「アストロサイト」の版間の差分

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 アストロサイトは[[エンドフィート]] (endfeet)をのばして、脳の毛細血管とコンタクトをとっている。この所見はGolgiにより19世紀に観察された<ref><pubmed>2671382</pubmed></ref><ref name=ref40><pubmed>24847203</pubmed></ref>。アストロサイトは神経細胞とも接しているので、アストロサイトは毛細血管と神経細胞の橋渡しとなり、毛細血管からエネルギーの元となる分子を神経細胞に供給している<ref name=ref28 /><ref name=ref31 />。またアストロサイトはエンドフィートを介して血管平滑筋を制御して血管の直径を変化させる。これにはアストロサイトの細胞内カルシウム濃度が関係している<ref name=ref31 /><ref name=ref40 />。
 アストロサイトは[[エンドフィート]] (endfeet)をのばして、脳の毛細血管とコンタクトをとっている。この所見はGolgiにより19世紀に観察された<ref><pubmed>2671382</pubmed></ref><ref name=ref40><pubmed>24847203</pubmed></ref>。アストロサイトは神経細胞とも接しているので、アストロサイトは毛細血管と神経細胞の橋渡しとなり、毛細血管からエネルギーの元となる分子を神経細胞に供給している<ref name=ref28 /><ref name=ref31 />。またアストロサイトはエンドフィートを介して血管平滑筋を制御して血管の直径を変化させる。これにはアストロサイトの細胞内カルシウム濃度が関係している<ref name=ref31 /><ref name=ref40 />。
===グリオトランスミッター===
===グリオトランスミッター===
 アストロサイトは神経細胞と同様に伝達物質を放出し、神経回路を調節している。アストロサイトから放出される伝達物質はグリオトランスミッター(gliotransmitter)と言われている<ref><pubmed>20300101</pubmed></ref>。グリオトランスミッターには、グルタミン酸<ref><pubmed>7911978</pubmed></ref>、[[ATP]]<ref><pubmed>11264297</pubmed></ref>、[[D-セリン|<small>D</small>-セリン]]<ref><pubmed>15800046</pubmed></ref>などがある。グルタミン酸やD-セリンはシナプスに対して[[興奮性]]に、[[ATP]]は[[抑制性]]に働く<ref name=ref30 />。グリオトランスミッターはシナプス前部にもシナプス後部にも作用する。例えばシナプス前部に作用し興奮性を増強すること<ref><pubmed>15339653</pubmed></ref>、シナプス後部に対しては、興奮しているシナプスから放出されるグルタミン酸に作用し、シナプス後ニューロンの興奮性を増強することがあげられる<ref><pubmed>17310248</pubmed></ref>。
 アストロサイトは神経細胞と同様に伝達物質を放出し、神経回路を調節している。アストロサイトから放出される伝達物質はグリオトランスミッター(gliotransmitter)と言われている<ref><pubmed>20300101</pubmed></ref>。グリオトランスミッターには、グルタミン酸<ref><pubmed>7911978</pubmed></ref>、[[ATP]]<ref><pubmed>11264297</pubmed></ref>、[[D-セリン|<small>D</small>-セリン]]<ref><pubmed>15800046</pubmed></ref>などがある。グルタミン酸や<small>D</small>-セリンはシナプスに対して[[興奮性]]に、[[ATP]]は[[抑制性]]に働く<ref name=ref30 />。グリオトランスミッターはシナプス前部にもシナプス後部にも作用する。例えばシナプス前部に作用し興奮性を増強すること<ref><pubmed>15339653</pubmed></ref>、シナプス後部に対しては、興奮しているシナプスから放出されるグルタミン酸に作用し、シナプス後ニューロンの興奮性を増強することがあげられる<ref><pubmed>17310248</pubmed></ref>。


 またアストロサイトは、活性化しているシナプスがアストロサイトを介して他のシナプスを抑制する、[[ヘテロシナプス抑制]] (heterosynaptic depression)にも関与する<ref><pubmed>17962333</pubmed></ref>。グリオトランスミッターの放出はエキソサイトーシスの他にヘミチャネルや[[P2X7受容体|P2X<sub>7</sub>受容体]]、[[塩素チャネル#細胞容積感受性塩素チャネル|マキシアニオンチャネル]]からも放出される<ref name=ref40 />。グリオトランスミッターの放出には細胞内カルシウム濃度上昇が関与する。
 またアストロサイトは、活性化しているシナプスがアストロサイトを介して他のシナプスを抑制する、[[ヘテロシナプス抑制]] (heterosynaptic depression)にも関与する<ref><pubmed>17962333</pubmed></ref>。グリオトランスミッターの放出はエキソサイトーシスの他にヘミチャネルや[[P2X7受容体]]、[[塩素チャネル#細胞容積感受性塩素チャネル|マキシアニオンチャネル]]からも放出される<ref name=ref40 />。グリオトランスミッターの放出には細胞内カルシウム濃度上昇が関与する。
===グルコース代謝===
===グルコース代謝===
 ヒトでは脳は身体の約2%の重量だが、その機能の維持のため身体が必要とする酸素とグルコースの20%を使用する<ref><pubmed>16731806</pubmed></ref><ref>'''I Allaman, P J Magistretti'''<br>Brain energy metabolism.<br>''Fudamental Neuroscience (4th edition)'': L R Squire, D Berg, F E Bloom, S du Lac, A Ghosh, N Spitzer,eds. Academic Press, MA, 2013, pp261-86</ref>。アストロサイトは毛細血管からグルコースを取り込むか、アストロサイト内で貯蓄されている[[グリコーゲン]]を[[グルコース]]に変換した後、グルコースを[[乳酸]]に変換し、神経細胞に供給する。またアストロサイトで産生された乳酸はギャップジャンクションを介して他のアストロサイトにも供給される<ref name=ref28 />。
 ヒトでは脳は身体の約2%の重量だが、その機能の維持のため身体が必要とする酸素とグルコースの20%を使用する<ref><pubmed>16731806</pubmed></ref><ref>'''I Allaman, P J Magistretti'''<br>Brain energy metabolism.<br>''Fudamental Neuroscience (4th edition)'': L R Squire, D Berg, F E Bloom, S du Lac, A Ghosh, N Spitzer,eds. Academic Press, MA, 2013, pp261-86</ref>。アストロサイトは毛細血管からグルコースを取り込むか、アストロサイト内で貯蓄されている[[グリコーゲン]]を[[グルコース]]に変換した後、グルコースを[[乳酸]]に変換し、神経細胞に供給する。またアストロサイトで産生された乳酸はギャップジャンクションを介して他のアストロサイトにも供給される<ref name=ref28 />。

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