「夢」の版間の差分

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1980年代後半に、レム睡眠時の急速眼球運動に伴って、覚醒時照明下でのサッケードに伴って出現するラムダ波と同様の電位が後頭の視覚野優位に出現することが報告され<ref name="Miyauchi1987"><pubmed>2435518</pubmed></ref><ref name="Miyauchi1990"><pubmed>1694480</pubmed></ref><ref name="Ogawa2009"><pubmed>19062337</pubmed></ref>、fMRIによってこの活動が第一次視覚野で生じていることが明らかにされた<ref name="Miyauchi2008"><pubmed>18830586</pubmed></ref>。またレム睡眠の特徴である骨格筋の緊張の著しい低下が欠如し、レム睡眠になると夢の内容に応じて身体の運動が生じるレム睡眠行動障害患者(REM sleep behavior disorder: RBD)を用いて、レム睡眠中の動作と眼球運動の関連を調べた研究では、対象をつかむ、指し示すなどの目標のはっきりした四肢の動作と眼球運動の方向が一致することが報告された<ref name="Leclair-Visonneau2010"><pubmed>20478849</pubmed></ref>。これらの知見を考え合わせると,少なくともレム睡眠時の急速眼球運動の一部は,走査仮説が主張するように夢の中での視覚像を追うために出現していると考えられる。
1980年代後半に、レム睡眠時の急速眼球運動に伴って、覚醒時照明下でのサッケードに伴って出現するラムダ波と同様の電位が後頭の視覚野優位に出現することが報告され<ref name="Miyauchi1987"><pubmed>2435518</pubmed></ref><ref name="Miyauchi1990"><pubmed>1694480</pubmed></ref><ref name="Ogawa2009"><pubmed>19062337</pubmed></ref>、fMRIによってこの活動が第一次視覚野で生じていることが明らかにされた<ref name="Miyauchi2008"><pubmed>18830586</pubmed></ref>。またレム睡眠の特徴である骨格筋の緊張の著しい低下が欠如し、レム睡眠になると夢の内容に応じて身体の運動が生じるレム睡眠行動障害患者(REM sleep behavior disorder: RBD)を用いて、レム睡眠中の動作と眼球運動の関連を調べた研究では、対象をつかむ、指し示すなどの目標のはっきりした四肢の動作と眼球運動の方向が一致することが報告された<ref name="Leclair-Visonneau2010"><pubmed>20478849</pubmed></ref>。これらの知見を考え合わせると,少なくともレム睡眠時の急速眼球運動の一部は,走査仮説が主張するように夢の中での視覚像を追うために出現していると考えられる。


[[ファイル:Ncomms8884-f2.jpg|360px|thumb|right|'''図2 覚醒時証明下でのサッケード、レム睡眠時休息眼球運動、覚醒時視覚刺激提示に伴って生じる脳活動'''<ref name="Andrillon2015" />]]
さらに急速眼球運動に伴って視覚野だけでなく海馬傍回や扁桃体が活動していることもfMRI<ref name="Miyauchi2008" />およびヒトの皮質脳波(Electrocorticogram: ECoG)とsingle unit recordingを用いた研究によって報告された<ref name="Andrillon2015"><pubmed>26262924</pubmed></ref>。特にECoGとsingle unit recordingによる結果は、覚醒開眼時のサッケードに伴って海馬傍回に出現するのと同様の活動がレム睡眠時の急速眼球運動でも出現することを報告している(図2)。これらの知見はレム睡眠時の急速眼球運動は、単にPGO-waveによって眼球がランダムに駆動された結果ではなく、レム睡眠時の眼球運動が夢の内容や記憶の処理と密接に関連していることを示唆している。
さらに急速眼球運動に伴って視覚野だけでなく海馬傍回や扁桃体が活動していることもfMRI<ref name="Miyauchi2008" />およびヒトの皮質脳波(Electrocorticogram: ECoG)とsingle unit recordingを用いた研究によって報告された<ref name="Andrillon2015"><pubmed>26262924</pubmed></ref>。特にECoGとsingle unit recordingによる結果は、覚醒開眼時のサッケードに伴って海馬傍回に出現するのと同様の活動がレム睡眠時の急速眼球運動でも出現することを報告している(図2)。レム睡眠時の急速眼球運動では視覚刺激が無いにもかかわらず、頭皮脳波(図2b)、皮質脳波(図2c)、single unit(d図2, e)のいずれにおいても覚醒時照明下サッケードと類似の脳活動が出現している。さらに眼球運動のonset(WAKE, REM)及び視覚刺激のonsetから200~400msで、発火頻度の上昇(図2d)に対応して皮質脳波上に陰性成分が出現している(図2c)これらの知見はレム睡眠時の急速眼球運動は、単にPGO-waveによって眼球がランダムに駆動された結果ではなく、レム睡眠時の眼球運動が夢の内容や記憶の処理と密接に関連していることを示唆している。
 
[[ファイル:Ncomms8884-f2.jpg|720px|thumb|left|'''図2 覚醒時照明下でのサッケード、レム睡眠時休息眼球運動、覚醒時視覚刺激提示に伴って生じる脳活動'''<ref name="Andrillon2015" />]]
'''図2 覚醒時照明下でのサッケード、レム睡眠時休息眼球運動、覚醒時視覚刺激提示に伴って生じる脳活動'''<br />
a: 眼電図、b: 頭皮脳波(頭頂葉 Pz)、c: 内側側頭葉皮質脳波、d: 内側側頭葉ニューロンの発火頻度、e : 海馬傍回ニューロンの発火頻度。レム睡眠時 (REM、中)の急速眼球運動では視覚刺激が無いにもかかわらず、頭皮脳波(b)、皮質脳波(c)、single unit(d, e)のいずれにおいても覚醒時照明下サッケード(WAKE、左)と類似の脳活動が出現している。さらに眼球運動のonset(WAKE, REM)及び視覚刺激(VISUAL STIMULATION、右)のonsetから200~400msで、発火頻度の上昇(d)に対応して皮質脳波上に陰性成分が出現している(c)。
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== 夢と精神分析  ==
== 夢と精神分析  ==
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