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Hidehikookamoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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同義語・類義語:事象関連電位、誘発反応、誘発活動電位 | 同義語・類義語:事象関連電位、誘発反応、誘発活動電位 | ||
{{box|text= | {{box|text= 誘発電位(evoked potential)および誘発脳磁界(evoked (magnetic) field))とは、外部からの物理刺激([[視覚]]刺激・[[聴覚]]・[[触覚]]刺激など)が受容器に入力されたことにより惹起された神経活動由来の電気信号または磁場信号のことである<ref name=ref1><pubmed>16612230</pubmed></ref> <ref name=ref2>誘発電位測定指針案<br>'''脳波と筋電図''' 25(3): p. 1-16. </ref>。通常、誘発電位の測定は頭皮上に配置された電極を介して行われているのに対し、誘発脳磁界は断熱容器(デュワー)内に格納されている超伝導量子干渉計 (SQUIDs)を介して測定されている。}} | ||
[[ファイル:図1.誘発脳磁界.png|right|300px|thumb|'''図1.誘発脳磁界の一例''']] | [[ファイル:図1.誘発脳磁界.png|right|300px|thumb|'''図1.誘発脳磁界の一例''']] | ||
[[ファイル:図2.誘発電位(evoked potential)と誘導電位(induced potential).png|right|300px|thumb|'''図2.誘発電位(evoked potential)と誘導電位(induced potential)<br>'''外部刺激と同期した電位変化(上段:evoked potential)の計測には加算平均が適しているが、時間的な揺らぎがある電位変化(下段:induced potential)は単純な加算平均では計測が難しい。]] | [[ファイル:図2.誘発電位(evoked potential)と誘導電位(induced potential).png|right|300px|thumb|'''図2.誘発電位(evoked potential)と誘導電位(induced potential)<br>'''外部刺激と同期した電位変化(上段:evoked potential)の計測には加算平均が適しているが、時間的な揺らぎがある電位変化(下段:induced potential)は単純な加算平均では計測が難しい。]] | ||
== | ==分類== | ||
誘発電位および誘発脳磁界は物理刺激の種類により、それぞれ[[視覚誘発電位]]および[[視覚誘発脳磁界]]、[[聴覚誘発電位]]および[[聴覚誘発脳磁界]]、[[体性感覚誘発電位]]および[[体性感覚誘発脳磁界]]などと分類することが出来る。また潜時によって短潜時(short latency)、中潜時(middle latency)、長潜時(long latency)反応と分類されることもある。[[末梢神経]]においても外部刺激により[[活動電位]]を生じるが、誘発電位は主に[[中枢神経]]由来のものを指すことが多い。発生部位により、[[大脳誘発電位]]、[[脳幹誘発電位]]、[[脊髄誘発電位]]などと呼ばれることがある。 | |||
==加算平均法== | ==加算平均法== | ||
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誘発電位の波形にはいくつかの頂点があり、各頂点の名称(成分)は波形の極性と潜時で表す。例えば、極性が陰性で潜時が30 ms ならN30、極性が陽性で潜時が300 msならP300という記載になる。また頂点が出現する順と極性によって記載する場合もあり、この場合は最初の陰性の頂点をN1、3番目の陽性の頂点ならP3と記載する。しかしながら、物理刺激の種類や個体差、年齢など様々な要因により波形は変化するため、誘発電位の名称に関しては不統一のこともあり注意が必要である。 | 誘発電位の波形にはいくつかの頂点があり、各頂点の名称(成分)は波形の極性と潜時で表す。例えば、極性が陰性で潜時が30 ms ならN30、極性が陽性で潜時が300 msならP300という記載になる。また頂点が出現する順と極性によって記載する場合もあり、この場合は最初の陰性の頂点をN1、3番目の陽性の頂点ならP3と記載する。しかしながら、物理刺激の種類や個体差、年齢など様々な要因により波形は変化するため、誘発電位の名称に関しては不統一のこともあり注意が必要である。 | ||
誘発脳磁界の場合は誘発電位の名称の最後に”m”をつける。例えば誘発電位のN30は誘発脳磁界ではN30mと記載する。一般的に、短潜時反応は脳幹や間脳などで発生する電位を反映しており、注意や[[睡眠]]、薬物などの影響を受けにくい。一方、長潜時反応は課題や意識の状態、刺激間時間間隔(inter-stimulus interval)などの影響を受けやすい<ref name=ref5><pubmed>6338812</pubmed></ref>。デジタル記録する場合は短潜時反応や周期の短い反応を記録したい場合はサンプリング周波数を高く設定することに留意する必要がある。 | |||
==容積導体の影響== | ==容積導体の影響== | ||
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通常、脳波計測や脳磁法において加算平均法により得られた反応を誘発電位・誘発脳磁界と呼ぶ。図2上段のように外部刺激により惹起された反応が完全に同期している場合加算平均法により振幅は変化しないが、図2下段のように神経活動の同期に揺らぎがある場合、誘発電位・誘発脳磁界はお互い打ち消し合って振幅が小さくなってしまう。特に周期の短い(周波数の高い)脳神経活動の場合、短時間の揺らぎであっても誘発反応の振幅は顕著に小さくなるため注意が必要である。 | 通常、脳波計測や脳磁法において加算平均法により得られた反応を誘発電位・誘発脳磁界と呼ぶ。図2上段のように外部刺激により惹起された反応が完全に同期している場合加算平均法により振幅は変化しないが、図2下段のように神経活動の同期に揺らぎがある場合、誘発電位・誘発脳磁界はお互い打ち消し合って振幅が小さくなってしまう。特に周期の短い(周波数の高い)脳神経活動の場合、短時間の揺らぎであっても誘発反応の振幅は顕著に小さくなるため注意が必要である。 | ||
このように時間的な揺らぎがある神経活動を観測したい場合は、単純な加算平均法を行わずに[[誘導電位]](induced | このように時間的な揺らぎがある神経活動を観測したい場合は、単純な加算平均法を行わずに[[誘導電位]](induced potential)や[[誘導脳磁界]](induced magnetic field)を計測する<ref name=ref6><pubmed>8753885</pubmed></ref>。誘導電位・誘導脳磁界は、まず試行ごとの波形に実験者が調べたい周波数帯域のバンドパスフィルターを適用し、その後波形の[[wikipedia:ja:振幅包絡|振幅包絡]](図2の青線参照)を求めてこの振幅包絡を加算平均することで得られる。ただ本邦においては誘導電位・誘導脳磁界のことも誘発電位・誘発脳磁界と呼ぶことが多いため注意が必要である。 | ||
==体性感覚誘発電位== | ==体性感覚誘発電位== |
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