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== フィンクとテイラーのカタトニア症候群 ==
== フィンクとテイラーのカタトニア症候群 ==
  (4)
  (4)
{| class="wikitable"
|+ 表1.カタトニア評価尺度(6)
|-
|
*1から14までのアイテムの有無をスクリーニングの目的で使う
*1から23までのアイテムを各々0-3で評価し、重症度を評価するために使う
|-
|'''1.興奮(Excitement)'''<br>著しい過活動、持続的な運動不穏で明らかに目的を欠く、アカシジアや目的遂行のための興奮ではない。<br>
0=無<br>
1=過剰な動き、間欠的<br>
2=持続的な動き、休む期間のない過活動<br>
3=重度の興奮、激高した運動活動
|-
|'''2.無動/昏迷(Immobility/Stupor)'''<br>著しい活動低下、無動、刺激への反応は最小限<br>
0=無<br>
1=異常に座りつづける、軽い交流はある<br>
2=ほぼ外界と交流はない<br>
3=昏迷、痛み刺激に反応がない
|-
|'''3.無言(Mutism)'''<br>言語的に反応がないか反応は最小限<br>
0=無<br>
1=ほとんどの質問に言語的反応はない;理解不能のささやき<br>
2=5分間に20語以下の発語<br>
3=発語無し
|-
|'''4.一点凝視(Staring)'''<br>固定された視線、周囲をほとんど見ることはない、まばたきの減少<br>
0=無
1=アイコンタクトの減少、注意を変えるまで20秒以下の凝視;まばたきの減少<br>
2=20秒以上の凝視;ときどき注意を変える<br>
3=一点凝視、反応なし
|-
|'''5. 姿勢常同・カタレプシー(Posturing/Catalepsy)'''<br>姿勢保持、日常的な姿勢を含む(例、長時間反応なく座り続ける、または立ち続ける)<br>
0=無<br>
1=1分以内<br>
2=1分を超え、15分以内<br>
3=奇妙な姿勢または日常的な姿勢を、15分を超えて持続
|-
|'''6.しかめ顔(Grimacing)'''<br>奇妙な表情の維持<br>
0=無<br>
1=10秒以内<br>
2=1分以内<br>
3=奇異な表情、または奇妙な表情を1分間を超えて持続
|-
|'''7.反響行為/反響言語 (Echopraxia/Echolalia)'''<br>検者の動きや発語をまねする<br>
0=無<br>
1=ときどき<br>
2=頻回<br>
3=持続的
|-
|'''8.常同症(Stereotypy)'''<br>
反復性、目的を欠く運動(例、指遊び;繰り返し触れる、自身を軽く叩いたりなでたり)、(異常性は行動の性質によるものではなく、その頻度による)<br>
0=無<br>
1=ときどき<br>
2=頻回<br>
3=持続的
|-
|'''9. 衒奇症(Mannerisms)'''<br>奇妙で、目的がある動き(ジャンプまたはつま先歩き、通行人に挨拶する、日常動作を過剰に戯画化する)(異常はその行動自体による)<br>
0=無<br>
1=ときどき<br>
2=頻回<br>
3=持続的
|-
|'''10.語唱(Verbigeration)'''<br>語句や文を繰り返す。<br>
0=無<br>
1=ときどき<br>
2=頻回<br>
3=持続的
|-
|'''11. 筋強剛(Rigidity)'''<br>動かそうとしても筋強剛の姿位を保持(歯車様筋強剛や振戦がある場合は除く)<br>
0=無<br>
1=軽い抵抗<br>
2=中程度の抵抗<br>
3=重症で姿勢を戻らせることが不能
|-
|'''12.拒絶症(Negativism)'''<br>
命令や患者を動かそうとする試みに対して明らかに目的のない抵抗。命令に正反対の行動。<br>
0=無<br>
1=軽い抵抗 かつ/または ときどきの正反対の行動<br>
2=中程度の抵抗 かつ/または 頻回の正反対の行動<br>
3=重度の抵抗 かつ/または 持続的な正反対の行動
|-
|'''13. 蝋屈症(Waxy Flexibility)'''<br>患者の姿勢を戻している時に、患者は初めに抵抗を示し、後に自分で姿勢を戻す。(暖かい蝋燭を曲げる時に似ている)<br>
0=無<br>
3=有
|-
|'''14. 引きこもり(Withdrawal)'''<br>食べる かつ/または 飲む かつ/または 目を合わせることへの拒絶<br>
0=無<br>
1=最小限の経口摂取が1日以内<br>
2=最小限の経口摂取が1日を越える<br>
3=1日以上経口摂取なし
|-
|'''15.衝動性(Impulsivity)'''<br>患者は突如、突然誘因なく不適切な行動をしようとする(例、廊下を走っていく、叫びはじめる、衣服を脱ぐ)。それを、後で説明することはできない。<br>
0=無<br>
1=ときどき<br>
2=頻回<br>
3=持続的
|-
|'''16. 命令自動(Automatic Obedience)'''<br>検者の要求に対して過度に協力する、または一度要求された動きを繰り返す。<br>
0=無<br>
1=ときどき<br>
2=頻回<br>
3=持続的
|-
|'''17.被影響性の亢進, 黙従(Passive obedience[mitgehen])'''<br>挙げないでと命令しているにも関わらず、指に軽く触れただけで腕を挙げる<br>
0=無<br>
3=有
|-
|'''18.抵抗症(Negativism[Gegenhalten]'''<br>
動かそうとする刺激の強さに応じて抵抗する。反応は意志によるというより自動的にみえる。<br>
0=無<br>
3=有
|-
|'''19.両価性(Ambitendency)'''<br>患者は決断不能で躊躇し動きがとれなくなる。<br>
0=無<br>
3=有
|-
|'''20.把握反射(Grasp reflex)'''<br>患者の手を開き検者の2本の指を入れる。患者は手を自動的に握る。<br>
0=無<br>
3=有
|-
|'''21.保続(Perseveration)'''<br>同じ話を繰り返したり、同じ動作を続けたりする。<br>
0=無<br>
3=有
|-
|'''22.攻撃性(Combativeness)'''<br>通常、意味も目的もなくなされる。<br>
0=無<br>
1=ときどきの暴力、外傷の可能性は低い<br>
2=頻回の暴力、外傷の可能性は中等度<br>
3=他者への危険
|-
|'''23.自律神経異常(Automatic Abnormality)'''<br>以下の項目をチエック<br>
*体温
*血圧
*脈拍
*呼吸数
*不適切な発汗<br>
0=無<br>
1=1項目の異常(既存の高血圧は除外)<br>
2=2項目の異常<br>
3=3項目以上の異常
|}
{| class="wikitable"
|+ 表2.カタトニアの診察(6)
|-
|
*ここで書かれている方法はカタトニア評価尺度を完成させるために使われる。
*評価は、診察中に観察された行動の基づき行われる。ただし、“自閉”と“自律神経異常”の項目は観察された行動かカルテ記載に基づき行われる。
*明確にみられた場合のみ評価し、もしはっきりしない場合は“0”と評価する。
|-
|手順1. 会話しようとしている患者を観察する。<br>
診察項目. 活動レベル、異常運動、異常発語
|-
|手順2. 検者は大げさに頭をかく。<br>
診察項目. 反響行為
|-
|手順3. 歯車状抵抗を腕で診察する。患者に「腕を緩ませて」と指示し、腕を別の位置へ変える。腕を軽く強くと力を変えながら動かす。<br>
診察項目. 筋強剛、拒絶症、蝋屈症
|-
|手順4. 患者に腕を伸ばすように頼む。指1本を手の下に置き、「腕を挙げさせないで」と言ってゆっくり指を挙げる。<br>
診察項目. 黙従
|-
|手順5.「私の手を握らないで」と言いながら手を差し出す。<br>
診察項目. 両価性
|-
|手順6. ポケットに手を伸ばし「舌を突き出してください。それにピンを刺します」と言う。<br>
診察項目. 命令自動
|-
|手順7. 把握反射を診察する。<br>
診察項目. 把握反射
|-
|手順8. 経口摂取、ヴァイタルサイン、異常な出来事を患者のカルテから調べる。
|-
|手順9. 日毎に短時間患者を直接的でなく観察する。
|}


 2003年、M.FinkとM.A.Taylorは著書“Catatonia”にて、臨床的視点から統合失調症と結び付けられやすかったカタトニアを再定義し、その症状や特徴を記載した。以下に彼らが再定義したカタトニアの特徴とその説明を記す。
 2003年、M.FinkとM.A.Taylorは著書“Catatonia”にて、臨床的視点から統合失調症と結び付けられやすかったカタトニアを再定義し、その症状や特徴を記載した。以下に彼らが再定義したカタトニアの特徴とその説明を記す。
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
<references />
1. Kahlbaum KL: Die Katatnonie oder das Spannugsirresein. Berline: Verlag August Hirshwald, 1987 (渡辺哲夫訳 緊張病 星和書店 1979)
2. Kraepelin E. Psychiatrie ein lehrbuch Fuer Studierende und Aerzte, Achten Auflage: Verlag von Johan Ambrosius Barth, Leipzig, 1913 (西丸四方, 西丸甫夫訳 精神分裂病, 第8版I みすず書房 1985, 西丸四方, 西丸甫夫訳 躁うつ病とてんかん, 第8版II みすず書房 1986)
3. Caroff SN, Mann SC, Francis A, Fricchione GL, ed. Catatonia: From Psychopathology to Neurobiology. Washington, DC: American Psychiatric Association; 2004. (Braeunig P, Krueger S. chapter 1 History p1-14)
4. Fink M, Taylor MA. Catatonia: A Clinician’s Guide to Diagnosis and Treatment. Cambridge, UK: Cambridge University Press, 2003 (鈴木一正訳 カタトニア―臨床医のための診断・治療ガイド 星和書店 2007)
5. Loutsch E, Kaiser R, Kalikow K. Electroconvulsive therapy and the catatonic dilenmma. J Am Med Womens Assoc. 1984. 39:133-4.
6. Bush G, Fink M, Petrides G, Dowling F, Francis A. Catatonia: I: Rating scale and standardized examination. Acta Psychiatr. Scand. 93:137-143.
7. Karl Leonhard, Helmut Beckmann,C.H. Cahn: Classification of Endogenous Psychoses and their Differentiated Etiology. New York City, US: Springer.,1999 (福田哲雄, 林拓二,岩波明訳 内因性精神病の分類 医学書院 2002)
付録1
1、 カタトニア評価尺度(6)
・ 1から14までのアイテムの有無をスクリーニングの目的で使う
・ 1から23までのアイテムを各々0-3で評価し、重症度を評価するために使う
1.興奮(Excitement)
著しい過活動、持続的な運動不穏で明らかに目的を欠く、アカシジアや目的遂行のための興奮ではない。
0=無
1=過剰な動き、間欠的
2=持続的な動き、休む期間のない過活動
3=重度の興奮、激高した運動活動
2.無動/昏迷(Immobility/Stupor)
著しい活動低下、無動、刺激への反応は最小限
0=無
1=異常に座りつづける、軽い交流はある
2=ほぼ外界と交流はない
3=昏迷、痛み刺激に反応がない
3.無言(Mutism)
言語的に反応がないか反応は最小限
0=無
1=ほとんどの質問に言語的反応はない;理解不能のささやき
2=5分間に20語以下の発語
3=発語無し
4.一点凝視(Staring)
固定された[[視線]]、周囲をほとんど見ることはない、まばたきの減少
0=無
1=アイコンタクトの減少、注意を変えるまで20秒以下の凝視;まばたきの減少
2=20秒以上の凝視;ときどき注意を変える
3=一点凝視、反応なし
5. 姿勢常同・カタレプシー(Posturing/Catalepsy)
姿勢保持、日常的な姿勢を含む(例、長時間反応なく座り続ける、または立ち続ける)
0=無
1=1分以内
2=1分を超え、15分以内
3=奇妙な姿勢または日常的な姿勢を、15分を超えて持続
6.しかめ顔(Grimacing)
奇妙な表情の維持
0=無
1=10秒以内
2=1分以内
3=奇異な表情、または奇妙な表情を1分間を超えて持続
7.反響行為/反響言語 (Echopraxia/Echolalia)
検者の動きや発語を[[まね]]する
0=無
1=ときどき
2=頻回
3=持続的
8.常同症(Stereotypy)
反復性、目的を欠く運動(例、指遊び;繰り返し触れる、自身を軽く叩いたりなでたり)、(異常性は行動の性質によるものではなく、その頻度による)
