9,444
回編集
細編集の要約なし |
細編集の要約なし |
||
58行目: | 58行目: | ||
{{box|text= | {{box|text= | ||
[[Image:低分子量Gタンパク質1.png|thumb|240px|<b> | [[Image:低分子量Gタンパク質1.png|thumb|240px|<b>図.低分子量Gタンパク質の活性調節と作用機構</b><br>GDIと複合体を形成しているGDP結合型(不活性型)の低分子量Gタンパク質はGDF によりGDI が遊離すると、GFFによりGTP結合型(活性型)となり、標的タンパク質に作用する。一方、GTP結合型の低分子量Gタンパク質はGAPによりGTPが加水分解されてGDP結合型(不活性型)となる。<br>GDI:GDP解離阻害因子<br>GDF:GDI置換因子<br>GEF:GDP/GTP交換因子<br>GAP:GTPase活性化タンパク質 ]] | ||
低分子量Gタンパク質とは、分子量20-30kDaの[[wikipedia:ja:グアノシン三リン酸|グアノシン三リン酸]](GTP)結合タンパク質である。[[wikipedia:ja:グアノシン二リン酸|グアノシン二リン酸]](GDP)結合型からGTP結合型への転換により活性型となり、特異的な標的分子に結合して[[細胞内シグナル]]を伝達する分子スイッチとして機能する(図)<ref name="ref1"><pubmed>22270915</pubmed></ref>。活性調節は時間的、空間的に制御されており、バイオタイマーとしても機能する<ref name="ref2"><pubmed>11152757</pubmed></ref>。5つのファミリーに分類され、[[細胞増殖|増殖]]、[[分化]]、[[遺伝子発現]]、[[運動]]、[[小胞輸送]] | 低分子量Gタンパク質とは、分子量20-30kDaの[[wikipedia:ja:グアノシン三リン酸|グアノシン三リン酸]](GTP)結合タンパク質である。[[wikipedia:ja:グアノシン二リン酸|グアノシン二リン酸]](GDP)結合型からGTP結合型への転換により活性型となり、特異的な標的分子に結合して[[細胞内シグナル]]を伝達する分子スイッチとして機能する(図)<ref name="ref1"><pubmed>22270915</pubmed></ref>。活性調節は時間的、空間的に制御されており、バイオタイマーとしても機能する<ref name="ref2"><pubmed>11152757</pubmed></ref>。5つのファミリーに分類され、[[細胞増殖|増殖]]、[[分化]]、[[遺伝子発現]]、[[運動]]、[[小胞輸送]]などの細胞機能を制御する(表1)。神経系においては、低分子量Gタンパク質は、神経細胞の軸索や樹状突起の伸長といった形態形成、神経細胞間の情報伝達など様々な機能を制御する(表2)。 | ||
}} | }} | ||
121行目: | 121行目: | ||
|} | |} | ||
''' | '''表1.低分子量Gタンパク質の分類と主な機能''' | ||
182行目: | 182行目: | ||
低分子量Gタンパク質が細胞膜で活性化されるためには、細胞質から細胞膜に移行して結合する必要がある。低分子量Gタンパク質はC末端側の[[wikipedia:ja:システイン|Cys]]残基が[[プレニル化]]されて細胞膜に結合する。プレニル化には、[[ファルネシル基]]が結合する[[ファルネシル化]]と[[ゲラニルゲラニル基]]が結合する[[ゲラニルゲラニル化]]がある。Rasはファルネシル化を受けるのに対し、RhoやRabなど多くの低分子量Gタンパク質はゲラニルゲラニル化を受ける。 | 低分子量Gタンパク質が細胞膜で活性化されるためには、細胞質から細胞膜に移行して結合する必要がある。低分子量Gタンパク質はC末端側の[[wikipedia:ja:システイン|Cys]]残基が[[プレニル化]]されて細胞膜に結合する。プレニル化には、[[ファルネシル基]]が結合する[[ファルネシル化]]と[[ゲラニルゲラニル基]]が結合する[[ゲラニルゲラニル化]]がある。Rasはファルネシル化を受けるのに対し、RhoやRabなど多くの低分子量Gタンパク質はゲラニルゲラニル化を受ける。 | ||
== | == 神経系における低分子量Gタンパク質の機能 == | ||
低分子量Gタンパク質は、神経細胞の形態や神経細胞間のシグナル伝達など様々な機能を制御する(表3)。Rasファミリーは、前シナプスからのグルタミン酸やGABAなどの神経伝達物質の放出や後シナプスでのグルタミン酸受容体のターンオーバーを調節し、シナプスの可塑性を制御する<ref name=ref8 />。RhoファミリーやRanファミリーは、神経細胞の軸索や樹状突起の伸長など、形態形成を制御する<ref name=ref9 /> <ref name=ref10 />。Rabファミリーは、神経細胞の軸索突起の伸長、シナプス小胞のエクソサイトーシスとエンドサイトーシス、輸送を制御する<ref name=ref11 />。Sar/Arfファミリーは、形態形成およびシナプス小胞のエクソサイトーシスとエンドサイトーシスを調節し、シナプスの可塑性を制御する<ref name=ref12 />。 | |||
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" | {| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" | ||
213行目: | 213行目: | ||
|} | |} | ||
''' | '''表3.神経系における低分子量Gタンパク質の主な機能''' | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references /> | <references /> |