67
回編集
Masanoriimamura (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Masanoriimamura (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
3行目: | 3行目: | ||
<br> | <br> | ||
iPS細胞(人工多能性幹細胞)とは、本来、多能性を失っている体細胞に特定の因子を導入することによって人為的に誘導される多能性幹細胞の総称である。胚盤胞と呼ばれる初期胚の内部細胞塊から樹立されたES細胞(胚性幹細胞)と類似した特徴を示し、分化多能性の定義である三胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)および生殖細胞への分化能を保持したまま、培養下で半永久的に増殖する。2006年に京都大学の高橋和利博士、山中伸弥博士によって最初の報告がなされた。以降、様々な動物種、細胞種を利用したiPS細胞の樹立が報告されている。ヒトにおいては、個々人の細胞からの作成が可能であることから、疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明や薬剤スクリーニングのほか、免疫拒絶を回避した再生医療への応用が期待されている。 | |||
<br> | <br> | ||
17行目: | 17行目: | ||
== 初期化因子の探索 == | == 初期化因子の探索 == | ||
上述の背景のもと、山中伸弥博士(当時、奈良先端科学技術大学院大学)はES細胞の分化多能性維持機構を解明することを第一の目的とし、ES細胞で特異的に発現する遺伝子群をの同定を行った。公共のデータベースを利用したin silicoのスクリーニングにより、ECAT(ES cell associated transcript)と命名した。ECATの中にはEsg1/ECAT2/ | 上述の背景のもと、山中伸弥博士(当時、奈良先端科学技術大学院大学)はES細胞の分化多能性維持機構を解明することを第一の目的とし、ES細胞で特異的に発現する遺伝子群をの同定を行った。公共のデータベースを利用したin silicoのスクリーニングにより、ECAT(ES cell associated transcript)と命名した。ECATの中にはEsg1/ECAT2/Dppa5やOct4等の既知のES細胞マーカー遺伝子のほか、複数の新規の遺伝子も含まれていた。「ES細胞で特異的に発現している遺伝子≒ES細胞において機能的重要な遺伝子」との仮説から、これらECATのノックアウトや強制発現実験が試みられ、その結果、ホメオボックス転写因子であるNanog/ECAT4は多能性ネットワークの構築と維持における中心であることや、恒常活性化型のRasタンパク質であるERas/ECAT5は増殖と造腫瘍性を担うことなどが明らかとなった。 また、iPS細胞を選択するために最初に利用されたFbx15/ECAT3も、このスクリーニングによって同定された遺伝子である。 | ||
<br> | |||
== iPS細胞樹立の成功 == | == iPS細胞樹立の成功 == | ||
続いて、「ES細胞において重要な遺伝子≒体細胞の初期化を誘導する遺伝子」との仮説に基づき、ECATおよび他のES細胞の維持に重要であることが報告されている遺伝子の体細胞。 ECATを1種類ずつ導入した場合にはES様の細胞は得られなかった。一方、24種類のECATを混合して導入した場合、頻度は低いながらもES細胞様のコロニーが得られた。24遺伝子から1遺伝子ずつ差し引く実験により、最終的に4種類の遺伝子(Oct4, Sox2, Klf4, c-Myc)の組み合わせで十分であることが判明した。この細胞をiPS細胞と名付けられた。その後、 | |||
| | ||
43行目: | 43行目: | ||
== 遺伝子導入方法 == | == 遺伝子導入方法 == | ||
iPS細胞が樹立された当初は、遺伝子導入の手段としてレトロウイルスやレンチウイルスがベクターとして利用された。しかし、どちらのウイルスもゲノムDNAに組み込まれることから、挿入変異や近傍の遺伝子に与える影響、導入遺伝子の活性化による腫瘍形成等の予期しない異常が生じる危険性を包含している。そこで、こうしたリスクを避けるとして、新たな遺伝子導入方法が考案されてきた。その一つとして、遺伝子導入箇所の特定と除去を可能とする、トランスポゾンを利用したピギーバックが開発された。一方、ゲノムに組み込まれないエピソーマルベクターとして、センダイウイルスやプラスミドDNAを用いる手法が挙げられる。さらに、ベクターという形式を用いず、合成RNAを直接導入する方法についても報告されている。<br> | |||
<br> | |||
== iPS細胞を誘導する遺伝子 == | == iPS細胞を誘導する遺伝子 == | ||
前述の通り、最初のiPS細胞はOct4、Sox2、Klf4、c- | 前述の通り、最初のiPS細胞はOct4、Sox2、Klf4、c-Mycの4種類の遺伝子を導入することで作成された。それから間もなく、誘導効率は低下するもののc-Mycを除いた3因子でもiPS細胞は樹立可能であることが示された。ヒトの場合においても同じ遺伝子セットで誘導可能であるが、山中博士らとほぼ同時にヒトiPS細胞の作成を報告した博士らは、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28。Glis1 | ||
また、様々な低分子化合物を併用した誘導方法についても多数の報告がある。 <br> | また、様々な低分子化合物を併用した誘導方法についても多数の報告がある。 <br> | ||
= iPS細胞を用いた分化誘導 = | = iPS細胞を用いた分化誘導 = | ||
65行目: | 67行目: | ||
<br> | <br> | ||
= 参考文献 = | = 参考文献 = | ||
同義語:人工多能性幹細胞、iPS細胞 | 同義語:人工多能性幹細胞、iPS細胞 |
回編集