「歯状回」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
14行目: 14行目:
== 細胞種および解剖学的特徴 ==
== 細胞種および解剖学的特徴 ==
(編集部コメント:図があればと思います。石塚先生の[[海馬]]の項目に図がありますが、再利用を御願いする事も可能です。)
(編集部コメント:図があればと思います。石塚先生の[[海馬]]の項目に図がありますが、再利用を御願いする事も可能です。)
(編集部コメント:小見出しをつけ、その関係で文章を前後させてあります)
(編集部コメント:小見出しをつけ、その関係で文章を前後させてあります)
===細胞構築===
===細胞構築===


 歯状回は3層から成る。中心層は[[顆粒細胞層]] (granule cell layer)であり、歯状回の主要な細胞である[[顆粒細胞]](granule cell)が存在する。げっ歯類の顆粒細胞層はV字またはU字型をしている。V字型かU字型かは、[[中隔]]-側頭軸に沿って異なる([[中隔核]]側がよりV字型)。顆粒細胞の細胞体は直径約10 μmの小さなラグビー球形であり、細胞体層の厚みの方向に4~6個並んでいる。顆粒細胞層の、直上および直下には、きわめて低い細胞密度の[[分子層]](molecular layer)と、細胞が疎らに散見される[[多形細胞層]] (polymorphic cell layer)が、それぞれ位置している。多形細胞層は[[門]](hilus)と呼ばれることもある。歯状回門のニューロンは全て歯状回内に局所投射する[[インターニューロン]]のみである。
 歯状回は3層から成る。中心層は[[顆粒細胞層]] (granule cell layer)であり、歯状回の主要な細胞である[[顆粒細胞]](granule cell)が存在する。げっ歯類の顆粒細胞層はV字またはU字型をしている。V字型かU字型かは、[[中隔]]-側頭軸に沿って異なる([[中隔核]]側がよりV字型)。顆粒細胞の細胞体は直径約10 μmの小さなラグビー球形であり、細胞体層の厚みの方向に4~6個並んでいる。顆粒細胞層の、直上および直下には、きわめて低い細胞密度の[[分子層]](molecular layer)と、細胞が疎らに散見される[[多形細胞層]] (polymorphic cell layer)が、それぞれ位置している。多形細胞層は[[門]](hilus)と呼ばれることもある。


 顆粒細胞の[[樹状突起]]は細胞体層と垂直の方向(分子層の方向)に伸び、そこで数種の細胞からシナプス入力を受けている。樹状突起はラグビー球状の細胞体の尖頂部から通常一方向に伸びるため、顆粒細胞は単極細胞 (monopolar neuron)と呼ばれることもある。[[海馬]][[CA1]]や[[CA3]]の[[錐体細胞]]が[[てんかん]]に脆弱であるのに対し、重度のてんかん患者でも顆粒細胞は残存していることが多い。
 顆粒細胞の[[樹状突起]]は細胞体層と垂直の方向(分子層の方向)に伸び、そこで数種の細胞からシナプス入力を受けている。樹状突起はラグビー球状の細胞体の尖頂部から通常一方向に伸びるため、顆粒細胞は単極細胞 (monopolar neuron)と呼ばれることもある。[[海馬]][[CA1]]や[[CA3]]の[[錐体細胞]]が[[てんかん]]に脆弱であるのに対し、重度のてんかん患者でも顆粒細胞は残存していることが多い。


 
 歯状回でもっとも重要なインターニューロンは[[籠細胞]] (basket cell)である。籠細胞は、顆粒細胞層と歯状回門の境界付近に存在し、顆粒細胞の細胞体に投射している。籠細胞には少なくとも5つの亜種([[錐体籠細胞]](pyramidal basket cell)、[[紡錘籠細胞]](fusiform basket cell)、[[水平籠細胞]](horizontal basket cell)、[[逆紡錘籠細胞]](inverted fusiform basket cell)、[[分子層籠細胞]](molecular layer basket cell))に分類されるとされる<ref name=ref32><pubmed>6619905</pubmed></ref>。
 
 分子層にもインターニューロンは存在する。その中でも、[[軸索軸索間細胞]](axo-axonic cell)は興味深い。[[軸索]]が顆粒細胞の軸索起始部に投射するために、こう呼ばれている<ref name=ref33><pubmed>6616249</pubmed></ref>。
 
