「脳室下帯」の版間の差分

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''名古屋市立大学大学院医学研究科再生医学分野''<br>
''名古屋市立大学大学院医学研究科再生医学分野''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年6月19日 原稿完成日:2015年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年6月19日 原稿完成日:2015年月日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター [[脳神経]]科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
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==成体の脳室下帯==
==成体の脳室下帯==
[[image:脳室下帯1.png|thumb|400px|'''図1.成体マウスの脳室下帯の細胞構築'''<br>A:脳室下帯の模式図。脳室帯-脳室下帯には、上衣細胞(紫)、神経幹細胞(青)、一過性増殖細胞(黄緑)、ニューロブラスト(赤)が存在する。脳室下帯への縫線核からのセロトニン入力(黄線)・黒質からのドーパミン入力(黒線)・脳室下帯内のコリン作動性ニューロン(桃)によるアセチルコリン入力は、ニューロンの再生を制御している。<br>B:脳室面から観察した上衣細胞の風車状配列。中央には一次繊毛を有する神経幹細胞の突起が存在する。]]
[[image:脳室下帯1.png|thumb|400px|'''図1.成体マウスの脳室下帯の細胞構築'''<br>A:脳室下帯の模式図。脳室帯-脳室下帯には、上衣細胞(紫)、神経幹細胞(青)、一過性増殖細胞(黄緑)、ニューロブラスト(赤)が存在する。脳室下帯への縫線核からのセロトニン入力(黄線)・黒質からのドーパミン入力(黒線)・脳室下帯内のコリン作動性ニューロン(桃)によるアセチルコリン入力は、ニューロンの再生を制御している。<br>B:脳室面から観察した上衣細胞の風車状配列。中央には一次繊毛を有する神経幹細胞の突起が存在する。]]


===脳室下帯を構成する細胞とその機能===
===脳室下帯を構成する細胞とその機能===
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 ヒトや近縁の霊長類の成体脳では、脳室面の上衣細胞層以外の基本構造は、げっ歯類とは大きく異なる72-75)。第1層である上衣細胞層の直下には、細胞体がほとんど存在しない第2層(hypocellular gap)が存在する。この層は、その下の第3層に存在するアストロサイトの突起が主な構成成分である。細胞体が高密度に存在する第三層の大部分はGFAPを発現するアストロサイトであり、その下には線条体との移行部(第四層)が存在する。ニューロブラストは非常に少数で、第2層と第3層に分布し、細胞集団を作らずに個々に存在する。この所見から、ヒトの脳室下帯ではニューロンの産生能力は非常に低いことが示唆される。しかし脳梗塞後の急性期に死亡した患者脳では、細胞増殖やニューロブラストの数は増加しており、傷害後の反応性のニューロン産生の増加はヒトにも共通の現象のようである76)。
 ヒトや近縁の霊長類の成体脳では、脳室面の上衣細胞層以外の基本構造は、げっ歯類とは大きく異なる72-75)。第1層である上衣細胞層の直下には、細胞体がほとんど存在しない第2層(hypocellular gap)が存在する。この層は、その下の第3層に存在するアストロサイトの突起が主な構成成分である。細胞体が高密度に存在する第三層の大部分はGFAPを発現するアストロサイトであり、その下には線条体との移行部(第四層)が存在する。ニューロブラストは非常に少数で、第2層と第3層に分布し、細胞集団を作らずに個々に存在する。この所見から、ヒトの脳室下帯ではニューロンの産生能力は非常に低いことが示唆される。しかし脳梗塞後の急性期に死亡した患者脳では、細胞増殖やニューロブラストの数は増加しており、傷害後の反応性のニューロン産生の増加はヒトにも共通の現象のようである76)。
==参考文献==
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