「瞬目反射条件づけ」の版間の差分

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== 小脳皮質vs.小脳核の論争 ==
== 小脳皮質vs.小脳核の論争 ==
 1980年代に南カルフォルニア大学の[[wikipedia:Richard F. Thompson|Richard F. Thompson]]のグループが、同側の小脳破壊(小脳皮質と小脳核の両方の破壊)によって、瞬目反射条件づけ遅延課題の学習獲得が失われることを発見し<ref name=ref5 />、これが瞬目反射条件づけ(遅延課題)に小脳が必要であるとのコンセンサスの礎となった(当初、小脳破壊は単純に、CRの出力を損傷させているだけで、記憶の形成を阻害している訳ではないという反論もアイオワ大学の研究者からなされ、両者との間で論争となったことも付記する<ref><pubmed> 2913208 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1432102 </pubmed></ref>)。しかし、小脳核を完全に傷つけずに小脳皮質のみを除去することは実際的には困難であることから、その後小脳皮質が瞬目反射条件づけ(遅延課題)に必須であるかどうかについての議論が長く続くことになる。Thompsonらが、小脳核の重要性を強調したのに対し(ただし彼らのグループは後に、ミュータントマウスを用いてむしろ後者の立場も支持する一連の研究を行ったことは留意すべきである)、代表的にはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの[[wikipedia|Christopher H. Yeo]]のグループは、注意深い損傷実験により、小脳皮質がより瞬目反射条件づけ(遅延課題)の記憶獲得に重要であるとの言説を唱えた<ref><pubmed> 4043286 </pubmed></ref>。以下の2項でさらに、小脳皮質と小脳核の役割に着目したより具体的な研究例を紹介する。
 1980年代に南カルフォルニア大学の[[wikipedia:Richard F. Thompson|Richard F. Thompson]]のグループが、同側の小脳破壊(小脳皮質と小脳核の両方の破壊)によって、瞬目反射条件づけ遅延課題の学習獲得が失われることを発見し<ref name=ref5 />、これが瞬目反射条件づけ(遅延課題)に小脳が必要であるとのコンセンサスの礎となった(当初、小脳破壊は単純に、CRの出力を損傷させているだけで、記憶の形成を阻害している訳ではないという反論もアイオワ大学の研究者からなされ、両者との間で論争となったことも付記する<ref><pubmed> 2913208 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1432102 </pubmed></ref>)。しかし、小脳核を完全に傷つけずに小脳皮質のみを除去することは実際的には困難であることから、その後小脳皮質が瞬目反射条件づけ(遅延課題)に必須であるかどうかについての議論が長く続くことになる。Thompsonらが、小脳核の重要性を強調したのに対し(ただし彼らのグループは後に、ミュータントマウスを用いてむしろ後者の立場も支持する一連の研究を行ったことは留意すべきである)、代表的にはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの[[wikipedia:Christopher H. Yeo|Christopher H. Yeo]]のグループは、注意深い損傷実験により、小脳皮質がより瞬目反射条件づけ(遅延課題)の記憶獲得に重要であるとの言説を唱えた<ref><pubmed> 4043286 </pubmed></ref>。以下の2項でさらに、小脳皮質と小脳核の役割に着目したより具体的な研究例を紹介する。


=== 小脳皮質の重要性についての議論 ===
=== 小脳皮質の重要性についての議論 ===

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