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{{box|text= | {{box|text= てんかんとは種々の原因(遺伝、外因)により起きる慢性の脳の病気であり、自発性かつ反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、脳波検査で発作性放電を示し、焦点部位の機能異常により多彩な発作症状を示す疾患ないし症候群である。発作にはけいれんだけでなく意識障害を示すものもあり、同じ発作パターンが反復して出現する。脳波検査で発作性放電が出現しても臨床的な発作がなければてんかんではなく、1回のみの発作も治療の対象とはならない。治療は抗てんかん薬による薬物療法が主流である。約70%の症例は抗てんかん薬で発作が抑制され、抑制されない症例では食餌療法、外科治療、迷走神経刺激療法などが検討される。近年、てんかんの原因遺伝子が各種同定され、それに基づくてんかんの分子病態が報告されてきている。その流れからはてんかんを治癒できる薬剤の開発あるいはてんかんの発病を防止する治療が検討されるようになった。}} | ||
==てんかんとは== | |||
[[wj:世界保健機関|WHO]]の定義では、“てんかんとは種々の原因(遺伝、外因)により起きる慢性の脳の病気であり、自発性かつ反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、[[脳波]]検査で[[発作性放電]]を示し、焦点部位の機能異常により多彩な発作症状を示す疾患ないし症候群である”とされている。 | |||
発作症状は異常興奮を起こす脳部位、範囲により規定される。発作症状は同じパターンを繰り返す。発作にはけいれんだけでなく[[意識障害]]を示すものもある。各てんかん類型の発作症状は以下の診断、分類の項目で記述する。 | |||
==診断== | ==診断== | ||
===診断基準=== | ===診断基準=== | ||
てんかんは慢性の脳疾患であり、脳神経細胞の異常興奮により惹起され、1回以上の発作を起こし、発作以外の症状も伴う。てんかん発作の症状はけいれん発作だけでなく、種々の程度の[[意識障害]] | てんかんは慢性の脳疾患であり、脳神経細胞の異常興奮により惹起され、1回以上の発作を起こし、発作以外の症状も伴う。てんかん発作の症状はけいれん発作だけでなく、種々の程度の[[意識障害]]、[[行動障害]]を示す場合もあるが、重要な点は「発作は同じパターンを繰り返す」ことである。診断の際には、発作時に開眼しているか、[[チアノーゼ]]があるか、意識障害の有無や行動変化とその回復過程はどうなっているか、尿[[失禁]]、[[嘔吐]]、発作後の[[頭痛]]、[[もうろう状態]]などを伴うか否か、などの発作症状の観察や発病年齢の聴取が重要である。 | ||
補助診断として[[脳波]]・ビデオ同時記録、[[ | 補助診断として[[脳波]]・ビデオ同時記録、[[睡眠ポリグラフィーが]]用いられ、脳[[MRI]]、[[SPECT]]などが検査されるが、最近では[[遺伝子診断]]も試みられている。目撃者がいない場合にはけいれん発作後の[[wj:クレアチンホスホキナーゼ|クレアチンホスホキナーゼ]] (CPK)の上昇、複雑部分発作の30分以内なら血中[[プロラクチン]]濃度などの増加も診断上参考になる。[[複雑部分発作]]などの意識障害の存在が疑われ、脳波異常がなければ、[[wj:心電図|心電図]]検査、[[wj:ホルター心電図|ホルター心電図]]検査も必要となる。これらの所見を基に、てんかんか否かを判断し、てんかんと診断されれば次にてんかん発作型を分類することになる。 | ||
===鑑別診断=== | ===鑑別診断=== | ||
患者の示す発作症状がてんかん性か否かが問題となる症例は少なくない。鑑別すべき重要な疾患、状態には | 患者の示す発作症状がてんかん性か否かが問題となる症例は少なくない。鑑別すべき重要な疾患、状態には | ||
# | |||
# | #[[心因性非てんかん発作]](psychogenic non-epileptic seizure: PNES) | ||
#片頭痛 | #[[wj:循環器|循環器]]疾患に伴う[[失神]] | ||
# | #[[頭痛|片頭痛]] | ||
#レム睡眠行動障害 | #[[一過性全健忘]] | ||
#[[レム睡眠行動障害]] | |||
#[[ナルコレプシー]] | #[[ナルコレプシー]] | ||
# | #[[睡眠時随伴症]]([[夜驚症]]、[[夢中遊行]]) | ||
#入眠時ミオクローヌス | #[[入眠時ミオクローヌス]] | ||
#周期性四肢運動障害 | #[[周期性四肢運動障害]] | ||
#発作性ジスキネジア | #[[発作性ジスキネジア]] | ||
などがある。 | などがある。 | ||
これらの内、てんかんを疑われて受診した患者では1.、2.、および5.から9.の睡眠関連症状はしばしば鑑別を要する。 | |||
#PNES<br>診断で難しいのはてんかんとPNESが合併した場合である。難治てんかんでは両者の合併は10-35%と高頻度である<ref name=ref14>'''Krumholz A et al'''<br>Coexisting epilepsy and nonepileptic seizures.<br>In: Kaplan PW, et al, eds: Imitator of epilepsy.<br>Pp 261-222222276, Demos Medical Publishingm INC, New York, 2005. </ref>。PNESの症状は多彩である。首の横振り、後弓反張、不規則な手足の運動、刺激に反応する場合がある。発作時には閉眼していることが多く、開眼させようとすると抵抗し、対光反射は存在する。ビデオ脳波同時記録を行い、発作症状と脳波所見が一致するか否かが診断の要点となる。発作が始まった時期の前に“心因”の存在を見出すことが重要である。 | #PNES<br>診断で難しいのはてんかんとPNESが合併した場合である。難治てんかんでは両者の合併は10-35%と高頻度である<ref name=ref14>'''Krumholz A et al'''<br>Coexisting epilepsy and nonepileptic seizures.<br>In: Kaplan PW, et al, eds: Imitator of epilepsy.<br>Pp 261-222222276, Demos Medical Publishingm INC, New York, 2005. </ref>。PNESの症状は多彩である。首の横振り、後弓反張、不規則な手足の運動、刺激に反応する場合がある。発作時には閉眼していることが多く、開眼させようとすると抵抗し、対光反射は存在する。ビデオ脳波同時記録を行い、発作症状と脳波所見が一致するか否かが診断の要点となる。発作が始まった時期の前に“心因”の存在を見出すことが重要である。 | ||
#循環器疾患に伴う失神<br>一過性の意識消失を失神というが、[[不整脈]]、自律神経調節性失神(NMS)がある。不整脈には徐脈性不整脈(洞不全症候群、AVブロック)、頻拍性不整脈(上室性頻拍、心室性不整脈)があり、心電図検査を要する。NMSには[[迷走神経]]緊張性失神(前駆症状は発汗、あくび、吐き気、腹痛)、頸動脈洞症候群(振り向くような動作で起こる)、状況失神(排尿、排便、咳、嚥下などが原因となる)がある。病歴の聴取が重要である。 | #循環器疾患に伴う失神<br>一過性の意識消失を失神というが、[[不整脈]]、自律神経調節性失神(NMS)がある。不整脈には徐脈性不整脈(洞不全症候群、AVブロック)、頻拍性不整脈(上室性頻拍、心室性不整脈)があり、心電図検査を要する。NMSには[[迷走神経]]緊張性失神(前駆症状は発汗、あくび、吐き気、腹痛)、頸動脈洞症候群(振り向くような動作で起こる)、状況失神(排尿、排便、咳、嚥下などが原因となる)がある。病歴の聴取が重要である。 |