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同義語:RNA結合性タンパク質
同義語:RNA結合性タンパク質


{{box|text= RNA結合タンパク質は、細胞内に発現する1本鎖、あるいは2本鎖RNAと結合するタンパク質の総称で、リボヌクレオタンパク質複合体の構成因子である。RNA結合タンパク質は細胞質もしくは核内に局在し、[[mRNA]]が成熟し核外へと輸送される過程において、核内ではヘテロリボヌクレオタンパク質(hnRNPs)と呼ばれるタンパク質群と未成熟な前駆体mRNA(pre-mRNA)との複合体として存在する。RNA結合タンパク質は様々な細胞機能において重要な役割を担っているが、特に転写後調節機構、すなわちRNAのスプライシング、ポリアデニル化、mRNAの安定化、局在、[[翻訳]]において主要な役割を果たしている。近年の研究によりRNA結合タンパク質の数は予想をはるかに超え、[[ヒト]]ゲノム中のタンパク質をコードする遺伝子の約7.5%にあたる約1542種類も存在する事が分かってきた1。このRNA結合タンパク質の多様性は、進化に伴うイントロン配列や非コードRNAの増大と発現制御の仕組みと密接に関わることが考えられている。また近年の解析技術の進展により、それぞれのRNA結合タンパク質の詳細な脳機能における役割が理解され始めている。}}
{{box|text= RNA結合タンパク質は、細胞内に発現する1本鎖、あるいは2本鎖RNAと結合するタンパク質の総称で、リボヌクレオタンパク質複合体の構成因子である。細胞質もしくは核内に局在し、[[mRNA]]が成熟し核外へと輸送される過程において、核内ではヘテロリボヌクレオタンパク質(hnRNPs)と呼ばれるタンパク質群と未成熟な前駆体mRNA(pre-mRNA)との複合体として存在する。様々な細胞機能において重要な役割を担い、特に転写後調節機構、すなわちRNAのスプライシング、ポリアデニル化、mRNAの安定化、局在、[[翻訳]]において主要な役割を果たしている。[[ヒト]]ゲノム中のタンパク質をコードする遺伝子の約7.5%にあたる約1542種類存在し、進化に伴うイントロン配列や非コードRNAの増大と発現制御の仕組みと密接に関わると考えられている。またHITS-CLIP法やリボソームプロファイリングなどといった近年の解析技術の進展により、それぞれのRNA結合タンパク質の詳細な脳機能における役割が理解され始めている。}}
 
==RNA結合タンパク質とは==
 RNA結合タンパク質は、細胞内に発現する1本鎖、あるいは2本鎖RNAと結合するタンパク質の総称で、リボヌクレオタンパク質複合体の構成因子である。RNA結合タンパク質は細胞質もしくは核内に局在し、[[mRNA]]が成熟し核外へと輸送される過程において、核内ではヘテロリボヌクレオタンパク質(hnRNPs)と呼ばれるタンパク質群と未成熟な前駆体mRNA(pre-mRNA)との複合体として存在する。RNA結合タンパク質は様々な細胞機能において重要な役割を担っているが、特に転写後調節機構、すなわちRNAのスプライシング、ポリアデニル化、mRNAの安定化、局在、[[翻訳]]において主要な役割を果たしている。近年の研究によりRNA結合タンパク質の数は予想をはるかに超え、[[ヒト]]ゲノム中のタンパク質をコードする遺伝子の約7.5%にあたる約1542種類も存在する事が分かってきた<ref name=ref1 />。このRNA結合タンパク質の多様性は、進化に伴うイントロン配列や非コードRNAの増大と発現制御の仕組みと密接に関わることが考えられている。


