脳梁ばかりではなく[[大脳皮質]]や[[海馬]]の白質のミエリン化(編集コメント:白質は既にミエリン化されている部分ですので、白質の拡大などが適当ではないでしょうか)が促進されていることが明らかにされた<ref><pubmed>19820707</pubmed></ref>。これは可塑性が決してシナプスだけの現象ではないことを意味し、これまでに積み上げられてきた可塑性のメカニズムに関する理解を根本から変える必要を迫る事実である。 | ||
オリゴデンドロサイトが神経の活動に応じて積極的にそのミエリン髄鞘を発達させるメカニズムが末梢有髄神経で示されている。末梢神経軸索に発生する活動電位が髄鞘を作るシュワン細胞の増殖や分化に影響を及ぼす。すなわち、神経軸索の活動がATPを介してシュワン細胞のP2受容体を活性化して細胞内カルシウム濃度を上昇させ、その結果、シュワン細胞のCa<sup>2+</sup>レベルが上昇する。細胞内で上昇したCa<sup>2+</sup>が軸索における未熟なシュワン細胞を髄鞘形成に導く。この反応はさらに隣接するシュワン細胞に伝達されて、軸索全体にその効果が及ぶ<ref><pubmed>10731149</pubmed></ref>。 | |||
さらに、神経軸索がグルタミン酸を遊離し、それが髄鞘に分布するグルタミン酸受容体([[NMDA型グルタミン酸受容体]]や[[Gタンパク質共役型受容体]])の活性を介して、髄鞘内Ca<sup>2+</sup>濃度の上昇を引き起こすことが明らかにされている。このCa<sup>2+</sup>上昇は髄鞘と神経軸索の結合部に発現する[[Fyn]]キナーゼを活性化し、[[ミエリン塩基性タンパク質]]の産生を高める<ref><pubmed>21817014</pubmed></ref>。これは髄鞘の強化が活動依存性に促進されることを強く支持する。同時に、オリゴデンドロサイトが発現している[[ATP受容体]]や[[アデノシン受容体]]を介した細胞内Ca<sup>2+</sup>の上昇も同じ機構で髄鞘の強化に寄与している可能性を支持する。 | さらに、神経軸索がグルタミン酸を遊離し、それが髄鞘に分布するグルタミン酸受容体([[NMDA型グルタミン酸受容体]]や[[Gタンパク質共役型受容体]])の活性を介して、髄鞘内Ca<sup>2+</sup>濃度の上昇を引き起こすことが明らかにされている。このCa<sup>2+</sup>上昇は髄鞘と神経軸索の結合部に発現する[[Fyn]]キナーゼを活性化し、[[ミエリン塩基性タンパク質]]の産生を高める<ref><pubmed>21817014</pubmed></ref>。これは髄鞘の強化が活動依存性に促進されることを強く支持する。同時に、オリゴデンドロサイトが発現している[[ATP受容体]]や[[アデノシン受容体]]を介した細胞内Ca<sup>2+</sup>の上昇も同じ機構で髄鞘の強化に寄与している可能性を支持する。 |