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細 (→脳・神経系のチャネル病) |
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脳・神経系では、神経細胞がネットワークを張り巡らせ、その電気的活動を担っている。神経細胞の電気的活動は、電位依存性ナトリウムチャネル(NaV)、電位依存性カリウムチャネル(KV)、電位依存性カルシウムチャネル(CaV)などによって担われている。したがって、これらのイオンチャネルに異常が生じると、てんかんに代表される脳神経系のチャネル病につながる。 | 脳・神経系では、神経細胞がネットワークを張り巡らせ、その電気的活動を担っている。神経細胞の電気的活動は、電位依存性ナトリウムチャネル(NaV)、電位依存性カリウムチャネル(KV)、電位依存性カルシウムチャネル(CaV)などによって担われている。したがって、これらのイオンチャネルに異常が生じると、てんかんに代表される脳神経系のチャネル病につながる。 | ||
=== 電位依存性ナトリウムチャネルの異常 === | |||
電位依存性ナトリウムチャネルが原因となる中枢神経系の異常としては、熱性けいれんプラス(GEFS+; generalized epilepsy with febrile seizures plus)とよばれる家族性のてんかんが知られているが、これは電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子のうちのNaV1.1(SCNA1), NaV1.2(SCNA2)、あるいはその修飾サブユニットであるNaβ1(SCNB1)に異常が生じることで引き起こされる<ref><pubmed>9697698</pubmed></ref><ref><pubmed>10742094</pubmed></ref>。電位依存性ナトリウムチャネルにおいては、その不活性化と呼ばれる性質が神経細胞の興奮性の制御に重要である。この疾患においては、アミノ酸変異によって不活性化の性質が不完全になっており、ナトリウムチャネルが開きやすい状態にあることが神経細胞の過興奮につながり、てんかん発作を引き起こすと考えられる。またより重度な乳児重症ミオクロニーてんかんにおいても、NaV1.1がその原因遺伝子であることが判明している<ref><pubmed>11359211</pubmed></ref>。 | 電位依存性ナトリウムチャネルが原因となる中枢神経系の異常としては、熱性けいれんプラス(GEFS+; generalized epilepsy with febrile seizures plus)とよばれる家族性のてんかんが知られているが、これは電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子のうちのNaV1.1(SCNA1), NaV1.2(SCNA2)、あるいはその修飾サブユニットであるNaβ1(SCNB1)に異常が生じることで引き起こされる<ref><pubmed>9697698</pubmed></ref><ref><pubmed>10742094</pubmed></ref>。電位依存性ナトリウムチャネルにおいては、その不活性化と呼ばれる性質が神経細胞の興奮性の制御に重要である。この疾患においては、アミノ酸変異によって不活性化の性質が不完全になっており、ナトリウムチャネルが開きやすい状態にあることが神経細胞の過興奮につながり、てんかん発作を引き起こすと考えられる。またより重度な乳児重症ミオクロニーてんかんにおいても、NaV1.1がその原因遺伝子であることが判明している<ref><pubmed>11359211</pubmed></ref>。 | ||
=== 電位依存性カリウムチャネルの異常 === | |||
電位依存性カリウムチャネルは神経細胞の電気的活動を鎮める方向に働くので、これらのチャネルの電流が減ると、やはり過興奮となり、てんかんなどの疾患の原因となる。軸索起始部(axon initial segment)に存在するKCNQ2とKCNQ3は、ヘテロ四量体としてMチャネルと呼ばれるイオンチャネルを構成する。比較的活性化の閾値が低く、静止膜電位近くで開くことで神経細胞の膜興奮性を制御していると考えられるが、どちらも良性家族性新生児痙攣と呼ばれる疾患の原因遺伝子である<ref><pubmed>9430594</pubmed></ref><ref><pubmed>9872318</pubmed></ref><ref><pubmed>9836639</pubmed></ref>。 | 電位依存性カリウムチャネルは神経細胞の電気的活動を鎮める方向に働くので、これらのチャネルの電流が減ると、やはり過興奮となり、てんかんなどの疾患の原因となる。軸索起始部(axon initial segment)に存在するKCNQ2とKCNQ3は、ヘテロ四量体としてMチャネルと呼ばれるイオンチャネルを構成する。比較的活性化の閾値が低く、静止膜電位近くで開くことで神経細胞の膜興奮性を制御していると考えられるが、どちらも良性家族性新生児痙攣と呼ばれる疾患の原因遺伝子である<ref><pubmed>9430594</pubmed></ref><ref><pubmed>9872318</pubmed></ref><ref><pubmed>9836639</pubmed></ref>。 | ||
=== Gタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネルの異常 === | |||
weaverマウスと呼ばれるマウスは小脳形成に異常があり、重篤な小脳失調症状を示す。このマウスではGタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネルGIRK2のポア領域の点変異によることがあきらかとなっている。これは発生過程での静止膜電位の異常が神経の形態形成不全を引き起こした結果であるが、これもカリウムチャネルのチャネル病の一種である。 | weaverマウスと呼ばれるマウスは小脳形成に異常があり、重篤な小脳失調症状を示す。このマウスではGタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネルGIRK2のポア領域の点変異によることがあきらかとなっている。これは発生過程での静止膜電位の異常が神経の形態形成不全を引き起こした結果であるが、これもカリウムチャネルのチャネル病の一種である。 | ||
=== 電位依存性カルシウムチャネルの異常 === | |||
電位依存性カルシウムチャネルは、それぞれのサブタイプが、細胞体、神経終末、樹状突起などに局在して機能を果たしている。この中で、P/Q型カルシウムチャネルとしても知られるCaV2.1(CACNA1A)は、シナプス前終末での神経伝達物質放出に関わるイオンチャネルであるが、家族性片頭痛、反復発作性失調症2型(EA2)、脊髄小脳失調症6型(SCA6)といった、小脳に異常を呈するさまざまな神経疾患に関わっていることも知られている。 | 電位依存性カルシウムチャネルは、それぞれのサブタイプが、細胞体、神経終末、樹状突起などに局在して機能を果たしている。この中で、P/Q型カルシウムチャネルとしても知られるCaV2.1(CACNA1A)は、シナプス前終末での神経伝達物質放出に関わるイオンチャネルであるが、家族性片頭痛、反復発作性失調症2型(EA2)、脊髄小脳失調症6型(SCA6)といった、小脳に異常を呈するさまざまな神経疾患に関わっていることも知られている。 | ||