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細 (→抗精神病薬治療) |
細 (→治療) |
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統合失調症の治療について、その人なりの生活と人生を取り戻すことこそが回復の目標であり、抗精神病薬による精神症状の改善はそのための手段と位置づけるのが、リカバリーrecoveryの考え方である。本人の価値観や夢を大切にし(aspiration)、備わっている力を見出し(strength)、本来備わっている回復力を信じ(resilience)、当事者と専門家が対等な立場で相談し(shared decision making)、望む生活と人生を実現することで(recovery)、自尊心(self-esteem)や自己効力感(self-efficacy)の回復を目指す価値志向の実践である(value-based psychiatry)。このようにして、ご本人が自分自身や自分の人生を大切に思えるようになり、病気の症状の改善や生活の支障の回復に自分が中心となって主体的に取り組めていると感じられるようになっていくことが大切となる。 | 統合失調症の治療について、その人なりの生活と人生を取り戻すことこそが回復の目標であり、抗精神病薬による精神症状の改善はそのための手段と位置づけるのが、リカバリーrecoveryの考え方である。本人の価値観や夢を大切にし(aspiration)、備わっている力を見出し(strength)、本来備わっている回復力を信じ(resilience)、当事者と専門家が対等な立場で相談し(shared decision making)、望む生活と人生を実現することで(recovery)、自尊心(self-esteem)や自己効力感(self-efficacy)の回復を目指す価値志向の実践である(value-based psychiatry)。このようにして、ご本人が自分自身や自分の人生を大切に思えるようになり、病気の症状の改善や生活の支障の回復に自分が中心となって主体的に取り組めていると感じられるようになっていくことが大切となる。 | ||
[[心理社会的治療]]は、そうしたリカバリーを実現するために用いられる個別の方法である。病気や薬についてよく知り、再発を防ぎたいとの希望がある患者・家族のためには「心理教育」、回復直後や長期入院のために身の回りの処理が苦手となっている場合には生活自立のための取り組み、対人関係やコミュニケーションにおける問題が社会復帰の妨げとなっている場合には、[[認知行動療法]]の原理を利用した生活技能訓練(social skills training)、仕事や職業における集中力・持続力や作業能力の回復を目指す場合には「作業療法」、対人交流や集団参加に自信がもてない場合には「デイケア」「地域生活支援センター」、就労のための準備段階としては「就労移行支援・就労継続支援事業所」(いわゆる作業所)など、個別の希望や病状にあわせて利用する。 | |||
==予後== | |||
予後は、対象となる統合失調症により異なるが、統合失調症を中心とする初発の精神病エピソードの80%は完全な症状寛解に到るとされる。長期の予後については、治癒に至ったり軽度の障害を残すのみなど良好な場合が50~60%で、重度の障害を残すのは10~20%とされ、[[wj:世界保健機関|WHO]]は「初発患者のほぼ半数は完全かつ長期的な回復を期待できる」としている。この数字は昔の治療を受けた患者についてのデータで、より進んで治療を受けている現代の患者の予後はより良いことが期待できる。 | |||
良好な予後と関連する要因として、 | 良好な予後と関連する要因として、 | ||
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#精神病症状の出現から抗精神病薬治療開始までの精神病未治療期間が短いと予後が良い | #精神病症状の出現から抗精神病薬治療開始までの精神病未治療期間が短いと予後が良い | ||
#病前の機能レベルが良いと予後が良い | #病前の機能レベルが良いと予後が良い | ||
# | #発症年齢が高いと予後が良い | ||
ことが知られている。 | |||
また、合併症や続発症について、 | また、合併症や続発症について、 | ||
#初回エピソードの治療とそれに引き続く再発予防を十分に行うと、合併症や続発症が起こることが少ない | #初回エピソードの治療とそれに引き続く再発予防を十分に行うと、合併症や続発症が起こることが少ない | ||
#精神病エピソードの期間が長かったり、再発を繰り返すと、合併症や続発症が起こりやすくなる | #精神病エピソードの期間が長かったり、再発を繰り返すと、合併症や続発症が起こりやすくなる | ||
# | #地域社会のなかで日常生活を送れるよう配慮すると、合併症や続発症が少ない | ||
という指摘がある。 | |||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |