「恐怖条件づけ」の版間の差分

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 消去には[[前頭前野]]皮質と扁桃体が中心的な役割を担っており、海馬も、その制御に重要な役割を果たすことが明らかとなっている<ref name=ref11 /> <ref name=ref21><pubmed>12422216</pubmed></ref>。
 消去には[[前頭前野]]皮質と扁桃体が中心的な役割を担っており、海馬も、その制御に重要な役割を果たすことが明らかとなっている<ref name=ref11 /> <ref name=ref21><pubmed>12422216</pubmed></ref>。


 [[扁桃体外側核]](Lateral Amygdala; LA)は[[聴覚皮質]](Auditory cortex)、[[聴覚視床]] (Auditory thalamus)などから入力を受け、[[皮質]]や[[視床]]と扁桃体との間のインターフェイス的な役割を果たしていると考えられている。特に重要な点として、外側面核の[[興奮性]]ニューロンが恐怖音条件付けの記憶回路([[記憶痕跡]])に参入していること、条件付け後に神経可塑的変化が誘導されることも明らかにされており、恐怖条件付けの獲得やその記憶の保持に重要な役割を果たすことが実証されている<ref name=ref22><pubmed>17761885</pubmed></ref> <ref name=ref23><pubmed>17446403</pubmed></ref> <ref name=ref24><pubmed>11584069</pubmed></ref>。なかでも[[扁桃体内中心核]]は恐怖条件付けにおける恐怖反応の表出を制御することが明らかにされている。中心核は、外側核からの直接経路と、外側核から[[基底核]](Basal nucleus; BA)を経由する間接経路により制御を受ける。最近の解析から、中心核も、視床からの直接的な入力を受けていることが示唆されており、恐怖条件付けの獲得と固定化に必要であることも明らかになりつつある<ref name=ref25><pubmed>17135400</pubmed></ref> <ref name=ref26><pubmed>22036561</pubmed></ref> <ref name=ref27><pubmed>21068837</pubmed></ref>。中心核もいくつかの領域に分類され、中でも、[[正中中心核]](Centromedian nucleus; CeM)はこれまで中心核の役割と考えられてきた恐怖反応を表出する役割を果たす。一方、[[外側中心核]](Central lateral nucleus; CeL)は、[[GABA]]産生[[介在ニューロン]]を中心に構成され、正中中心核を持続的に抑制しているものの、この抑制の解除により、恐怖条件付けの条件刺激に対する恐怖反応が誘起される<ref name=ref26 /> <ref name=ref28><pubmed>19555645</pubmed></ref>。中心核からの直接的な投射先として、外側[[視床下部]]と中脳[[中心灰白質]]が同定されており、これらの投射を介して[[wj:血圧|血圧]]の増加やすくみ反応などの恐怖反応の表出がそれぞれ引き起こされる<ref name=ref29><pubmed>2854842</pubmed></ref> <ref name=ref30><pubmed>8136063</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>7078723</pubmed></ref>。
 [[扁桃体外側核]](Lateral Amygdala; LA)は[[聴覚皮質]](Auditory cortex)、[[聴覚視床]] (Auditory thalamus)などから入力を受け、[[皮質]]や[[視床]]と扁桃体との間のインターフェイス的な役割を果たしていると考えられている。特に重要な点として、外側核の[[興奮性]]ニューロンが恐怖音条件付けの記憶回路([[記憶痕跡]])に参入していること、条件付け後に神経可塑的変化が誘導されることも明らかにされており、恐怖条件付けの獲得やその記憶の保持に重要な役割を果たすことが実証されている<ref name=ref22><pubmed>17761885</pubmed></ref> <ref name=ref23><pubmed>17446403</pubmed></ref> <ref name=ref24><pubmed>11584069</pubmed></ref>。なかでも[[扁桃体内中心核]]は恐怖条件付けにおける恐怖反応の表出を制御することが明らかにされている。中心核は、外側核からの直接経路と、外側核から[[基底核]](Basal nucleus; BA)を経由する間接経路により制御を受ける。最近の解析から、中心核も、視床からの直接的な入力を受けていることが示唆されており、恐怖条件付けの獲得と固定化に必要であることも明らかになりつつある<ref name=ref25><pubmed>17135400</pubmed></ref> <ref name=ref26><pubmed>22036561</pubmed></ref> <ref name=ref27><pubmed>21068837</pubmed></ref>。中心核もいくつかの領域に分類され、中でも、[[正中中心核]](Centromedian nucleus; CeM)はこれまで中心核の役割と考えられてきた恐怖反応を表出する役割を果たす。一方、[[外側中心核]](Central lateral nucleus; CeL)は、[[GABA]]産生[[介在ニューロン]]を中心に構成され、正中中心核を持続的に抑制しているものの、この抑制の解除により、恐怖条件付けの条件刺激に対する恐怖反応が誘起される<ref name=ref26 /> <ref name=ref28><pubmed>19555645</pubmed></ref>。中心核からの直接的な投射先として、外側[[視床下部]]と中脳[[中心灰白質]]が同定されており、これらの投射を介して[[wj:血圧|血圧]]の増加やすくみ反応などの恐怖反応の表出がそれぞれ引き起こされる<ref name=ref29><pubmed>2854842</pubmed></ref> <ref name=ref30><pubmed>8136063</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>7078723</pubmed></ref>。


 扁桃体基底核(BA)は外側核からの投射を受け、この入力によって、直接的に、また、扁桃体の[[介在核]]ニューロンを介して間接的に中心核を制御する<ref name=ref26 /> <ref name=ref28 />。さらに、基底核は前頭前野皮質からも投射を受けており、この入力によって、恐怖条件付けの消去を制御する<ref name=ref32><pubmed>20208529</pubmed></ref>。重要な点として、基底核には恐怖条件付けによる恐怖反応発現時に興奮する「恐怖ニューロン(fear neuron)」と消去発現時に興奮する「消去ニューロン(extinction neuron)」が存在することが明らかにされ、これらのニューロン群が前頭前野皮質と連携して、恐怖条件付けの獲得や表出を正負に制御していると考えられる<ref name=ref33><pubmed>18615015</pubmed></ref>。
 扁桃体基底核(BA)は外側核からの投射を受け、この入力によって、直接的に、また、扁桃体の[[介在核]]ニューロンを介して間接的に中心核を制御する<ref name=ref26 /> <ref name=ref28 />。さらに、基底核は前頭前野皮質からも投射を受けており、この入力によって、恐怖条件付けの消去を制御する<ref name=ref32><pubmed>20208529</pubmed></ref>。重要な点として、基底核には恐怖条件付けによる恐怖反応発現時に興奮する「恐怖ニューロン(fear neuron)」と消去発現時に興奮する「消去ニューロン(extinction neuron)」が存在することが明らかにされ、これらのニューロン群が前頭前野皮質と連携して、恐怖条件付けの獲得や表出を正負に制御していると考えられる<ref name=ref33><pubmed>18615015</pubmed></ref>。

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