0=無
1=ときどき
2=頻回
3=持続的
9. 衒奇症(Mannerisms)
奇妙で、目的がある動き(ジャンプまたはつま先歩き、通行人に挨拶する、日常動作を過剰に戯画化する)(異常はその行動自体による)
0=無
1=ときどき
2=頻回
3=持続的
10.語唱(Verbigeration)
語句や文を繰り返す。
0=無
1=ときどき
2=頻回
3=持続的
11. 筋強剛(Rigidity)
動かそうとしても筋強剛の姿位を保持(歯車様筋強剛や振戦がある場合は除く)
0=無
1=軽い抵抗
2=中程度の抵抗
3=重症で姿勢を戻らせることが不能
12.拒絶症(Negativism)
命令や患者を動かそうとする試みに対して明らかに目的のない抵抗。命令に正反対の行動。
0=無
1=軽い抵抗 かつ/または ときどきの正反対の行動
2=中程度の抵抗 かつ/または 頻回の正反対の行動
3=重度の抵抗 かつ/または 持続的な正反対の行動
13. 蝋屈症(Waxy Flexibility)
患者の姿勢を戻している時に、患者は初めに抵抗を示し、後に自分で姿勢を戻す。(暖かい蝋燭を曲げる時に似ている)
0=無
3=有
14. 引きこもり(Withdrawal)
食べる かつ/または 飲む かつ/または 目を合わせることへの拒絶
0=無
1=最小限の経口摂取が1日以内
2=最小限の経口摂取が1日を越える
3=1日以上経口摂取なし
15.衝動性(Impulsivity)
患者は突如、突然誘因なく不適切な行動をしようとする(例、廊下を走っていく、叫びはじめる、衣服を脱ぐ)。それを、後で説明することはできない。
0=無
1=ときどき
2=頻回
3=持続的
16. 命令自動(Automatic Obedience)
検者の要求に対して過度に協力する、または一度要求された動きを繰り返す。
0=無
1=ときどき
2=頻回
3=持続的
17.被影響性の亢進, 黙従(Passive obedience[ mitgehen])
挙げないでと命令しているにも関わらず、指に軽く触れただけで腕を挙げる
0=無
3=有
18.抵抗症(Negativism[Gegenhalten]
動かそうとする刺激の強さに応じて抵抗する。反応は意志によるというより自動的にみえる。
0=無
3=有
19.両価性(Ambitendency)
患者は決断不能で躊躇し動きがとれなくなる。
0=無
3=有
20.把握反射(Grasp reflex)
患者の手を開き検者の2本の指を入れる。患者は手を自動的に握る。
0=無
3=有
21.保続(Perseveration)
同じ話を繰り返したり、同じ動作を続けたりする。
0=無
3=有
22.攻撃性(Combativeness)
通常、意味も目的もなくなされる。
0=無
1=ときどきの暴力、外傷の可能性は低い
2=頻回の暴力、外傷の可能性は中等度
3=他者への危険
23.自律神経異常(Automatic Abnormality)
以下の項目をチエック
体温
血圧
脈拍
呼吸数
不適切な発汗
0=無
1=1項目の異常(既存の高血圧は除外)
2=2項目の異常
3=3項目以上の異常
付録2
II. カタトニアの診察(6)
・ ここで書かれている方法はカタトニア評価尺度を完成させるために使われる。
・ 評価は、診察中に観察された行動の基づき行われる。ただし、“自閉”と“自律神経異常”の項目は観察された行動かカルテ記載に基づき行われる。
・ 明確にみられた場合のみ評価し、もしはっきりしない場合は“0”と評価する。
手順1. 会話しようとしている患者を観察する。
診察項目. 活動レベル、異常運動、異常発語
手順2. 検者は大げさに頭をかく。
診察項目. 反響行為
手順3. 歯車状抵抗を腕で診察する。患者に「腕を緩ませて」と指示し、腕を別の位置へ変える。腕を軽く強くと力を変えながら動かす。
診察項目. 筋強剛、拒絶症、蝋屈症
手順4. 患者に腕を伸ばすように頼む。指1本を手の下に置き、「腕を挙げさせないで」と言ってゆっくり指を挙げる。
診察項目. 黙従
手順5.「私の手を握らないで」と言いながら手を差し出す。
診察項目. 両価性
手順6. ポケットに手を伸ばし「舌を突き出してください。それにピンを刺します」と言う。診察項目. 命令自動
手順7. 把握反射を診察する。
診察項目. 把握反射
手順8. 経口摂取、ヴァイタルサイン、異常な出来事を患者のカルテから調べる。
手順9. 日毎に短時間患者を直接的でなく観察する。

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