「アストロサイト」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
16行目: 16行目:


==発生==
==発生==
アストロサイトはニューロンより発生が遅く、ニューロンが発生中~後期に盛んに発生するのに対して、発生後期から生後にかけて盛んに発生する。アストロサイトは脳室帯(ventricular zone)にある神経前駆細胞から分化する<ref><pubmed>19555289</pubmed></ref><ref><pubmed>21068830</pubmed></ref>。大脳皮質ではアストロサイトは神経前駆細胞から分化した、ネスチン陽性の放射状グリア(radial glia)<ref><pubmed>7002963</pubmed></ref><ref><pubmed>9364068</pubmed></ref>から生じ、線維性アストロサイトと原形質性アストロサイトになる<ref><pubmed>17442813</pubmed></ref>。また生後では放射状グリアから分裂して出来る脳室下帯(subventricular zone)のintermediate progenitorからも生じる<ref><pubmed>8439409</pubmed></ref><ref>'''J E Goldman'''<br>Astrocyte development. <br>''Neuroglia (3rd ediition)'': H Kittenmann, B R Ransom, eds. Oxford University Press, NY, 2013, pp137–147</ref>。神経細胞と同様アストロサイトの発生にも領域特異性があり、脳室での発生する部位によりアストロサイトはサブタイプに分かれる<ref><pubmed>18455991</pubmed></ref>。また放射状グリアから分化した大脳皮質の原形質性アストロサイトは、同様に放射状グリアから分化した皮質の錐体ニューロンと共にコラム(column)という柱状の領域を形成する<ref><pubmed>22492032</pubmed></ref>。
アストロサイトはニューロンより発生が遅く、ニューロンが発生中~後期に盛んに発生するのに対して、発生後期から生後にかけて盛んに発生する。アストロサイトは脳室帯(ventricular zone)にある神経前駆細胞から分化する<ref><pubmed>19555289</pubmed></ref><ref><pubmed>21068830</pubmed></ref>。大脳皮質ではアストロサイトは神経前駆細胞から分化した、ネスチン陽性の放射状グリア(radial glia)<ref><pubmed>7002963</pubmed></ref><ref><pubmed>9364068</pubmed></ref>から生じ、線維性アストロサイトと原形質性アストロサイトになる<ref><pubmed>17442813</pubmed></ref>。また生後では放射状グリアから分裂して出来る脳室下帯(subventricular zone)のintermediate progenitorからも生じる<ref><pubmed>8439409</pubmed></ref><ref>'''J E Goldman'''<br>Astrocyte development. <br>''Neuroglia (3rd ediition)'': H Kittenmann, B R Ransom, eds. Oxford University Press, NY, 2013, pp137–47</ref>。神経細胞と同様アストロサイトの発生にも領域特異性があり、脳室での発生する部位によりアストロサイトはサブタイプに分かれる<ref><pubmed>18455991</pubmed></ref>。また放射状グリアから分化した大脳皮質の原形質性アストロサイトは、同様に放射状グリアから分化した皮質の錐体ニューロンと共にコラム(column)という柱状の領域を形成する<ref><pubmed>22492032</pubmed></ref>。


