「ガイドポスト細胞」の版間の差分

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=== lot cells(lot細胞) ===
=== lot cells(lot細胞) ===
[[image:Takahikokawasaki_fig_4.jpg|400px|thumb|right|'''図4''']]
[[image:Takahikokawasaki_fig_4.jpg|400px|thumb|right|'''図4 マウス胚の終脳を側面から見た模式図。脳の先端が左側。lot細胞をピンク色で、嗅球の投射神経細胞とその神経軸索を緑色で示した。(A)正常な発生;胎生12日目胚では、lot細胞が終脳の表層に弧を描くように帯状に分布する。胎生14日目胚では、帯状のlot細胞群の上を嗅球の神経軸索が伸長する。(B)lot細胞を除去した場合;破線で囲った領域のlot細胞を薬剤で除去すると、嗅球の神経軸索はlot細胞が失われた領域に侵入しなくなる。''']]
lot細胞は発生期の終脳表層に帯状に配列し、嗅球の投射神経細胞の軸索伸長をナビゲートするガイドポスト細胞である(図4)。lot細胞はモノクローナル抗体による染色パターンを手掛かりとして、マウス初期胚の終脳で見つかった。嗅球の投射神経細胞は終脳表層に弧を描くように軸索を伸ばして軸索の束を作る。この軸索束が形成される領域には、軸索よりも先にlot細胞群が帯状に配列する。このlot細胞の配列と嗅球の軸索伸長は、終脳を器官培養しても再現することが出来る。薬剤を用いてlot細胞を部分的に除去した終脳を培養すると、嗅球の軸索はlot細胞が失われた領域に侵入しなくなる。Netrin-1/DCCシグナルを欠失したマウス胚ではlot細胞の配列が部分的に失われるが、このlot細胞を欠く領域には嗅球の軸索が侵入しない。転写因子のLhx2を欠失したマウス胚では、lot細胞の分布と嗅球から終脳への軸索投射が大きく乱れる。野生型マウス胚の嗅球とLhx2を欠失したマウス胚の終脳を組み合わせて培養しても嗅球から終脳への軸索伸長は異常なままだが、Lhx2を欠失したマウス胚の嗅球と野生型マウス胚の終脳を組み合わせて培養すると、嗅球の軸索は正しい場所を伸長する。これらの結果は、lot細胞が嗅球から終脳への正常な軸索投射に必要であることを示している。
lot細胞は発生期の終脳表層に帯状に配列し、嗅球の投射神経細胞の軸索伸長をナビゲートするガイドポスト細胞である(図4)。lot細胞はモノクローナル抗体による染色パターンを手掛かりとして、マウス初期胚の終脳で見つかった。嗅球の投射神経細胞は終脳表層に弧を描くように軸索を伸ばして軸索の束を作る。この軸索束が形成される領域には、軸索よりも先にlot細胞群が帯状に配列する。このlot細胞の配列と嗅球の軸索伸長は、終脳を器官培養しても再現することが出来る。薬剤を用いてlot細胞を部分的に除去した終脳を培養すると、嗅球の軸索はlot細胞が失われた領域に侵入しなくなる。Netrin-1/DCCシグナルを欠失したマウス胚ではlot細胞の配列が部分的に失われるが、このlot細胞を欠く領域には嗅球の軸索が侵入しない。転写因子のLhx2を欠失したマウス胚では、lot細胞の分布と嗅球から終脳への軸索投射が大きく乱れる。野生型マウス胚の嗅球とLhx2を欠失したマウス胚の終脳を組み合わせて培養しても嗅球から終脳への軸索伸長は異常なままだが、Lhx2を欠失したマウス胚の嗅球と野生型マウス胚の終脳を組み合わせて培養すると、嗅球の軸索は正しい場所を伸長する。これらの結果は、lot細胞が嗅球から終脳への正常な軸索投射に必要であることを示している。
図4の解説
マウス胚の終脳を側面から見た模式図。脳の先端が左側。lot細胞をピンク色で、嗅球の投射神経細胞とその神経軸索を緑色で示した。(A)正常な発生;胎生12日目胚では、lot細胞が終脳の表層に弧を描くように帯状に分布する。胎生14日目胚では、帯状のlot細胞群の上を嗅球の神経軸索が伸長する。(B)lot細胞を除去した場合;破線で囲った領域のlot細胞を薬剤で除去すると、嗅球の神経軸索はlot細胞が失われた領域に侵入しなくなる。


lot細胞が、神経回路が成熟するにともなってどのような運命を辿るのかは明らかとなっていない。少なくともlot-1抗体に陽性な細胞群は成体マウス脳のLOT周辺から消失する。
lot細胞が、神経回路が成熟するにともなってどのような運命を辿るのかは明らかとなっていない。少なくともlot-1抗体に陽性な細胞群は成体マウス脳のLOT周辺から消失する。
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