「シナプス小胞」の版間の差分

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''同志社大学''<br>
''同志社大学''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2014年4月22日 原稿完成日:2014年月日<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2014年4月22日 原稿完成日:2014年月日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/Bito 尾藤 晴彦](東京大学 大学院医学系研究科 神経生化学分野)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)</div>
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英:synaptic vesicle 独:synaptisches Bläschen 仏:vésicule synaptique
英:synaptic vesicle 独:synaptisches Bläschen 仏:vésicule synaptique
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 シナプス小胞はシナプス前部の形質膜形質膜近傍からクラスター状に多数存在するのに対して、LDCVはシナプス部位から離れた部位に散在している。シナプス小胞には速い神経伝達を担うグルタミン酸、GABA、[[グリシン]]、アセチルコリンが含まれているのに対して、LDCVには[[ドーパミン]]などの[[モノアミン]]類や[[神経ペプチド]]、多種多様な[[神経栄養因子]]を神経伝達物質として含まれている。また、[[交感神経]]のシナプスにおいては、[[ノルエピネフリン]]や[[セロトニン]]を含む60〜80 nmの[[有芯小胞]]が見られ、これをLDCVと区別して[[small dense core vesicle]](SDCV)と呼ぶ場合もある。シナプス小胞とLDCVは中に含まれる神経伝達物質の違いに加え、様々な性質が異なる。シナプス小胞から放出される神経伝達物質神経伝達物質は、主にシナプス後部側の[[イオンチャネル]]型受容体に作用するため、シナプス後部側に電気的なシナプス応答を引き起こす。一方、LDCVに含まれる伝達物質はシナプス後部側の[[Gタンパク共役型受容体]]や[[神経栄養因子受容体]]に作用し、[[セカンドメッセンジャー]]を介したシナプス伝達の修飾を行う。  
 シナプス小胞はシナプス前部の形質膜形質膜近傍からクラスター状に多数存在するのに対して、LDCVはシナプス部位から離れた部位に散在している。シナプス小胞には速い神経伝達を担うグルタミン酸、GABA、[[グリシン]]、アセチルコリンが含まれているのに対して、LDCVには[[ドーパミン]]などの[[モノアミン]]類や[[神経ペプチド]]、多種多様な[[神経栄養因子]]を神経伝達物質として含まれている。また、[[交感神経]]のシナプスにおいては、[[ノルエピネフリン]]や[[セロトニン]]を含む60〜80 nmの[[有芯小胞]]が見られ、これをLDCVと区別して[[small dense core vesicle]](SDCV)と呼ぶ場合もある。シナプス小胞とLDCVは中に含まれる神経伝達物質の違いに加え、様々な性質が異なる。シナプス小胞から放出される神経伝達物質神経伝達物質は、主にシナプス後部側の[[イオンチャネル]]型受容体に作用するため、シナプス後部側に電気的なシナプス応答を引き起こす。一方、LDCVに含まれる伝達物質はシナプス後部側の[[Gタンパク共役型受容体]]や[[神経栄養因子受容体]]に作用し、[[セカンドメッセンジャー]]を介したシナプス伝達の修飾を行う。  


