「誘発電位および誘発脳磁界」の版間の差分

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'''加算平均法'''
'''加算平均法'''
[[動物]]実験や、[[ヒト]]においても開頭術を行い[[大脳皮質]]表面に直接電極を装着することができる場合においては、1回の試行でも十分な信号対雑音比(S/N比)を持った反応を記録することが可能である。しかしながら、通常ヒトの場合は非侵襲的に脳の神経活動を計測するため、頭皮上に電極を装着し非侵襲的に脳波を記録するか[[超伝導量子干渉計]] ([[SQUIDs]])を用いた[[脳磁法]]によって脳磁界を記録する。こうして得られた1試行による誘発電位、誘発脳磁界は自律神経活動より微小のため観測は非常に困難である[3]。そこで、非侵襲的にヒト脳から誘発電位・誘発脳磁界を記録する場合は、何回も試行を繰り返し加算平均してS/N比を高めることが多い[4]。図1は音を聞かせた時の誘発脳磁界反応(204チャンネル)を重ね書きしたものである。1試行では誘発脳磁界反応は自律神経活動由来の脳磁界に埋もれてしまい不明確であるが、10試行、100試行と加算平均することで、自律神経活動成分が減少し誘発脳磁界反応は鮮明になる。これは、外部からの物理刺激と同期した誘発電位(誘発脳磁界)は刺激時点を基準に加算平均しても振幅は減少しないのに対して、外部刺激と同期していない自律神経活動は加算平均によりお互いを[[打ち消し]]合うため振幅が減少するためである。誘発電位(誘発脳磁界)のS/N比は試行回数の平方根に比例して向上する。例えば100回の試行を加算平均するとS/N比は約10倍になる。
[[動物]]実験や、[[ヒト]]においても開頭術を行い[[大脳皮質]]表面に直接電極を装着することができる場合においては、1回の試行でも十分な信号対雑音比(S/N比)を持った反応を記録することが可能である。しかしながら、通常ヒトの場合は非侵襲的に脳の神経活動を計測するため、頭皮上に電極を装着し非侵襲的に脳波を記録するか[[超伝導量子干渉計]] ([[SQUIDs]])を用いた[[脳磁法]]によって脳磁界を記録する。こうして得られた1試行による誘発電位、誘発脳磁界は自律神経活動より微小のため観測は非常に困難である[3]。そこで、非侵襲的にヒト脳から誘発電位・誘発脳磁界を記録する場合は、何回も試行を繰り返し加算平均してS/N比を高めることが多い[4]。図1は音を聞かせた時の誘発脳磁界反応(204チャンネル)を重ね書きしたものである。1試行では誘発脳磁界反応は自律神経活動由来の脳磁界に埋もれてしまい不明確であるが、10試行、100試行と加算平均することで、自律神経活動成分が減少し誘発脳磁界反応は鮮明になる。これは、外部からの物理刺激と同期した誘発電位(誘発脳磁界)は刺激時点を基準に加算平均しても振幅は減少しないのに対して、外部刺激と同期していない自律神経活動は加算平均によりお互いを[[打ち消し]]合うため振幅が減少するためである。誘発電位(誘発脳磁界)のS/N比は試行回数の平方根に比例して向上する。例えば100回の試行を加算平均するとS/N比は約10倍になる。


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体性感覚誘発電位(SEP)は上肢や下肢の皮膚に電気刺激や機械的刺激を与えた際に誘発される電位である。潜時によって短潜時体性感覚誘発電位(< 40 msec)[7]、長潜時体性感覚誘発電位(40 msec ~ 250 msec)[8]と分類することができる。また脳磁法においても似た反応が得られることが知られている[9]。特に短潜時体性感覚誘発電位は、[[多発性硬化症]]など脱髄疾患、脳血管障害、脊髄後索の障害疾患等の診断に有効である[10](尾﨑 勇,鈴木千惠子:体性感覚誘発電位(SEP)の臨床応用.臨床神経生理学 36(3): 145‒160, 2008)。
体性感覚誘発電位(SEP)は上肢や下肢の皮膚に電気刺激や機械的刺激を与えた際に誘発される電位である。潜時によって短潜時体性感覚誘発電位(< 40 msec)[7]、長潜時体性感覚誘発電位(40 msec ~ 250 msec)[8]と分類することができる。また脳磁法においても似た反応が得られることが知られている[9]。特に短潜時体性感覚誘発電位は、[[多発性硬化症]]など脱髄疾患、脳血管障害、脊髄後索の障害疾患等の診断に有効である[10](尾﨑 勇,鈴木千惠子:体性感覚誘発電位(SEP)の臨床応用.臨床神経生理学 36(3): 145‒160, 2008)。
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聴覚誘発電位 (auditory evoked potential: AEP)'''
'''聴覚誘発電位 (auditory evoked potential: AEP)'''


聴覚誘発電位は音の提示により誘発されその潜時によって短潜時聴覚誘発電位(< 10 msec)、中潜時聴覚誘発電位(10 ~ 50 msec)、長潜時聴覚誘発電位(50 msec <)と分類することができる[11]。短潜時聴覚誘発電位は聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response: ABR)とも呼ばれており、新生児聴覚スクリーニングや他覚的聴力検査、脳死の判定など幅広く臨床応用されている。ただ聴性脳幹反応はクリック音を用いて計測されるため周波数毎の聴力を計測するには不向きである。各周波数の聴力を脳波を用いて検査したい場合は、振幅変調音を刺激音として用いる聴性定常反応(Auditory steady state response)を記録する[12, 13]。
聴覚誘発電位は音の提示により誘発されその潜時によって短潜時聴覚誘発電位(< 10 msec)、中潜時聴覚誘発電位(10 ~ 50 msec)、長潜時聴覚誘発電位(50 msec <)と分類することができる[11]。短潜時聴覚誘発電位は聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response: ABR)とも呼ばれており、新生児聴覚スクリーニングや他覚的聴力検査、脳死の判定など幅広く臨床応用されている。ただ聴性脳幹反応はクリック音を用いて計測されるため周波数毎の聴力を計測するには不向きである。各周波数の聴力を脳波を用いて検査したい場合は、振幅変調音を刺激音として用いる聴性定常反応(Auditory steady state response)を記録する[12, 13]。
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