「脳神経倫理学」の版間の差分

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 脳神経科学技術を用いることで、本来の人間とはいかなるものかという概念が変容することに関する問題。哲学的議論の中では、拡張された心の理論(extended mind theory)などによって議論が展開されており、例えば、脳神経科学技術を用いた外部機器が、記憶などの人間の精神活動に関わる高次脳機能の補助的役割を担うことは、当人の脳を延長した一部として捉えることが出来るのではないか、ということが問題となる<ref name=ref16>'''樋口範雄'''編<br>ケース・スタディ生命倫理と法 第2版<br>''有斐閣''、2012</ref>。つまり、このような外部機器が記憶の補助を行うことで、どこからどこまでが人間の脳(心)なのかという線引きが曖昧になり、本来の人間の脳(心)の位置づけや意味合いに変容がもたらされる可能性がある。
 脳神経科学技術を用いることで、本来の人間とはいかなるものかという概念が変容することに関する問題。哲学的議論の中では、拡張された心の理論(extended mind theory)などによって議論が展開されており、例えば、脳神経科学技術を用いた外部機器が、記憶などの人間の精神活動に関わる高次脳機能の補助的役割を担うことは、当人の脳を延長した一部として捉えることが出来るのではないか、ということが問題となる<ref name=ref16>'''樋口範雄'''編<br>ケース・スタディ生命倫理と法 第2版<br>''有斐閣''、2012</ref>。つまり、このような外部機器が記憶の補助を行うことで、どこからどこまでが人間の脳(心)なのかという線引きが曖昧になり、本来の人間の脳(心)の位置づけや意味合いに変容がもたらされる可能性がある。


====エンハンスメント<ref name=ref12>'''信原幸弘, 原塑'''編<br>脳神経倫理学の展望<br>''勁草書房''、2008.</ref> ====
====エンハンスメント ====
 別名、能力増強や補綴とも呼ばれる。記憶力や集中力などの認知機能を高める薬物や機械などを使用することで、もともとその個人が持っていた能力を増強することを意味する。病気などの場合に平均的なレベルにまで症状を改善する治療とは異なり、元々の平均的なレベルからさらに能力を底上げすることを指す。スポーツの世界では肉体的能力を増強するために[[wj:ドーピング|ドーピング]]が行われることがあるが、エンハンスメントはより広義に[[認知機能]]なども含んで増強を目的とするものである。アメリカでは、[[中枢神経刺激薬]]の[[メチルフェニデート]](商品名:リタリン)を使用して[[学習]]効果を増強する行為が問題視され、議論の発端になった。
 別名、能力増強や補綴とも呼ばれる<ref name=ref12>'''信原幸弘, 原塑'''編<br>脳神経倫理学の展望<br>''勁草書房''、2008.</ref>。記憶力や集中力などの認知機能を高める薬物や機械などを使用することで、もともとその個人が持っていた能力を増強することを意味する。病気などの場合に平均的なレベルにまで症状を改善する治療とは異なり、元々の平均的なレベルからさらに能力を底上げすることを指す。スポーツの世界では肉体的能力を増強するために[[wj:ドーピング|ドーピング]]が行われることがあるが、エンハンスメントはより広義に[[認知機能]]なども含んで増強を目的とするものである。アメリカでは、[[中枢神経刺激薬]]の[[メチルフェニデート]](商品名:リタリン)を使用して[[学習]]効果を増強する行為が問題視され、議論の発端になった。


====マインドリーディング====
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