「CA1野」の版間の差分

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301 バイト追加 、 2014年10月26日 (日)
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== 解剖学的特徴 ==
== 解剖学的特徴 ==
===層構造===
===層構造===
 [[上昇層]] (''stratum oriens'')、[[錐体細胞層]] (''stratum pyramidale'')、放線状層 (''stratum radiatum'')、[[網状分子層]] (''stratum lacunosum-moleculare'')の4領域からなる。
[[image:海馬4.png|thumb|300px|'''図1.ラットCA1, CA3錐体細胞の樹状突起分布'''<br>文献<ref name=ref8576427 ><pubmed>8576427</pubmed></ref>より石塚により改変]]
 [[脳室]]側から[[上昇層]] (''stratum oriens'')、[[錐体細胞層]] (''stratum pyramidale'')、放線状層 (''stratum radiatum'')、[[網状分子層]] (''stratum lacunosum-moleculare'')の4領域からなる。


===細胞構成===
===細胞構成===
==== 錐体細胞 ====
 [[海馬]]の主要な細胞は[[錐体細胞]] (pyramidal cell)である。
 [[海馬]]の主要な細胞は[[錐体細胞]] (pyramidal cell)である。


==== 錐体細胞 ====
 海馬錐体細胞の[[細胞体]]は錐体細胞層の厚みの方向に約3~6個、同じ向きに並んでいる。錐体細胞は細胞体層を挟んで両方向に[[樹状突起]]を伸ばしている。[[尖端樹状突起]] (apical dendrite)は細胞体の尖頂側(錐体細胞の形は円錐形である)から起始し、海馬の中心方向([[歯状回]]側)へと伸びている。CA1野の錐体細胞は、存在する層や[[カルビンジン]]に対する[[免疫染色法|免疫標識]]によって3つのサブタイプに分類される<ref name=ref3><pubmed>6751467</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>8757246</pubmed></ref> <ref name=ref5><pubmed>9875359</pubmed></ref> <ref name=ref6><pubmed>17185334</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed>1702115</pubmed></ref>。
 海馬錐体細胞の[[細胞体]]は錐体細胞層の厚みの方向に約3~6個、同じ向きに並んでいる。錐体細胞は細胞体層を挟んで両方向に[[樹状突起]]を伸ばしている。[[尖端樹状突起]] (apical dendrite)は細胞体の尖頂側(錐体細胞の形は円錐形である)から起始し、海馬の中心方向([[歯状回]]側)へと伸びている。CA1野の錐体細胞は、存在する層や[[カルビンジン]]に対する[[免疫染色法|免疫標識]]によって3つのサブタイプに分類される<ref name=ref3><pubmed>6751467</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>8757246</pubmed></ref> <ref name=ref5><pubmed>9875359</pubmed></ref> <ref name=ref6><pubmed>17185334</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed>1702115</pubmed></ref>。


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===入出力===
===入出力===
==== 入力 ====


 CA1野への興奮性入力の主な入力元は、同側CA3野錐体細胞からのシャッファー側枝(Schaffer collateral)、および嗅内皮質第3層の星状細胞からの側頭-アンモン角経路(temporoammonic pathway)である。側頭-アンモン角経路は、海馬の単シナプス性回路(嗅内皮質第3層→CA1野→嗅内皮質第5層)の起始点と考えることが多い。本稿ではもっとも解明の進んでいる齧歯目(ラットおよびマウス)のCA1野について記載する。
 CA1野への興奮性入力の主な入力元は、同側CA3野錐体細胞からのシャッファー側枝(Schaffer collateral)、および嗅内皮質第3層の星状細胞からの側頭-アンモン角経路(temporoammonic pathway)である。側頭-アンモン角経路は、海馬の単シナプス性回路(嗅内皮質第3層→CA1野→嗅内皮質第5層)の起始点と考えることが多い。本稿ではもっとも解明の進んでいる齧歯目(ラットおよびマウス)のCA1野について記載する。


==== 出力 ====
 CA1錐体細胞には2種の海馬体内の投射が存在する。一つはすぐ脇の海馬支脚への投射であり、これは整然とした空間的配置を持っている。もう一つは、[[嗅内皮質]]の深層への投射である。CA3野とは異なり、CA1錐体細胞はCA1野内で目立った軸索側枝([[連合線維]])を形成していない。CA1野の軸索は[[白板]](alveus)や上昇層の中を[[海馬支脚]]に向かって走行するが、時折、その側枝が上昇層や錐体細胞層に進入している。


 
===== 海馬支脚への投射 =====
 
 
 
 CA3野とは異なり、CA1錐体細胞はCA1野内で目立った軸索側枝([[連合線維]])を形成していない。CA1野の軸索は[[白板]](alveus)や上昇層の中を[[海馬支脚]]に向かって走行するが、時折、その側枝が上昇層や錐体細胞層に進入している。
 
 また、CA1錐体細胞には2種の海馬体内の投射が存在する。一つはすぐ脇の海馬支脚への投射であり、これは整然とした空間的配置を持っている。もう一つは、[[嗅内皮質]]の深層への投射である。
 
 CA1錐体細胞の軸索は上昇層もしくは白板を伸長し、海馬支脚の方向に鋭く折れ曲がっている。海馬支脚に到達した軸索は、錐体細胞層方向に再び入り込み、錐体細胞層および分子層中で網目状に細かく枝分かれする。勾配(gradient)則に従った、CA3野からCA1野への投射とは異なり、CA1野からの海馬支脚への投射はカラム状になっている。[[CA1c野]](CA1野の中でCA3野に近い側)からの投射は遠位海馬支脚(海馬支脚をCA1野からの距離で3分割にした部分のうちCA1野から遠い部分)に投射しており、[[CA1a野]]からの投射は境界を横切ってすぐの近位海馬支脚(海馬支脚をCA1野からの距離で3分割にした部分のうちCA1野から近い部分)に投射している。[[CA1b野]]は中位海馬支脚に投射している。さらに、[[wj:西洋ワサビ|西洋ワサビ]][[wj:ペルオキシダーゼ|ペルオキシダーゼ]]をCA1錐体細胞1個1個に注入し、個々の軸索を可視化した実験によって、CA1軸索が海馬支脚の錐体細胞層の約3分の1の幅ごとに分かれて投射しているこが示されている。この解剖学的特徴からCA1野から海馬支脚への投射は、その構造形態によって、3つに分けられることになる。
 CA1錐体細胞の軸索は上昇層もしくは白板を伸長し、海馬支脚の方向に鋭く折れ曲がっている。海馬支脚に到達した軸索は、錐体細胞層方向に再び入り込み、錐体細胞層および分子層中で網目状に細かく枝分かれする。勾配(gradient)則に従った、CA3野からCA1野への投射とは異なり、CA1野からの海馬支脚への投射はカラム状になっている。[[CA1c野]](CA1野の中でCA3野に近い側)からの投射は遠位海馬支脚(海馬支脚をCA1野からの距離で3分割にした部分のうちCA1野から遠い部分)に投射しており、[[CA1a野]]からの投射は境界を横切ってすぐの近位海馬支脚(海馬支脚をCA1野からの距離で3分割にした部分のうちCA1野から近い部分)に投射している。[[CA1b野]]は中位海馬支脚に投射している。さらに、[[wj:西洋ワサビ|西洋ワサビ]][[wj:ペルオキシダーゼ|ペルオキシダーゼ]]をCA1錐体細胞1個1個に注入し、個々の軸索を可視化した実験によって、CA1軸索が海馬支脚の錐体細胞層の約3分の1の幅ごとに分かれて投射しているこが示されている。この解剖学的特徴からCA1野から海馬支脚への投射は、その構造形態によって、3つに分けられることになる。


===== 嗅内皮質の深層への投射 =====
 CA1野は嗅内皮質に情報を戻す最初の海馬の部位という意味で、歯状回や他の海馬亜領域(CA3野、CA2野)とは決定的に性格を異にしている。CA1野から嗅内皮質への投射は、海馬のすべての長軸および短軸から広く起始し、主に内側嗅内皮質へ投射しているが、一部は外側嗅内皮質へも投射している。これらの投射の多くは嗅内皮質第5層を標的としている。
 CA1野は嗅内皮質に情報を戻す最初の海馬の部位という意味で、歯状回や他の海馬亜領域(CA3野、CA2野)とは決定的に性格を異にしている。CA1野から嗅内皮質への投射は、海馬のすべての長軸および短軸から広く起始し、主に内側嗅内皮質へ投射しているが、一部は外側嗅内皮質へも投射している。これらの投射の多くは嗅内皮質第5層を標的としている。


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