 歯状回門にも多種のインターニューロンが存在する。歯状回門の中だけに投射するインターニューロンもあれば、顆粒細胞層や分子層に投射するインターニューロンも存在するが、全て歯状回内への局所投射である。。この中に、[[苔状細胞]](mossy cell)と呼ばれるインターニューロンがある<ref name=ref18><pubmed>730852</pubmed></ref>。これは[[興奮性]]ニューロンであり、同側および対側の歯状回の分子層だけに投射する。これを「興奮性インターニューロン」などと呼ぶ研究者もいるが、両側の海馬に投射するその長い軸索は、いわゆるインターニューロンの古典的定義には反する。実際に、苔状細胞は局所的に投射すると言うよりも、歯状回の中隔-側頭軸方向の遠くに投射する傾向がある。したがって、苔状細胞は、伝統的な定義ではインターニューロンにも主要細胞にも属さない。


===入力===
===入力===
30行目: 35行目:
===出力===
===出力===
 顆粒細胞の軸索はその[[シナプス終末]]の独特な外見から、[[苔状線維]](mossy fiber)と呼ばれる。苔状線維は細胞体の基底部(樹状突起とは反対の方向)から起始し、歯状回門内へと伸長している。苔状線維は苔状細胞(mossy cell)など、いくつかのニューロンに投射している。この苔状細胞は、他の中隔-側頭軸にある同側および対側の歯状回でシナプスを形成している。苔状線維は歯状回門を出ると束になり、CA3野の透明層(stratum lucidum)に入り込む。歯状回顆粒細胞は、CA3野錐体細胞の近位樹状突起に投射している。
 顆粒細胞の軸索はその[[シナプス終末]]の独特な外見から、[[苔状線維]](mossy fiber)と呼ばれる。苔状線維は細胞体の基底部(樹状突起とは反対の方向)から起始し、歯状回門内へと伸長している。苔状線維は苔状細胞(mossy cell)など、いくつかのニューロンに投射している。この苔状細胞は、他の中隔-側頭軸にある同側および対側の歯状回でシナプスを形成している。苔状線維は歯状回門を出ると束になり、CA3野の透明層(stratum lucidum)に入り込む。歯状回顆粒細胞は、CA3野錐体細胞の近位樹状突起に投射している。
 歯状回において、もっとも重要なインターニューロンは籠細胞(basket cell)である。籠細胞は、顆粒細胞層と歯状回門の境界付近に存在し、顆粒細胞の細胞体に投射している。籠細胞には少なくとも5つの亜種(錐体籠細胞(pyramidal basket cell)、紡錘籠細胞(fusiform basket cell)、水平籠細胞(horizontal basket cell)、逆紡錘籠細胞(inverted fusiform basket cell)、分子層籠細胞(molecular layer basket cell))に分類されるとされる<ref name=ref32><pubmed>6619905</pubmed></ref>。分子層にもインターニューロンは存在する。その中でも、軸索軸索間細胞(axo-axonic cell)は興味深い。軸索が顆粒細胞の軸索起始部に投射するために、こう呼ばれている<ref name=ref33><pubmed>6616249</pubmed></ref>。歯状回門にも多種のインターニューロンが存在する。歯状回門の中だけに投射するインターニューロンもあれば、顆粒細胞層や分子層に投射するインターニューロンも存在する。この中に、苔状細胞(mossy cell)と呼ばれるインターニューロンがある<ref name=ref18><pubmed>730852</pubmed></ref>。これは[[興奮性]]ニューロンであり、同側および対側の歯状回の分子層だけに投射する。これを「興奮性インターニューロン」などと呼ぶ研究者もいるが、両側の海馬に投射するその長い軸索は、いわゆるインターニューロンの古典的定義には反する。実際に、苔状細胞は局所的に投射すると言うよりも、歯状回の中隔-側頭軸方向の遠くに投射する傾向がある。したがって、苔状細胞は、伝統的な定義ではインターニューロンにも主要細胞にも属さない。


== パターン分離との関連 ==
== パターン分離との関連 ==

案内メニュー