 中枢神経系でのLDCVからの伝達物質放出機構は明らかではないが、[[クロム親和性細胞]]を用いた研究から、シナプス小胞同様、SNARE複合体による膜融合で伝達物質放出を行っていると考えられている。しかし、シナプス小胞とLDCVでは[[カルシウム]]に対する応答性に違いがあることが知られている。伝達物質放出のためにシナプス小胞がシナプス前部局所での高濃度のCa<sup>2+</sup>濃度上昇を必要とするのに対し、LDCVは持続的な低濃度のCa<sup>2+</sup>濃度上昇を必要とする<ref name=ref48><pubmed>15572159</pubmed></ref>。SNARE複合体に含まれるSynaptobrevinやCa<sup>2+</sup>センサーであるSynaptotagminなどにはアイソフォームがあり、シナプス小胞とLDCVに存在するこれらのアイソフォームが異なる可能性が示唆されている<ref name=ref49><pubmed>21551071</pubmed></ref> <ref name=ref50 />。
 中枢神経系でのLDCVからの伝達物質放出機構は明らかではないが、[[クロム親和性細胞]]を用いた研究から、シナプス小胞同様、SNARE複合体による膜融合で伝達物質放出を行っていると考えられている。しかし、シナプス小胞とLDCVでは[[カルシウム]]に対する応答性に違いがあることが知られている。伝達物質放出のためにシナプス小胞がシナプス前部局所での高濃度のCa<sup>2+</sup>濃度上昇を必要とするのに対し、LDCVは持続的な低濃度のCa<sup>2+</sup>濃度上昇を必要とする<ref name=ref48><pubmed>15572159</pubmed></ref>。SNARE複合体に含まれるシナプトブレビンやCa<sup>2+</sup>センサーであるシナプトタグミンなどにはアイソフォームがあり、シナプス小胞とLDCVに存在するこれらのアイソフォームが異なる可能性が示唆されている <ref name=ref50 /><ref name=ref49><pubmed>21551071</pubmed></ref>。


 またCa<sup>2+</sup>感受性タンパク質であるCAPSはLDCVにのみ存在する。シナプス小胞とLDCVはこれらのタンパク質の違いによってCa<sup>2+</sup>イオンの感受性やエキソサイトーシス・エンドサイトーシスの速度に相違が生まれるのかもしれないが、今後の研究による更なる解明が期待される。
 またCa<sup>2+</sup>感受性タンパク質であるCAPSはLDCVにのみ存在する。シナプス小胞とLDCVはこれらのタンパク質の違いによってCa<sup>2+</sup>イオンの感受性やエキソサイトーシス・エンドサイトーシスの速度に相違が生まれるのかもしれないが、今後の研究による更なる解明が期待される。
   
   
 このようなシナプス活性帯からの距離的な差異や、活性化させる受容体の違い、またシナプス前膜と膜融合を起こすのに必要なカルシウムの応答性の相違などによって、LDCV内の伝達物質はシナプス小胞内の神経伝達物質よりも遅い速度でシナプス後部側に作用する。更に、シナプス小胞は伝達物質の放出後、エンドサイトーシスによって再取り込みされ、シナプス前部局所で伝達物質の再充填が行われるのに対し、LDCVは一度きりの放出で、新たなLDCVは[[トランスゴルジネットワーク]]から生成される、というように生成過程においても違いがある。シナプス前部にシナプス小胞とLDCVの両方が存在するシナプスが脳の各部位で見つかっている。そのようなシナプスではひとつの[[シナプス前終末]]に神経伝達物質を2種類以上有することになるが、この伝達物質の組み合わせは脳の部位によって異なり、 これがそれぞれのシナプスにおけるシナプス伝達の多様性に寄与していると考えられる<ref name=ref51><pubmed>   16847638</pubmed></ref>。
 このようなシナプス活性帯からの距離的な差異や、活性化させる受容体の違い、またシナプス前膜と膜融合を起こすのに必要なカルシウムの応答性の相違などによって、LDCV内の伝達物質はシナプス小胞内の神経伝達物質よりも遅い速度でシナプス後部側に作用する。更に、シナプス小胞は伝達物質の放出後、エンドサイトーシスによって再取り込みされ、シナプス前部局所で伝達物質の再充填が行われるのに対し、LDCVは一度きりの放出で、新たなLDCVは[[トランスゴルジネットワーク]]から生成される、というように生成過程においても違いがある。シナプス前部にシナプス小胞とLDCVの両方が存在するシナプスが脳の各部位で見つかっている。そのようなシナプスではひとつの[[シナプス前終末]]に神経伝達物質を2種類以上有することになるが、この伝達物質の組み合わせは脳の部位によって異なり、 これがそれぞれのシナプスにおけるシナプス伝達の多様性に寄与していると考えられる<ref name=ref51><pubmed>16847638</pubmed></ref>。


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