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== 音声学習における臨界期 == | == 音声学習における臨界期 == | ||
ヒトの言語発音の学習と鳴禽のさえずり学習は共に強い年齢依存性を持ち、臨界期(感受性期)と呼ばれる発達段階の特定の時期に主に学習が行われる。ヒトでは、思春期が始まる頃から第二言語の習得能力が徐々に低下することなどから、言語学習の臨界期の存在が良く知られている。言語学習には文法や語彙の習得など音声学習以外の要素も含まれるが、音声学習である言語発音習得の能力は、第二言語の訛り(アクセント)の研究<ref>'''Susan Oyama'''<br>A sensitive period for the acquisition of a nonnative phonological system.<br>''Journal of Psycholinguistic Research'': 1976, 5;261–283</ref> | ヒトの言語発音の学習と鳴禽のさえずり学習は共に強い年齢依存性を持ち、臨界期(感受性期)と呼ばれる発達段階の特定の時期に主に学習が行われる。ヒトでは、思春期が始まる頃から第二言語の習得能力が徐々に低下することなどから、言語学習の臨界期の存在が良く知られている。言語学習には文法や語彙の習得など音声学習以外の要素も含まれるが、音声学習である言語発音習得の能力は、第二言語の訛り(アクセント)の研究<ref>'''Susan Oyama'''<br>A sensitive period for the acquisition of a nonnative phonological system.<br>''Journal of Psycholinguistic Research'': 1976, 5;261–283</ref>などから10歳頃にはすでに低下し始めると考えられる。この音声学習能力の低下は、単に第二言語の音声を生成する運動能力の低下だけでなく、それらを識別する感覚能力の低下にも起因する<ref name=ref11 />。なお前述の通り、第二言語の音声に対する識別能力は生後一年頃までに低下するが、その低下はまだ可逆的なものであり<ref><pubmed>12861072</pubmed></ref>、その時期に音声学習の臨界期が終了するわけではない。 | ||
鳴禽のさえずり学習も発達段階の初期(幼鳥期)に明らかな臨界期を持つ。キンカチョウでは孵化後約60日を過ぎると、新たな手本のさえずりを聞いてもそれを模倣しなくなる。しかし、他個体から隔離され手本のさえずりを全く聞かずに育った鳥では、学習の臨界期が大幅に延長することが知られている<ref>'''Lucy A. Eales'''<br>Song learning in zebra finches: some effects of song model availability on what is learnt and when.<br>''Animal Behaviour'': 1985, 33;1293–1300</ref>。また、カナリアなどの鳴禽は、成鳥になりさえずり学習が終了した後も、毎年繁殖期に新たなさえずりを学習するため、open-ended learnerと呼ばれる。一方、キンカチョウのような幼鳥期にのみ臨界期を持つ鳴禽はclose-ended learnerと呼ばれる。 | |||
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