「細胞死」の版間の差分

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英語名:cell death 独:Zelltod 仏:mort cellulaire
英語名:cell death 独:Zelltod 仏:mort cellulaire
{{box|text= 細胞が何らかの理由により細胞膜や核などの破綻をきたし、修復不可能となった不可逆的状態が細胞死である。物理的損傷等により一瞬のうちに細胞構造が破壊されるのを「事故的細胞死」とよぶ。一方、細胞内の遺伝的にコードされた分子機構が発動する細胞死は、「制御された細胞死(regulated cell death:RCD)」と呼ぶ。制御された細胞死には、アポトーシス、制御されたネクローシス、オートファジー細胞死等がある。神経系発生過程ではアポトーシスが大量に生じる。例えば、発生中の上皮構造において周辺細胞との上皮バリア構造を保ったままアポトーシスが起こると同時に細胞の頭頂部収縮を促すため上皮組織の屈曲が起こる。このようなメカニズムが神経管閉鎖へ関与している。また限られた神経栄養因子を競合する細胞の間では負けた細胞のアポトーシスが起こり、神経細胞と標的組織との数の調節(マッチング)のための機構として働くと考えられる。}}
{{box|text= 細胞が何らかの理由により細胞膜や核などの破綻をきたし、修復不可能となった不可逆的状態が細胞死である。物理的損傷等により一瞬のうちに細胞構造が破壊されるのを「事故的細胞死」とよぶ。一方、細胞内の遺伝的にコードされた分子機構が発動する細胞死は、「制御された細胞死」と呼ぶ。制御された細胞死には、アポトーシス、制御されたネクローシス、オートファジー細胞死等がある。神経系発生過程ではアポトーシスが大量に生じる。例えば、発生中の上皮構造において周辺細胞との上皮バリア構造を保ったままアポトーシスが起こると同時に細胞の頭頂部収縮を促すため上皮組織の屈曲が起こる。このようなメカニズムが神経管閉鎖へ関与している。また限られた神経栄養因子を競合する細胞の間では負けた細胞のアポトーシスが起こり、神経細胞と標的組織との数の調節(マッチング)のための機構として働くと考えられる。}}


==細胞死とは==
==細胞死とは==
 細胞が何らかの理由により[[細胞膜]]や[[wikipedia:ja:核|核]]などの破綻をきたし、修復不可能となった不可逆的状態が細胞死である。かつては、発生過程で観察される[[プログラム細胞死]]の主要形態である[[アポトーシス]](apoptosis)と、それ以外の[[ネクローシス]](necrosis)とに細胞死を分類することもあった。しかし近年、多種多様な分子機構が細胞死に関与することが明らかとなり、細胞死を以下のように区別することが提唱されている<ref name=ref1><pubmed>4561027</pubmed></ref> <ref name=ref2><pubmed>25710534</pubmed></ref>。まず、強酸やアルカリ、熱、物理的損傷等の、外傷により一瞬のうちに細胞構造が破壊される細胞死は、「[[事故的細胞死]](accidental cell death:ACD)」と呼ぶ。かつてネクローシスと呼ばれたもののうち事故的に生じたものが含まれる。一方、細胞内の遺伝的にコードされた分子機構が発動する細胞死は、「[[制御された細胞死]](regulated cell death)」と呼ぶ。制御された細胞死には、アポトーシス、[[制御されたネクローシス]]、[[オートファジー細胞死]]、等がある。制御されたネクローシスはさらに複数の細胞死に分類されつつある。
 細胞が何らかの理由により[[細胞膜]]や[[wikipedia:ja:核|核]]などの破綻をきたし、修復不可能となった不可逆的状態が細胞死である。かつては、発生過程で観察される[[プログラム細胞死]]の主要形態である[[アポトーシス]](apoptosis)と、それ以外の[[ネクローシス]](necrosis)とに細胞死を分類することもあった。しかし近年、多種多様な分子機構が細胞死に関与することが明らかとなり、細胞死を以下のように区別することが提唱されている<ref name=ref1><pubmed>4561027</pubmed></ref> <ref name=ref2><pubmed>25710534</pubmed></ref>。まず、強酸やアルカリ、熱、物理的損傷等の、外傷により一瞬のうちに細胞構造が破壊される細胞死は、「[[事故的細胞死]](accidental cell death:ACD)」と呼ぶ。かつてネクローシスと呼ばれたもののうち事故的に生じたものが含まれる。一方、細胞内の遺伝的にコードされた分子機構が発動する細胞死は、「[[制御された細胞死]](regulated cell death:RCD)」と呼ぶ。制御された細胞死には、アポトーシス、[[制御されたネクローシス]]、[[オートファジー細胞死]]、等がある。制御されたネクローシスはさらに複数の細胞死に分類されつつある。


 多種多様な細胞死が見つかる一方、その命名は各研究者が独自に行なってきたため、細胞死の名称や定義が混乱している。これを受けて、オートファジー細胞死の例で見られるように、細胞死の定義と命名に関して整理を行なうべきとの提言が細胞死研究者のコミュニティから出されている<ref name=ref3 /> <ref name=ref22><pubmed>25236395</pubmed></ref>。今後の分子機構の解明次第で、パイロトーシスやフェロプトーシスなどの新しい細胞死に関しては、名称や定義が変化する可能性もあり、注意が必要である。
 多種多様な細胞死が見つかる一方、その命名は各研究者が独自に行なってきたため、細胞死の名称や定義が混乱している。これを受けて、オートファジー細胞死の例で見られるように、細胞死の定義と命名に関して整理を行なうべきとの提言が細胞死研究者のコミュニティから出されている<ref name=ref3 /> <ref name=ref22><pubmed>25236395</pubmed></ref>。今後の分子機構の解明次第で、パイロトーシスやフェロプトーシスなどの新しい細胞死に関しては、名称や定義が変化する可能性もあり、注意が必要である。

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