== 構造 ==
== 構造 ==
 RNA結合タンパク質は、RNA結合ドメイン(モチーフ)を持つタンパク質で、その中でも[[RRM型]](RNA-recognition motif)のドメインを有するタンパク質が最も多く存在する。その他、アルギニン/グリシンリッチな[[RGGドメイン]]、[[RNAヘリカーゼ]]に多く存在する[[DEAD-box型]]、[[二本鎖RNA結合ドメイン]](dsRBD)、[[Znフィンガー型]]、[[KH型ドメイン]]を有するRNA結合タンパク質とつづく。また、これらのRNA結合性ドメインを有するものより少数にはなるが、生殖細胞の[[分化]]やゲノム情報維持機構に働く、[[Tudor]]、[[Piwi]]もRNA結合ドメインの一種に数えられる<ref name=ref1><pubmed>25365966</pubmed></ref>。
 RNA結合タンパク質は、RNA結合ドメイン(モチーフ)を持つタンパク質で、その中でも[[RRM型]](RNA-recognition motif)のドメインを有するタンパク質が最も多く存在する。その他、アルギニン/グリシンリッチな[[RGGドメイン]]、[[RNAヘリカーゼ]]に多く存在する[[DEAD-boxドメイン|DEAD-box型]]、[[二本鎖RNA結合ドメイン]](dsRBD)、[[Znフィンガードメイン|Znフィンガー型]]、[[KH型ドメイン]]を有するRNA結合タンパク質とつづく。また、これらのRNA結合性ドメインを有するものより少数にはなるが、生殖細胞の[[分化]]やゲノム情報維持機構に働く、[[Tudor]]、[[Piwi]]もRNA結合ドメインの一種に数えられる<ref name=ref1><pubmed>25365966</pubmed></ref>。


==機能 ==
==機能 ==
 RNA結合タンパク質は、ゲノム上の約90%近くと見積もられる領域から転写された膨大なRNA群に結合する因子の総称である。そのため、それぞれのRNA結合タンパク質は、固有の結合特異性を持ちながら、mRNAや[[非コードRNA]]である[[ノンコーディングRNA|tRNA]]、[[ノンコーディングRNA|rRNA]]、[[ノンコーディングRNA|snRNA]]、[[ノンコーディングRNA|snoRNA]]、[[ノンコーディングRNA|lncRNA]]、[[ノンコーディングRNA|miRNA]]、[[ノンコーディングRNA|piRNA]]の生合成経路全てを標的対象とし機能している。その生合成過程は、RNAとその他の制御タンパク質との複合体を形成することで、RNAのプロセシング、RNAの輸送/局在化/凝集体形成、RNAの分解、mRNAに対してはタンパク質への翻訳、[[トランスポゾン]]のトランスポジションなどを含み多岐に渡る<ref name=ref1 />。これらの制御を総称して[[転写後調節機構]](post-transcriptional reulation)と呼ぶ。
 RNA結合タンパク質は、ゲノム上の約90%近くと見積もられる領域から転写された膨大なRNA群に結合する因子の総称である。そのため、それぞれのRNA結合タンパク質は、固有の結合特異性を持ちながら、[[mRNA]]や[[非コードRNA]]である[[ノンコーディングRNA#tRNA|tRNA]]、[[ノンコーディングRNA#rRNA|rRNA]]、[[ノンコーディングRNA#snRNA|snRNA]]、[[ノンコーディングRNA#snoRNA|snoRNA]]、[[ノンコーディングRNA#lncRNA|lncRNA]]、[[miRNA]]、[[ノンコーディングRNA#piRNA|piRNA]]の生合成経路全てを標的対象とし機能している。その生合成過程は(<u>編集部コメント:何の生合成過程?作用過程?</u>)、RNAとその他の制御タンパク質との複合体を形成することで、RNAのプロセッシング、輸送/局在化/凝集体形成、分解、mRNAに対してはタンパク質への翻訳、[[トランスポゾン]]のトランスポジションなどを含み多岐に渡る<ref name=ref1 />。これらの制御を総称して[[転写後調節機構]](post-transcriptional reulation)と呼ぶ。


