16,014
回編集
細 (→Gαシグナリング) |
細 (→Gαシグナリング) |
||
(4人の利用者による、間の8版が非表示) | |||
2行目: | 2行目: | ||
<font size="+1">[http://researchmap.jp/7000004108 足立 直子]、[http://researchmap.jp/read0014761 齋藤 尚亮]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/7000004108 足立 直子]、[http://researchmap.jp/read0014761 齋藤 尚亮]</font><br> | ||
''神戸大学バイオシグナル研究センター''<br> | ''神戸大学バイオシグナル研究センター''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月19日 原稿完成日:2016年2月7日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br> | ||
</div> | </div> | ||
12行目: | 12行目: | ||
類義語:代謝活性型受容体 (metabotropic receptor)、 代謝型受容体、代謝調節型受容体 | 類義語:代謝活性型受容体 (metabotropic receptor)、 代謝型受容体、代謝調節型受容体 | ||
{{box|text= | {{box|text= Gタンパク質共役型受容体とは真核細胞の細胞質膜上もしくは、細胞内部の構成膜上に存在する受容体の一種。Gタンパク質共役型受容体は別名7回膜貫通型受容体と言われるように、7つのαへリックス構造が細胞質膜を貫通し、N末端は細胞外にC末端領域は細胞内に位置する。細胞外からの様々なシグナル([[神経伝達物質]]、[[ホルモン]]、化学物質、光等)を受容すると、Gタンパク質共役型受容体は構造変化を起こし、細胞質側に結合している[[三量体Gタンパク質]]に対して[[グアニンヌクレオチド交換因子]](GEF)として働く。GDP型からGTP型へと変換されたGタンパク質は、つづいて[[効果器]]の活性を変化させることで、細胞外シグナルが細胞内へと伝達される。現在使用されている薬剤のおよそ40%がGタンパク質共役型受容体を標的としており、Gタンパク質共役型受容体の機構解明に大きく貢献した[[wj:ブライアン・コビルカ|Brian K. Kobilka]]と[[wj:ロバート・レフコウィッツ|Robert J. Lefkowitz]]が2012年に[[wj:ノーベル化学賞|ノーベル化学賞]]を共同受賞した<ref><pubmed> 23412332 </pubmed></ref>。 }} | ||
[[ファイル:naokoadachi_Fig_1.jpg|400px|thumb|right|'''図.Gタンパク質共役型受容体の構造と翻訳後修飾(クラスA)''']] | [[ファイル:naokoadachi_Fig_1.jpg|400px|thumb|right|'''図.Gタンパク質共役型受容体の構造と翻訳後修飾(クラスA)''']] | ||
== 分類 == | == 分類 == | ||
48行目: | 43行目: | ||
=== パルミトイル化 === | === パルミトイル化 === | ||
多くのGタンパク質共役型受容体では7番目の膜貫通領域直近のC末端側領域に存在する保存されたシステイン残基が | 多くのGタンパク質共役型受容体では7番目の膜貫通領域直近のC末端側領域に存在する保存されたシステイン残基が[[パルミトイル化|S-パルミトイル化]]修飾を受ける。S-パルミトイル化修飾とは[[wj:飽和脂肪酸|飽和脂肪酸]]である[[wj:パルミチン酸|パルミチン酸]]( C<sub>16</sub>H<sub>32</sub>O<sub>2</sub>)がシステイン残基の[[wj:チオール基|チオール基]]に[[wj:チオエステル結合|チオエステル結合]]で付加される可逆的な修飾であり、細胞質側に存在する[[DHHCタンパク質]]ファミリーを介する<ref><pubmed> 20168314 </pubmed></ref>。多くはC末端領域に1~3個のパルミトイル化修飾が見つかっておりパルミトイル化されたC末端領域は新たな細胞内ループを形成する。パルミトイル化修飾によるGタンパク質共役型受容体の機能調節は多岐に渡り、各受容体によって異なるが、受容体の成熟、[[細胞質膜]]へ発現や輸送、Gタンパク質との結合への影響、[[脱感作]]や[[インターナリゼーション]]に関与することが報告されている<ref><pubmed> 19131499 </pubmed></ref>。 | ||
=== リン酸化 === | === リン酸化 === | ||
69行目: | 64行目: | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+表. G<sub>α</sub>タンパク質の例 | |+表. G<sub>α</sub>タンパク質の例 | ||
!ファミリー!!名称!!効果器!!共役する受容体の例 | |||
|- | |- | ||
|rowspan=2|'''G<sub>s</sub> ファミリー'''<br> | |rowspan=2|'''G<sub>s</sub> ファミリー'''<br> | ||
||G<sub>αs</sub>||[[アデニル酸シクラーゼ]]を活性化させ細胞内の[[cAMP]]濃度を上昇させる。||[[βアドレナリン受容体|β<sub>1/2/3</sub>アドレナリン受容体]]、[[ | ||G<sub>αs</sub>||[[アデニル酸シクラーゼ]]を活性化させ細胞内の[[cAMP]]濃度を上昇させる。||[[βアドレナリン受容体|β<sub>1/2/3</sub>アドレナリン受容体]]、[[ヒスタミン]][[H2受容体]] | ||
|- | |- | ||
|G<sub>αolf</sub>||アデニル酸シクラーゼを活性化させ細胞内のcAMP濃度を上昇させる。||嗅覚受容体 | |G<sub>αolf</sub>||アデニル酸シクラーゼを活性化させ細胞内のcAMP濃度を上昇させる。||嗅覚受容体 | ||
|- | |- | ||
