「超解像蛍光顕微鏡」の版間の差分

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 2)この状況を回避するためにPSFの重なりが無い程度に一つの細胞にGFPを極少なく発現させる事は困難である。<br>
 2)この状況を回避するためにPSFの重なりが無い程度に一つの細胞にGFPを極少なく発現させる事は困難である。<br>
 3)仮に2)が達成できたとしても数個のGFPの詳細位置がわかるだけであり、分子の局在情報として不十分である。<br>
 3)仮に2)が達成できたとしても数個のGFPの詳細位置がわかるだけであり、分子の局在情報として不十分である。<br>
以下に紹介するそれぞれの蛍光一分子局在化法では、蛍光色素の蛍光状態(蛍光能)や蛍光色が切り替わる性質を利用してこれらの問題を巧妙に回避した。
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これらの問題を巧妙に回避するために蛍光一分子局在化顕微鏡法では、蛍光色素の蛍光状態(蛍光能)や蛍光色が切り替わる性質を巧みに利用している。それぞれについて以下の項目で紹介する


====<small>PALM,FPALM</small>====
====<small>PALM,FPALM</small>====
蛍光一分子局在化法の一つとしてまず初めにPALM(photoactivated localization microscopy)<ref><pubmed> 16902090 </pubmed></ref>の原理について説明する。PALMは蛍光色素として特定波長の刺激光照射により蛍光状態がオフからオンへ変化するPA-GFP<ref><pubmed> 12228718 </pubmed></ref>のような「光スイッチング蛍光タンパク質(Photo-Switchable Fluorescent Protein; PSFP)」を利用する。オフからオンへ切り替わる確率は刺激光の強度と照射時間とおよそ比例関係にあるので、それらを適切にコントロールすることで、視野内でPSFが重ならない程度に疎らにPSFPをオンにする事ができる(図-①)。この状態であればFIONAを適用し蛍光一分子の位置解析を行う事ができる(図-②,③)。視野内のPSFPを退色させた後に、①-③をPSFPが全てなくなるまで何度も繰り返す。こうして発現させた全てのPSFPの局在画像(PALM画像)を得る事ができる。図では比較のために②で得られた画像の総和も示した。これはPSFPを全てオンにして撮った通常の蛍光画像に相当する。通常の蛍光画像では観られなかった「P A L M」の4文字がPALM画像では確認できる。<br>
蛍光一分子局在化顕微鏡法の一つとしてまず初めにPALM(photoactivated localization microscopy)<ref><pubmed> 16902090 </pubmed></ref>の原理について説明する。PALMは蛍光色素として特定波長の刺激光照射により蛍光状態がオフからオンへ変化するPA-GFP<ref><pubmed> 12228718 </pubmed></ref>のような「光スイッチング蛍光タンパク質(Photo-Switchable Fluorescent Protein; PSFP)」を利用する。オフからオンへ切り替わる確率は刺激光の強度と照射時間とおよそ比例関係にあるので、それらを適切にコントロールすることで、視野内でPSFが重ならない程度に疎らにPSFPをオンにする事ができる(図-①)。この状態であればFIONAを適用し蛍光一分子の位置解析を行う事ができる(図-②,③)。視野内のPSFPを退色させた後に、①-③をPSFPが全てなくなるまで何度も繰り返す。こうして発現させた全てのPSFPの局在画像(PALM画像)を得る事ができる。図では比較のために②で得られた画像の総和も示した。これはPSFPを全てオンにして撮った通常の蛍光画像に相当する。通常の蛍光画像では観られなかった「P A L M」の4文字がPALM画像では確認できる。<br>
PALMと同時期に発表されたFPALM(Fluorescence photoactivation localization microscopy)もPALMと同じくPSFPを利用する方法である<ref><pubmed> 16980368 </pubmed></ref>。PALM・FPALMではPA-GFPの他のPSFPとして刺激光により蛍光色が変化するmEOS2(緑色から赤色)<ref><pubmed> 19169260 </pubmed></ref>が利用される。またケージド蛍光色素の利用も可能である。<br>
PALMと同時期に発表されたFPALM(Fluorescence photoactivation localization microscopy)もPALMと同じくPSFPを利用する方法である<ref><pubmed> 16980368 </pubmed></ref>。PALM・FPALMではPA-GFPの他のPSFPとして刺激光により蛍光色が変化するmEOS2(緑色から赤色)<ref><pubmed> 19169260 </pubmed></ref>が利用される。またケージド蛍光色素の利用も可能である。<br>


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蛍光一分子局在化法はPALM・FPALMの他にも様々な方法が開発されているが、大きく異なるのは図-①においてどのようにして疎らな蛍光分子のオンを達成するかであり、FIONAに相当する図-②,③の操作はどの方法でもほぼ同様である。そこでその他の方法については蛍光分子の蛍光状態のオン・オフの切り替えに焦点を絞り、以下の項目で簡単に説明するにとどめる。<br>
蛍光一分子局在化顕微鏡法はPALM・FPALMの他にも様々な方法が開発されているが、大きく異なるのは図-①においてどのようにして疎らな蛍光分子のオンを達成するかであり、FIONAに相当する図-②,③の操作はどの方法でもほぼ同様である。そこでその他の方法については蛍光分子の蛍光状態のオン・オフの切り替えに焦点を絞り、以下の項目で簡単に説明するにとどめる。<br>




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====<small>その他の方法</small>====
====<small>その他の方法</small>====
蛍光一分子局在化法のための蛍光色素の開発は現在も活発にされている。最近になり自然にオン・オフを繰り返す画期的な蛍光色素HMSiR(Hydroxymethyl Si-rhodamine)が開発された<ref><pubmed> 25054937 </pubmed></ref>。これはSTORMやdSTORMと比べて、暗状態を作るための高濃度のチオールや強い励起光照射が不要なためサンプルへのダメージを抑えられる。また強い励起光照射が必要ではないので全反射顕微鏡でなく共焦点顕微鏡の使用も容易となり、細胞の深部構造の超解像観察が可能となった。<br>
蛍光一分子局在化顕微鏡法のための蛍光色素の開発は現在も活発にされている。最近になり自然にオン・オフを繰り返す画期的な蛍光色素HMSiR(Hydroxymethyl Si-rhodamine)が開発された<ref><pubmed> 25054937 </pubmed></ref>。これはSTORMやdSTORMと比べて、暗状態を作るための高濃度のチオールや強い励起光照射が不要なためサンプルへのダメージを抑えられる。また強い励起光照射が必要ではないので全反射顕微鏡でなく共焦点顕微鏡の使用も容易となり、細胞の深部構造の超解像観察が可能となった。<br>


==注釈==
==注釈==
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