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'''脳磁法とは''' | '''脳磁法とは''' | ||
脳磁法(magnetoencephalography, MEG)とは、脳の神経活動に伴って発生する磁場(磁界)を頭皮上から完全非侵襲的に計測する技術である。通常脳の神経活動に伴う磁界変化は非常に微弱であるため、SQUIDs(超伝導量子干渉計)を利用した高感度磁気センサーを用いる。記録の対象であるヒト脳磁場信号の大きさが10-14 T(テスラ)から10-12 T程度であるのに対して、例えば地磁気は10-5 | 脳磁法(magnetoencephalography, MEG)とは、脳の神経活動に伴って発生する磁場(磁界)を頭皮上から完全非侵襲的に計測する技術である。通常脳の神経活動に伴う磁界変化は非常に微弱であるため、SQUIDs(超伝導量子干渉計)を利用した高感度磁気センサーを用いる。記録の対象であるヒト脳磁場信号の大きさが10-14 T(テスラ)から10-12 T程度であるのに対して、例えば地磁気は10-5 Tの大きさを有しているため外部環境磁場ノイズを軽減することが重要である(図1)[[ファイル:磁場強度.pdf|環境磁場と生体磁場の強度]]。そのため、脳磁計は透磁率の大きい合金(パーマロイ)等で出来た磁気シールドルーム内に設置される。1972年に超伝導量子干渉計を用いてヒトの脳から生じる磁場信号の検出に成功[1]した当時は単チャンネルであったが、その後多チャンネル化が急速に進み現在では100チャンネル以上のセンサーを有する多チャンネル全頭型装置(図2)[[ファイル:全頭型脳磁計.jpg|多チャンネル全頭型脳磁計の一例]]が一般的になり、基礎研究及び臨床研究に用いられている。超伝導量子干渉計は常に液体ヘリウムで冷却する必要があるため、高性能の断熱容器(デュワー)内に格納されている。脳磁場を検出コイルにはその形状から大きく分けてマグネトメーターとグラジオメーターがある(図3)[[ファイル:センサーの種類.pdf|脳磁場を検出する各種コイルの形状]]。マグネトメーターは1個のコイルで磁束を補足する。形状が単純であり遠方の信号源からの磁場も比較的良く計測できるという長所があるが、その反面外部からの環境磁場の影響を受けやすい。グラジオメーターに関しては軸方向型と平面方向型に大別できる。軸方向型グラジオメーターは脳表に近い検出コイルと遠い補償コイルを逆向きに接続することで、両者の差分信号を計測する。近傍から発生する磁場は空間勾配が大きいため、脳から発生する磁場に関しては検出コイルのほうが補償コイルより大きい入力を受ける。それに対して遠隔に信号源を有する環境磁場に関しては、検出コイルと補償コイルにほぼ同様の影響を与える。その結果、軸方向型グラジオメーターは環境磁場の影響を軽減しながら脳からの磁場信号を計測することが出来る。それに対し、平面方向型グラジオメーターは頭皮の接線方向の磁場差分を計測しているため、環境磁場の影響を打ち消しながら近傍の信号源からの磁場に対しては高い感度を持つという特徴を持つ。反面、平面方向型グラジオメーターの計測磁場振幅は信号源から遠いと大きく減衰するため、脳深部からの磁場計測には適さない。またマグネトメーターと軸方向型グラジオメーターの計測磁場分布は似たようなパターンを示すのに対して、平面方向型グラジオメーターの計測磁場分布は大きく異なることにも注意が必要である。例えば、信号源の直上における計測磁場密度はマグネトメーターや軸方向型グラジオメーターでは0に近い値を示すのに対して、平面方向型グラジオメーターでは極大または極小となる。 | ||
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