==構造と機能==
==構造と機能==
31行目: 31行目:
アストロサイトは神経細胞と同様に伝達物質を放出し、神経回路を調節している。アストロサイトから放出される伝達物質はグリオトランスミッター(gliotransmitter)と言われている<ref><pubmed>20300101</pubmed></ref>。グリオトランスミッターには、グルタミン酸<ref><pubmed>7911978</pubmed></ref>、ATP<ref><pubmed>11264297</pubmed></ref>、D-セリン<ref><pubmed>15800046</pubmed></ref>などがある。グルタミン酸やD-セリンはシナプスに対して興奮性に、ATPは抑制性に働く<ref name=ref30 />。グリオトランスミッターは前シナプスにも後シナプスにも作用する。例えば前シナプスに作用し興奮性を増強すること<ref><pubmed>15339653</pubmed></ref>、後シナプスに対しては、興奮しているシナプスから放出されるグルタミン酸に作用し、シナプス後ニューロンの興奮性を増強することがあげられる<ref><pubmed>17310248</pubmed></ref>。またアストロサイトは、活性化しているシナプスがアストロサイトを介して他のシナプスを抑制する、ヘテロシナプス抑制(heterosynaptic depression)にも関与する<ref><pubmed>17962333</pubmed></ref>。グリオトランスミッターの放出はエキソサイトーシスの他にヘミチャネルやP2X7レセプター、マキシアニオンチャネルからも放出される<ref name=ref40 />。グリオトランスミッターの放出には細胞内カルシウム濃度上昇が関与する。
アストロサイトは神経細胞と同様に伝達物質を放出し、神経回路を調節している。アストロサイトから放出される伝達物質はグリオトランスミッター(gliotransmitter)と言われている<ref><pubmed>20300101</pubmed></ref>。グリオトランスミッターには、グルタミン酸<ref><pubmed>7911978</pubmed></ref>、ATP<ref><pubmed>11264297</pubmed></ref>、D-セリン<ref><pubmed>15800046</pubmed></ref>などがある。グルタミン酸やD-セリンはシナプスに対して興奮性に、ATPは抑制性に働く<ref name=ref30 />。グリオトランスミッターは前シナプスにも後シナプスにも作用する。例えば前シナプスに作用し興奮性を増強すること<ref><pubmed>15339653</pubmed></ref>、後シナプスに対しては、興奮しているシナプスから放出されるグルタミン酸に作用し、シナプス後ニューロンの興奮性を増強することがあげられる<ref><pubmed>17310248</pubmed></ref>。またアストロサイトは、活性化しているシナプスがアストロサイトを介して他のシナプスを抑制する、ヘテロシナプス抑制(heterosynaptic depression)にも関与する<ref><pubmed>17962333</pubmed></ref>。グリオトランスミッターの放出はエキソサイトーシスの他にヘミチャネルやP2X7レセプター、マキシアニオンチャネルからも放出される<ref name=ref40 />。グリオトランスミッターの放出には細胞内カルシウム濃度上昇が関与する。
===グルコース代謝===
===グルコース代謝===
人では脳は身体の約2%の重量だが、その機能の維持のため身体が必要とする酸素とグルコースの20%を使用する<ref><pubmed>16731806</pubmed></ref><ref>'''I Allaman,PJ Magistretti'''<br>Brain energy metabolism.<br>''Fudamental Neuroscience (4th edition)'': LR Squire, D Berg, FE Bloom, S du Lac, A Ghosh, N Spitzer,eds. Academic Press, MA, 2013, pp261-286</ref>。アストロサイトは毛細血管からグルコースを取り込むか、アストロサイト内で貯蓄されているグリコーゲンをグルコースに変換した後、グルコースを乳酸に変換し、神経細胞に供給する。またアストロサイトで産生された乳酸はギャップジャンクションを介して他のアストロサイトにも供給される<ref name=ref28 />。
人では脳は身体の約2%の重量だが、その機能の維持のため身体が必要とする酸素とグルコースの20%を使用する<ref><pubmed>16731806</pubmed></ref><ref>'''I Allaman, P J Magistretti'''<br>Brain energy metabolism.<br>''Fudamental Neuroscience (4th edition)'': L R Squire, D Berg, F E Bloom, S du Lac, A Ghosh, N Spitzer,eds. Academic Press, MA, 2013, pp261-86</ref>。アストロサイトは毛細血管からグルコースを取り込むか、アストロサイト内で貯蓄されているグリコーゲンをグルコースに変換した後、グルコースを乳酸に変換し、神経細胞に供給する。またアストロサイトで産生された乳酸はギャップジャンクションを介して他のアストロサイトにも供給される<ref name=ref28 />。
===神経伝達物質の回収===
===神経伝達物質の回収===
アストロサイトはグルタミン酸トランスポーターであるGLASTやGLT-1を発現している。シナプス間で放出されたグルタミン酸はGLASTやGLT-1を介してアストロサイトに回収される。このときナトリウムイオンも取り込まれる。ナトリウムイオンはNa+K+-ATPaseにより細胞外に排出されるが、このときNa+K+-ATPaseはアストロサイト細胞内のATPをADPに置換する<ref><pubmed>26528968</pubmed></ref>。
アストロサイトはグルタミン酸トランスポーターであるGLASTやGLT-1を発現している。シナプス間で放出されたグルタミン酸はGLASTやGLT-1を介してアストロサイトに回収される。このときナトリウムイオンも取り込まれる。ナトリウムイオンはNa+K+-ATPaseにより細胞外に排出されるが、このときNa+K+-ATPaseはアストロサイト細胞内のATPをADPに置換する<ref><pubmed>26528968</pubmed></ref>。
26

回編集

案内メニュー