=== 神経発生の制御因子 ===
=== 脳神経系における機能 ===
==== 神経発生の制御因子 ====
 神経系の発達や機能に寄与するRNA結合タンパク質の中で最も古典的な遺伝子として[[ショウジョウバエ]][[Elav]](embryonic lethal abnormal vision)がある。ショウジョウバエ遺伝学により同定された分子で、神経細胞の生存や発達に重要な遺伝子であるが、神経科学分野において神経細胞の分子マーカー/発現ドライバーとしても有名である。[[哺乳類]]の神経系研究においても、[[NeuN]](NeuN抗体は、[[RbFox3]]というRNA結合タンパク質をエピトープとする)や[[Hu]](Elavの哺乳類ホモログ)などの神経細胞分子マーカーがあるが、これらもまたRNA結合タンパク質をコードする遺伝子群である<ref name=ref2><pubmed>1655278</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>19713214</pubmed></ref>。
 神経系の発達や機能に寄与するRNA結合タンパク質の中で最も古典的な遺伝子として[[ショウジョウバエ]][[Elav]](embryonic lethal abnormal vision)がある。ショウジョウバエ遺伝学により同定された分子で、神経細胞の生存や発達に重要な遺伝子であるが、神経科学分野において神経細胞の分子マーカー/発現ドライバーとしても有名である。[[哺乳類]]の神経系研究においても、[[NeuN]](NeuN抗体は、[[RbFox3]]というRNA結合タンパク質をエピトープとする)や[[Hu]](Elavの哺乳類ホモログ)などの神経細胞分子マーカーがあるが、これらもまたRNA結合タンパク質をコードする遺伝子群である<ref name=ref2><pubmed>1655278</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>19713214</pubmed></ref>。


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 これら、マーカー分子としても知られるRNA結合タンパク質群は、それぞれ固有のRNA配列を持ち、標的RNA群に結合し、転写後調節を制御する事で神経系の発生や機能に関わっている。例えば、神経特異的RNA結合タンパク質[[Nova2]]は、500以上(あるいは、その数倍)の遺伝子のRNA制御、特に[[選択的スプライシング]]制御を行い、神経細胞の生存やシナプス機能に関わる分子であることが明らかとなっている<ref name=ref6><pubmed>18978773</pubmed></ref>。神経系の発生において、Nova2は、[[リーリン]]受容体の[[アダプター分子]][[Dab1]]遺伝子の選択的スプライシングを制御する事で、リーリンシグナル伝達系同様に[[大脳新皮質]][[興奮性神経細胞]]と[[小脳]][[プルキンエ細胞]]の放射状[[神経細胞移動]]を制御する分子であることが報告されている<ref name=ref7><pubmed>20620871</pubmed></ref>。
 これら、マーカー分子としても知られるRNA結合タンパク質群は、それぞれ固有のRNA配列を持ち、標的RNA群に結合し、転写後調節を制御する事で神経系の発生や機能に関わっている。例えば、神経特異的RNA結合タンパク質[[Nova2]]は、500以上(あるいは、その数倍)の遺伝子のRNA制御、特に[[選択的スプライシング]]制御を行い、神経細胞の生存やシナプス機能に関わる分子であることが明らかとなっている<ref name=ref6><pubmed>18978773</pubmed></ref>。神経系の発生において、Nova2は、[[リーリン]]受容体の[[アダプター分子]][[Dab1]]遺伝子の選択的スプライシングを制御する事で、リーリンシグナル伝達系同様に[[大脳新皮質]][[興奮性神経細胞]]と[[小脳]][[プルキンエ細胞]]の放射状[[神経細胞移動]]を制御する分子であることが報告されている<ref name=ref7><pubmed>20620871</pubmed></ref>。


=== 病理マーカー ===
==== 病理マーカー ====
 RNA結合タンパク質研究が医学研究分野で注目を集めたのは、臨床、病理マーカーとしての発見に始まったと考えられる。1990年代に、[[傍腫瘍性神経症候群]]の患者の血清中に含まれる[[自己抗体]]の標的抗原として、Huと[[Nova]]タンパク質が同定された<ref name=ref8><pubmed>8643438</pubmed></ref> <ref name=ref9><pubmed>8398153</pubmed></ref>。興味深い事にこれら二つのタンパク質は、共に神経細胞に特異的に発現するRNA結合タンパク質であった。その後、様々なグループよりこれら神経特異的なRNA結合タンパク質が神経細胞のマーカー分子として利用されると同時にタンパク質そのものの機能解析が進められてきた。
 RNA結合タンパク質研究が医学研究分野で注目を集めたのは、臨床、病理マーカーとしての発見に始まったと考えられる。1990年代に、[[傍腫瘍性神経症候群]]の患者の血清中に含まれる[[自己抗体]]の標的抗原として、Huと[[Nova]]タンパク質が同定された<ref name=ref8><pubmed>8643438</pubmed></ref> <ref name=ref9><pubmed>8398153</pubmed></ref>。興味深い事にこれら二つのタンパク質は、共に神経細胞に特異的に発現するRNA結合タンパク質であった。その後、様々なグループよりこれら神経特異的なRNA結合タンパク質が神経細胞のマーカー分子として利用されると同時にタンパク質そのものの機能解析が進められてきた。


 さらに、現在のRNA結合タンパク質研究分野の研究者人口を急速に増大させたのが、2006年の病理組織における[[TDP-43]]タンパク質の発見が一つの要因といえる<ref name=ref10><pubmed>17023659</pubmed></ref>。TDP-43は、[[筋萎縮性側索硬化症]]([[ALS]])や[[前頭側頭葉変性症]]([[FTLD]])の患者の神経細胞や[[グリア細胞]]内において、[[リン酸化]]あるいは[[ユビキチン化]]された病原性凝集体の構成分子として共通病理所見として認められている<ref name=ref10 /> <ref name=ref11><pubmed>17084815</pubmed></ref>。現在では、孤発性、家族性含めたALS患者の97%でTDP-43陽性の封入体が病理像として確認されている<ref name=ref12><pubmed>23931993</pubmed></ref>。
 さらに、現在のRNA結合タンパク質研究分野の研究者人口を急速に増大させたのが、2006年の病理組織における[[TDP-43]]タンパク質の発見が一つの要因といえる<ref name=ref10><pubmed>17023659</pubmed></ref>。TDP-43は、[[筋萎縮性側索硬化症]]([[ALS]])や[[前頭側頭葉変性症]]([[FTLD]])の患者の神経細胞や[[グリア細胞]]内において、[[リン酸化]]あるいは[[ユビキチン化]]された病原性凝集体の構成分子として共通病理所見として認められている<ref name=ref10 /> <ref name=ref11><pubmed>17084815</pubmed></ref>。現在では、孤発性、家族性含めたALS患者の97%でTDP-43陽性の封入体が病理像として確認されている<ref name=ref12><pubmed>23931993</pubmed></ref>。


=== 病態の原因 ===
==== 病態の原因 ====
 神経疾患の原因遺伝子として同定されたRNA結合タンパク質の代表例として、長期にわたり世界中で研究されてきた分子が、[[脆弱性X症候群]]の原因遺伝子である[[FMRP]]である。RNA結合タンパク質FMRPは、さまざまな標的RNA群に対する[[翻訳]]抑制、生理学的にはシナプス機能への関与など様々な知見が積み重ねられてきた。
 神経疾患の原因遺伝子として同定されたRNA結合タンパク質の代表例として、長期にわたり世界中で研究されてきた分子が、[[脆弱性X症候群]]の原因遺伝子である[[FMRP]]である。RNA結合タンパク質FMRPは、さまざまな標的RNA群に対する[[翻訳]]抑制、生理学的にはシナプス機能への関与など様々な知見が積み重ねられてきた。


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 また、RNA結合タンパク質をコードする遺伝子そのものに欠失、変異が生じないような疾患の多くもRNA結合タンパク質が病態の原因となる事が想定されている。例えば[[トリプレット病]]といった繰り返し配列を有し、繰り返し配列のRNAを高レベルで発現するような変異を持つ場合、これら非コードRNAがある特定の内在性RNA結合タンパク質のシークエスターとなり、このRNA結合タンパク質が制御する遺伝子発現プログラムに異常が生じる事が病気の一つの原因となることも考えられる。
 また、RNA結合タンパク質をコードする遺伝子そのものに欠失、変異が生じないような疾患の多くもRNA結合タンパク質が病態の原因となる事が想定されている。例えば[[トリプレット病]]といった繰り返し配列を有し、繰り返し配列のRNAを高レベルで発現するような変異を持つ場合、これら非コードRNAがある特定の内在性RNA結合タンパク質のシークエスターとなり、このRNA結合タンパク質が制御する遺伝子発現プログラムに異常が生じる事が病気の一つの原因となることも考えられる。


=== 創薬の標的===
==== 創薬の標的====
 病態解明の鍵を握るRNA結合タンパク質研究であるが、今後1542種あるRNA結合タンパク質の中からも新たな創薬の標的が発見されることが期待される。
 病態解明の鍵を握るRNA結合タンパク質研究であるが、今後1542種あるRNA結合タンパク質の中からも新たな創薬の標的が発見されることが期待される。


 [[脊髄性筋萎縮症]]([[SMA]])は、1万人に1人程度の割合で新生児に発症する[[運動ニューロン病]]の一つであり、原因遺伝子[[SMN]]([[survival motor neuron]])の常[[染色体性劣性遺伝]]を示す神経難病である。SMN遺伝子には、相同遺伝子の[[SMN2]]が存在することから、SMN2の選択的スプライシングスイッチをする核酸アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることで、SMN2タンパク質の合成量を増加させ、SMNタンパク質の減少を補う方法で[[モデル動物]]を用いた実験で有効性が実証された<ref name=ref16><pubmed>21979052</pubmed></ref>。これは、ある種のRNA結合タンパク質-RNA相互作用を直接、核酸が抑えることで、スプライシングを制御するものだが、さらに簡便な小分子化合物の経口投与によってSMN2のスプライシング制御が可能であることが発見されるなど、急速に疾患治療へ向け進みつつある<ref name=ref17><pubmed>25104390</pubmed></ref>。
 [[脊髄性筋萎縮症]]([[SMA]])は、1万人に1人程度の割合で新生児に発症する[[運動ニューロン病]]の一つであり、原因遺伝子[[SMN]]([[survival motor neuron]])の[[常染色体性劣性遺伝]]を示す神経難病である。SMN遺伝子には、相同遺伝子の[[SMN2]]が存在することから、SMN2の選択的スプライシングスイッチをする核酸アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることで、SMN2タンパク質の合成量を増加させ、SMNタンパク質の減少を補う方法で[[モデル動物]]を用いた実験で有効性が実証された<ref name=ref16><pubmed>21979052</pubmed></ref>。これは、ある種のRNA結合タンパク質-RNA相互作用を直接、核酸が抑えることで、スプライシングを制御するものだが、さらに簡便な小分子化合物の経口投与によってSMN2のスプライシング制御が可能であることが発見されるなど、急速に疾患治療へ向け進みつつある<ref name=ref17><pubmed>25104390</pubmed></ref>。


== 解析技術 ==
== 解析技術 ==
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 RNA結合タンパク質が対象とする制御システムは、RNAのプロセシングやRNA量だけではない。特に、その中でも包括的な翻訳制御解析はまだまだ技術的制限があった。
 RNA結合タンパク質が対象とする制御システムは、RNAのプロセシングやRNA量だけではない。特に、その中でも包括的な翻訳制御解析はまだまだ技術的制限があった。


 その中でIngoliaらが開発した[[リボソームプロファイリング法]]は、RNAを対象とするシークエンス技術で、細胞内のタンパク質レベルをモニターすることに成功した<ref name=ref22><pubmed>22056041</pubmed></ref>。原理は、細胞中の翻訳状態を、翻訳阻害剤シクロヘキシムドでリボソームの挙動を停止させ、次に、[[RNase]]処理により、リボソームで取り込まれていないRNAを除去し、まさにリボソームでマスクされているRNA約26-28塩基のみを生け捕りにし、シークエンス解析するという方法であった。これを全RNAシークエンスのデータからリボソームでマスクされた断片の発現量を標準化することで、翻訳効率を定量化するという戦略である。他にも、翻訳開始点の同定などにも応用可能であるが、本手法によりRNAを測定する事で、細胞内のタンパク質レベルと比較的、相関性高く解析が可能となった。
 その中でIngoliaらが開発した[[リボソームプロファイリング法]]は、RNAを対象とするシークエンス技術で、細胞内のタンパク質レベルをモニターすることに成功した<ref name=ref22><pubmed>22056041</pubmed></ref>。原理は、細胞中の翻訳状態を、[[翻訳阻害剤]][[シクロヘキシミド]]で[[リボソーム]]の挙動を停止させ、次に、[[RNase]]処理により、リボソームで取り込まれていないRNAを除去し、まさにリボソームでマスクされているRNA約26-28塩基のみを生け捕りにし、シークエンス解析するという方法であった。これを全RNAシークエンスのデータからリボソームでマスクされた断片の発現量を標準化することで、翻訳効率を定量化するという戦略である。他にも、翻訳開始点の同定などにも応用可能であるが、本手法によりRNAを測定する事で、細胞内のタンパク質レベルと比較的、相関性高く解析が可能となった。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

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