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<font size="+1">[http://researchmap.jp/abc123 塚野 浩明]、[http://researchmap.jp/katsueishibuki 澁木 克栄]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/abc123 塚野 浩明]、[http://researchmap.jp/katsueishibuki 澁木 克栄]</font><br> | ||
''新潟大学 脳研究所''<br> | ''新潟大学 脳研究所''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年8月23日 原稿完成日:2015年月日<br> | ||
担当編集委員:[http:// | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/noritakaichinohe 一戸 紀孝](国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)<br> | ||
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略語: MG, MGB | 略語: MG, MGB | ||
{{box|text= 内側膝状体(MG)は[[視床]]に属する神経核群であり、[[中脳]][[下丘]]と[[大脳皮質]][[聴覚野]]の間に位置する[[聴覚]]伝導路の中継核である。上行系は下丘から、下降系は大脳皮質聴覚野から入力を受ける。大脳皮質聴覚野へ送る聴覚情報の選別が内側膝状体の主な機能であると考えられている<ref name=Paxinos>'''G. Paxinos'''<br>The Rat Nervous System<br>Third Edition, 2004, ISBN13:978-0125476386</ref>。MGは[[腹側核]](ventral division of the medial geniculate body, MGv)、[[背側核]] (dorsal division of the medial geniculate body, MGd)、[[内側核]] (medial division of the medial geniculate body, MGm)の3つの亜核が主な構成亜核である。MGvは主に[[蝸牛神経核]]腹側核から始まる[[毛帯系]]の下丘中心核から聴覚情報を受け、MGd, MGmは下丘だけでなく他の視床核や[[脊髄]]などのnon-lemniscal系からmultimodalな修飾的な情報を得ていると考えられる。 }} | {{box|text= | ||
内側膝状体(MG)は[[視床]]に属する神経核群であり、[[中脳]][[下丘]]と[[大脳皮質]][[聴覚野]]の間に位置する[[聴覚]]伝導路の中継核である。上行系は下丘から、下降系は大脳皮質聴覚野から入力を受ける。大脳皮質聴覚野へ送る聴覚情報の選別が内側膝状体の主な機能であると考えられている<ref name=Paxinos>'''G. Paxinos'''<br>The Rat Nervous System<br>Third Edition, 2004, ISBN13:978-0125476386</ref>。MGは[[腹側核]](ventral division of the medial geniculate body, MGv)、[[背側核]] (dorsal division of the medial geniculate body, MGd)、[[内側核]] (medial division of the medial geniculate body, MGm)の3つの亜核が主な構成亜核である。MGvは主に[[蝸牛神経核]]腹側核から始まる[[毛帯系]]の下丘中心核から聴覚情報を受け、MGd, MGmは下丘だけでなく他の視床核や[[脊髄]]などのnon-lemniscal系からmultimodalな修飾的な情報を得ていると考えられる。 | |||
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== 内側膝状体とは == | == 内側膝状体とは == | ||
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=== 領域の区分 === | === 領域の区分 === | ||
腹側核(MGv)、背側核(MGd)、内側核(MGm)の3つの領域は[[カルビンジン]] (calbindin)や[[カルレチニン]] (calretinin)などの[[カルシウム結合タンパク質]]や非リン酸化型[[ニューロフィラメント]] (nonphosphorylated neurofilament; NNF)の発現の有無によって生化学的に区分けすることが可能である。腹側核はカルビンジンとカルレチニンの発現が無く、背側核と内側核は非常に強い発現を示す(図1)<ref name=ref19643174 ><pubmed> 19643174 </pubmed></ref>。一方NNFの発現は、腹側核と内側核で強く、背側核では殆どない<ref>'''G. Paxinos, C. Watson, P. Carrive, M. Kirkcaldie, K. Ashwell'''<br>Chemoarchitectonic Atlas of the Rat Brain<br>Second Edition, 2008, ISBN-13:978-0123742377</ref>。