|rowspan=3|'''G<sub>i/o</sub> ファミリー'''||G<sub>αi/o</sub>||アデニル酸シクラーゼの活性を抑制する。||[[α2アドレナリン受容体|α<sub>2</sub>アドレナリン受容体]] | |rowspan=3|'''G<sub>i/o</sub> ファミリー'''||G<sub>αi/o</sub>||アデニル酸シクラーゼの活性を抑制する。||[[α2アドレナリン受容体|α<sub>2</sub>アドレナリン受容体]]、ヒスタミン[[H3受容体|H3]]/[[H4受容体|4受容体]] | ||
|- | |- | ||
|G<sub>αt</sub>|| [[ホスホジエステラーゼ]]を活性化し[[cGMP]]の濃度を減少させる||[[ロドプシン]] | |G<sub>αt</sub>|| [[ホスホジエステラーゼ]]を活性化し[[cGMP]]の濃度を減少させる||[[ロドプシン]] | ||
81行目: | 77行目: | ||
|G<sub>αgust</sub>|| ホスホジエステラーゼを活性化する。||味覚受容体 | |G<sub>αgust</sub>|| ホスホジエステラーゼを活性化する。||味覚受容体 | ||
|- | |- | ||
|'''G<sub>q/11</sub> ファミリー'''||G<sub>αq/11</sub>|| [[ホスホリパーゼC]]を活性化し[[ジアシルグリセロール]]の産生と[[IP3|IP<sub>3</sub>]]を介したCa<sup>2+</sup>の上昇を引き起こす。||[[α1アドレナリン受容体|α<sub>1</sub>アドレナリン受容体]] | |'''G<sub>q/11</sub> ファミリー'''||G<sub>αq/11</sub>|| [[ホスホリパーゼC]]を活性化し[[ジアシルグリセロール]]の産生と[[IP3|IP<sub>3</sub>]]を介したCa<sup>2+</sup>の上昇を引き起こす。||[[α1アドレナリン受容体|α<sub>1</sub>アドレナリン受容体]]、ヒスタミン[[H1受容体]] | ||
|- | |- | ||
|'''G<sub>12/13</sub> ファミリー'''||G<sub>α12/13</sub>| | |'''G<sub>12/13</sub> ファミリー'''||G<sub>α12/13</sub>||[[細胞骨格]]、[[細胞間結合]]などに関与する。|| | ||
|- | |- | ||
|} | |} | ||
==== G<sub>βγ</sub>シグナリング ==== | ==== G<sub>βγ</sub>シグナリング ==== | ||
G<sub>βγ</sub>と結合したG<sub>α</sub>は[[GDP]]との親和性が上がることから、G<sub>βγ</sub>の第一の機能はG<sub>αβγ</sub>三量体を不活性状態に保つことだと考えられる。一方で、G<sub>αi/o</sub>と共役するGタンパク質共役型受容体ではG<sub>βγ</sub>のシグナル伝達が重要となる。G<sub>i/o</sub>はG<sub>s</sub>やG<sub>q</sub>と比較して細胞内に高濃度で存在するため、G<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体が活性化すると放出されるG<sub>βγ</sub>の量は多くなる。G<sub>βγ</sub>はG<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体の下流で[[ | G<sub>βγ</sub>と結合したG<sub>α</sub>は[[GDP]]との親和性が上がることから、G<sub>βγ</sub>の第一の機能はG<sub>αβγ</sub>三量体を不活性状態に保つことだと考えられる。一方で、G<sub>αi/o</sub>と共役するGタンパク質共役型受容体ではG<sub>βγ</sub>のシグナル伝達が重要となる。G<sub>i/o</sub>はG<sub>s</sub>やG<sub>q</sub>と比較して細胞内に高濃度で存在するため、G<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体が活性化すると放出されるG<sub>βγ</sub>の量は多くなる。G<sub>βγ</sub>はG<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体の下流で[[Gタンパク質活性化カリウムチャネル]]([[GIRK|GIRKチャネル]])や[[P/Q型電位依存性カルシウムチャネル|P/Q型]]と[[N型電位依存性カルシウムチャネル]]、さらには[[ホスホリパーゼC]]、[[PI3キナーゼ|PI<sub>3</sub>キナーゼ]]などを活性化することが知られている。 | ||
=== Gタンパク質非依存的シグナリング === | === Gタンパク質非依存的シグナリング === | ||
95行目: | 91行目: | ||
#エンドサイト―シスにより細胞外リガンドのアクセスを阻害する。 | #エンドサイト―シスにより細胞外リガンドのアクセスを阻害する。 | ||
一般的にはこの状態を[[脱感作]]というが、細胞内小胞に乗った受容体はβアレスチンを介してGタンパク質非依存的に下流にシグナルを伝達する。例えば、β<sub>2</sub>アドレナリン受容体、[[アンジオテンシン1a受容体]]、[[P2Y2受容体| | 一般的にはこの状態を[[脱感作]]というが、細胞内小胞に乗った受容体はβアレスチンを介してGタンパク質非依存的に下流にシグナルを伝達する。例えば、β<sub>2</sub>アドレナリン受容体、[[アンジオテンシン1a受容体]]、[[P2Y2受容体|P2Y<sub>2</sub>受容体]]、[[CB1受容体|CB<sub>1</sub>受容体]]ではβアレスチンを介して[[ERK1]]/[[ERK2|2]](Extracellullar signal-regulated kinase)の経路を活性化する<ref><pubmed> 26471844 </pubmed></ref>。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == |