「認知症」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
2,657 バイト追加 、 2016年2月4日 (木)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
54行目: 54行目:
1) 病歴、身体所見、検査などの証拠から器質的疾患が病因であると判断される。<br>
1) 病歴、身体所見、検査などの証拠から器質的疾患が病因であると判断される。<br>
2) このような証拠がなくとも器質的疾患以外の状況が合理的に除外されている場合。
2) このような証拠がなくとも器質的疾患以外の状況が合理的に除外されている場合。
|}
|}
<br>


{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" width="602" height="20""
|+ '''表3.DSM-Ⅳ-TRによる認知症の診断基準の要約'''
| A.多彩な認知機能障害の発現として以下の2項目がある。<br>
1) 記憶障害(新規情報の学習や、過去に学習した情報の想起の障害)<br>
 (a)即時記憶は数字の順唱、逆唱により、近時記憶は言葉や物品の遅延再生により評価する。<br>
 (b)遠隔記憶は随伴者に確認可能な個人情報(誕生日や卒業年、結婚記念日など)もしくは被
   験者の教育レベル・文化背景に合った一般知識の質問により評価する。<br>


2) 以下の認知機能障害のうち1項目以上を認める。<br>
 (a)失語(言語の障害)<br>
 (b)失行(運動機能は障害されていないのに運動の遂行が障害される)<br>
 (c)失認(感覚機能は障害されていないのに対象を認識もしくは同定できない)<br>
 (d)遂行機能(計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化すること)の障害
|-
| B.上記A-1)、A-2)の認知機能障害各々が社会的もしくは職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示す。
|-
| C.この障害はせん妄の経過中にのみ現れるものではない。
|}
<br>
 これらの診断基準を踏まえ、本邦の認知症疾患治療ガイドライン2010では認知症を「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言い、それが意識障害のないときに見られる。」と定義している。<br>
 他方、2013年に公表されたDSM-5ではDementiaという用語は消失し、代わりに「神経認知障害:Neurocognitive Disorders(ND)」と総称することを提唱している。Dementiaという用語が廃止されたのは語源的に「De (without) + mentia (mind)」と構成されており、「mad」「crazy」「insane」「lunatic」など「狂」を意味する語と類義で差別的・侮蔑的なためとされる。認知症に該当するMajor NDの診断基準を'''表4'''に示す。<br>


 
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" width="949" height="20""
 これらの診断基準を踏まえ、本邦の認知症疾患治療ガイドライン2010では認知症を「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言い、それが意識障害のないときに見られる。」と定義している。
|+ '''表4.DSM-5による認知症(Major Neurocognitive Disorder)の診断基準の要約'''
 他方、2013年に公表されたDSM-5ではDementiaという用語は消失し、代わりに「神経認知障害:Neurocognitive Disorders(ND)」と総称することを提唱している。Dementiaという用語が廃止されたのは語源的に「De (without) + mentia (mind)」と構成されており、「mad」「crazy」「insane」「lunatic」など「狂」を意味する語と類義で差別的・侮蔑的なためとされる。認知症に該当するMajor NDの診断基準を表4に示す。DSM-5の変更点に対する本邦の対応は、Major NDが内容的に従来のDementiaと重なる部分が多いこと、またDementiaに対する用語が本邦ではすでに「痴呆」から「認知症」へと変更されており社会的にも受け入れられていることから、Major NDを「認知症」とすることが日本精神神経学会 精神科用語検討委員会 精神科病名検討連絡会にて承認されている。
| A.1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習と記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において過去の水準から明らかな認知の低下を来しているという以下に基づく証拠がある。<br>
1) 本人、本人を良く知る情報提供者、もしくは臨床医による認知機能の明らかな低下があるという懸念。<br>
2) できれば標準化された神経心理学的検査で記録される形で、それが無い場合は他の定量化された臨床的評価によって確認された認知機能の明らかな障害。
|-
| B.毎日の活動において認知機能障害が自立性を阻害している(例:請求書の支払いや服薬管理など日常生活における複雑な操作的活動に援助を要する)。<br>
|-
| C.認知機能障害はせん妄の経過中にのみ起こるものではない。
|-
| D.認知機能障害は他の精神疾患ではうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)。
|}
<br>
 DSM-5の変更点に対する本邦の対応は、Major NDが内容的に従来のDementiaと重なる部分が多いこと、またDementiaに対する用語が本邦ではすでに「痴呆」から「認知症」へと変更されており社会的にも受け入れられていることから、Major NDを「認知症」とすることが日本精神神経学会 精神科用語検討委員会 精神科病名検討連絡会にて承認されている。




44

回編集

案内メニュー