また、[[パルブアルブミン]](parvalbumin)の発現は腹側核で強い<ref name=ref16344161 ><pubmed> 16344161 </pubmed></ref>。[[Image:Hiroakitsukano Fig1.jpg|thumb|400px|<b> | 腹側核(MGv)、背側核(MGd)、内側核(MGm)の3つの領域は[[カルビンジン]] (calbindin)や[[カルレチニン]] (calretinin)などの[[カルシウム結合タンパク質]]や非リン酸化型[[ニューロフィラメント]] (nonphosphorylated neurofilament; NNF)の発現の有無によって生化学的に区分けすることが可能である。腹側核はカルビンジンとカルレチニンの発現が無く、背側核と内側核は非常に強い発現を示す(図1)<ref name=ref19643174 ><pubmed> 19643174 </pubmed></ref>。一方NNFの発現は、腹側核と内側核で強く、背側核では殆どない<ref>'''G. Paxinos, C. Watson, P. Carrive, M. Kirkcaldie, K. Ashwell'''<br>Chemoarchitectonic Atlas of the Rat Brain<br>Second Edition, 2008, ISBN-13:978-0123742377</ref>。また、[[パルブアルブミン]](parvalbumin)の発現は腹側核で強い<ref name=ref16344161 ><pubmed> 16344161 </pubmed></ref>。 | ||
[[Image:Hiroakitsukano Fig1.jpg|thumb|400px|<b>図1.マウスMGの生化学的区分けの例</b><br>(A)前額断切片カルレチニン染色像、(B)カルビンジン染色像、(C)マージ像。出版元より許可を得て引用<ref name=ref19643174 /> 。]] | |||
[[Image:Fig2_2.jpg|thumb|300px|<b>図2.MGを構成するニューロン</b><br>LP, 後外側核; MGd, 内側膝状体背側核; MGm, 内側膝状体内側核; MZ, marginal zone; Ov, 卵形部; PL, posterior limitans nucleus; SG,suprageniculate nucleus; V, 外側部。外側部のニューロンの形態がラミナ構造を作っている。出版元より許可を得て引用<ref name=ref10320097 />し改変。]] | |||
=== 腹側核=== | === 腹側核=== | ||
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腹側核は個々のニューロンの[[周波数チューニング]]が比較的鋭いが、下丘で見られる様な非常に鋭い周波数チューニングを持つニューロンはあまり見られない。腹側核ニューロンの[[潜時]]は非常に短い。腹側核は腹外側部 ([[Pars ventrolateralis]])においてはっきりしたトノトピー構造を持つ。即ち、低周波数音に最適周波数を持つニューロンから高周波数音に最適周波数を持つニューロンまでが一方向に並んでいる。しかし種によってこの構造には差異がある。ラットや[[wj:ウサギ|ウサギ]]では、低周波数に良く応ずるニューロンは背側部に、高周波数に応ずるニューロンは腹側部に位置する<ref><pubmed> 22405210 </pubmed></ref><ref name=ref16344161 />。ネコでは低周波数に応ずるニューロンは腹側部に、高周波数に応ずるニューロンは背側部に位置し逆転している<ref name=ref3973661><pubmed> 3973661 </pubmed></ref>。 | 腹側核は個々のニューロンの[[周波数チューニング]]が比較的鋭いが、下丘で見られる様な非常に鋭い周波数チューニングを持つニューロンはあまり見られない。腹側核ニューロンの[[潜時]]は非常に短い。腹側核は腹外側部 ([[Pars ventrolateralis]])においてはっきりしたトノトピー構造を持つ。即ち、低周波数音に最適周波数を持つニューロンから高周波数音に最適周波数を持つニューロンまでが一方向に並んでいる。しかし種によってこの構造には差異がある。ラットや[[wj:ウサギ|ウサギ]]では、低周波数に良く応ずるニューロンは背側部に、高周波数に応ずるニューロンは腹側部に位置する<ref><pubmed> 22405210 </pubmed></ref><ref name=ref16344161 />。ネコでは低周波数に応ずるニューロンは腹側部に、高周波数に応ずるニューロンは背側部に位置し逆転している<ref name=ref3973661><pubmed> 3973661 </pubmed></ref>。 | ||
卵形部は、ネコでは低周波数から高周波数まで応ずるが、ウサギでは低い周波数に選択的に応ずる領域であると考えられている<ref name=Paxinos /> | 卵形部は、ネコでは低周波数から高周波数まで応ずるが、ウサギでは低い周波数に選択的に応ずる領域であると考えられている<ref name=Paxinos />。'''(文献が正しいかご確認ください)''' | ||
=== 背側核=== | === 背側核=== | ||